2022.11.21 16:10
熊野古道 伊勢路について
熊野古道は「振り返りの旅」とも「蘇りの旅」とも言われる。2020年2月下旬に高野山と熊野本宮大社を結ぶ小辺路(こへち)を歩いた。同じ2020年の11月には吉野から熊野本宮大社へと続く大峯奥駈道(おおみねおくがけみち)を歩いた
今回は第三段として伊勢神宮から熊野速玉大社を結ぶ伊勢路を歩く。当初の計画ではもう少し冬らしくなる12月上旬頃に出かけるつもりだったが、コロナの第8波の勢いが加速し始めたので、計画を早めて11月中旬に実行した
冒頭の写真は、内宮を出立して4日目、始神峠(はじかみとうげ)から眺めた熊野灘の景色。伊勢路は熊野灘沿いに山中や海辺を進むので、写真のように何度も美しいリアス式の海の光景に出会う
上の古道マップは新宮市観光協会のサイトから拝借したものである(以下URL参照)
上の図のように、熊野古道には6つの道がある。伊勢路はグリーンの道で、約170キロのロングコースだ。コースのほとんどは三重県にあり、序盤はやや内陸部を歩き、中盤以降は海沿いに進む
全体的に国道などの一般道を歩くことが多いが、途中、低いもので標高100mほど、高いもので600mを越える峠を10数個越えていく。近隣住民などの地道な活動により、当時の石畳の道が掘り起こされ、古道が蘇って世界遺産として登録された
テント泊装備を担いで歩かなければならない奥駈道に対し、伊勢路は小辺路と同じく峠を越えると集落があり、民宿や旅館などの宿泊施設を利用することができる。これにより、食事やお風呂、寝床などの心配がなく、衣服の洗濯も可能で、快適な旅を続けることができる
奥駈道や小辺路が山の中を歩くのに対し、伊勢路は半分くらい海沿いを歩く。国道やJRの紀勢線に並行しているので、公共交通機関をうまく併用することで旅の自由度も増す。駅から駅まで適当な距離を日帰りで歩き、列車で出発点に戻るという具合に伊勢路を分断して歩く方も多い
私は時間的な余裕がある隠居老人の身なので、以下のごとく今回も伊勢路を一気に歩く計画とした
全行程の歩行ルート図と標高グラフ
総歩行距離:約170㎞、総歩行時間:約52時間
累計標高↗︎:3,988m、累計標高↘︎:3,939m
最高点の標高: 650 m
最低点の標高: -4 m
累積標高(上り): 5607 m
累積標高(下り): -5639 m
以下は私のGPS記録をもとにGoogle Earth Proで作成した歩行ルート図。その下は約170キロを6日半かけて歩き通した歩行軌跡の動画。紀伊半島を東側(熊野灘側)から鳥瞰した動画になっており、約40秒の長さ。画像右下の三点リーダーで再生スピードを変更できるのでお好みの速度でご覧ください。
日程と宿泊
11/11(金):東京から伊勢へ移動。外宮参拝。ホテル泊
11/12(土):伊勢神宮内宮から栃原へ。駅近くの旅館泊
11/13(日):栃原から伊勢柏崎へ。駅から少し先の民泊
11/14(月):伊勢柏崎から古里へ。旅館泊
11/15(火):古里から尾鷲へ。ビジネスホテル泊
11/16(水):尾鷲から二木島駅。列車で熊野市駅へ移動しビジネスホテル泊
11/17(木):二木島駅から再開し阿田和駅へ。列車で熊野市駅に戻り連泊
11/18(金):阿田和駅から再開し熊野速玉大社へ
歩行距離と時間(休憩含む。列車の移動は含まず)
11/11(金):約3㎞、1時間
11/12(土):約29㎞、7時間20分
11/13(日):約35㎞、8間20分
11/14(月):約21㎞、7時間40分
11/15(火):約24㎞、8時間
11/16(水):約24㎞、10時間
11/17(木):約25㎞、7時間50分
11:18(金):約13㎞、2時間40分
総歩行距離:約170㎞、総歩行時間:約52時間
累計標高↗︎:3,988m、累計標高↘︎:3,939m
天気
11月11日(金):晴れ
11月12日(土):晴れ
11月13日(日):曇りのち雨
11月14日(月):晴れ
11月15日(火):晴れ
11月16日(水):晴れ
11月17日(木):晴れのち薄曇り
11月18日(金):晴れ
伊勢路に関する資料
以下のWebサイトからダウンロードでき、印刷も可能
https://www.kodo.pref.mie.lg.jp/download/index.html
上記サイトの一番下にあるメールアドレスまたは電話番号にアクセスして依頼すれば、無料で資料を送付してくれる(2022年11月現在)
とりわけ以下の二冊子は、伊勢路歩きに欠かせない。①は通しで歩く場合に、②は駅やバス停で区切って歩く場合に参考になる
① 『熊野古道伊勢路図絵~令和の熊野詣~』
② 『熊野古道伊勢路ガイドマップ』
私は特に①を重宝した。冊子はA4サイズで厚みのある紙なので、持ち歩きには少々不便。全行程のカラーコピーを取って、日毎に必要なページを二つ折りにしサコッシュに入れて持ち歩いた
ナビアプリ
また、実際に歩く際には、以下のURLの『熊野古道伊勢路ナビ』をスマホにダウンロードしておくことをお薦めする
常時ONにしておけば、GPS機能により自分が伊勢路ルート上のどこにいるかを表示できる。ただし、ルートから外れても警告機能はないので、外れたまま進んでしまう。伊勢路には主な分岐に幟や標識などが設置されているが、ところどころ何もない分岐がある。特に市街地を歩いている時がやっかいで、頻繁に画面を確認した
非常によくできたナビで道迷いをほぼ避けられる。わずかではあるが、民家の庭を抜けるような間違いや、ナビが示す道が行き詰まって進めない箇所などがあったが、その都度対処して先へ進んだ。また道路の古道標識とナビのルートが異なることや、工事中でナビ通り歩けない箇所もあった。あまり正確性に拘ることはなく、おおらかに古道歩きを楽しめばよいと思う
残念ながら、自分の歩いた軌跡をログとして残す機能はないので、歩行ログを取りたい場合は、GPSロガーのアプリ等を併用することになる。私は普段から山歩きで使用しているヤマレコの無料アプリでGPSログを取った
前日の外宮参拝記録
伊勢路歩きスタート前泊のビジネスホテルに向かう前に、JR伊勢市駅から歩いて5分程のところにある外宮に立ち寄った。ちょうど夕刻で逆光だったため、空の色が飛んでしまった
伊勢路は内宮から出発して熊野大社へと向かう古道で、内宮から外宮を通って伊勢の街を抜けて行く。ルート通りに古道を歩けば外宮を通るのだが、古来「外宮先祭」のならわしがあり、外宮に参拝した後に内宮に参拝するのが作法とされている。というわけで、スタート前日に東京から伊勢に移動した際に、外宮にお参りすることにした
外宮は左側通行になっている(ちなみに内宮は右側通行)
鳥居の先は撮影禁止。外宮に参拝するのは約40年ぶり。これまで内宮だけお参りする「片参り」という不作法を続けていた
1500年の歴史を持つ外宮の参道も美しい
順光の写真の空はご覧の通り。この日は快晴
池には冬鳥のマガモやオオバンが越冬のために飛来して来ていた。ここから30分ほど歩いて今宵の宿に向かった