熊野古道 伊勢路編③ 中盤:古里から二木島へ(2022/11/15-16)

山の記録

2022.11.21 16:00

伊勢路も4日目、5日目となり中盤に入った。序盤最後に海辺の紀伊長島そして古里に到達し、中盤では古里から二木島まで海沿いの峠越えを繰り返して進む

峠を越えては次の海辺の街や集落に到達し、また峠越えをしていく。峠越えの道には熊野古道らしい石畳の道が多くなり、まさに伊勢路のハイライトともいうべき旅路となる

冒頭の写真は馬越峠(まごせとうげ)の石畳。峠を通して道全体が見事な石畳に覆われ、まさに「ザ・熊野古道」という印象

4日目の記録

歩行ルート図と標高グラフ

合計距離: 24094 m
最高点の標高: 497 m
最低点の標高: -2 m
累積標高(上り): 971 m
累積標高(下り): -978 m

山行の詳細

まずは3日目の夜に宿泊した古里の集落にある漁亭・美乃島を出立。今回の伊勢路歩きでは、唯一のおすすめの宿。熊野灘の美味しい魚料理、24時間入れる温泉、旅館風の設え、家族経営の温かいもてなし、コスパなど、とても素晴らしかった。機会があればぜひ再訪したい

本日は、この古里の集落から尾鷲の街まで3つの峠を越え、約24キロを進む

古里の集落を出てすぐ、リアス式海岸らしい小さな半島のような先端を巻いていく

海岸から数十メートルほどの高さで半島の斜面をトラバースするように進む。左手の樹林帯の隙間から時折熊野灘を望むことができる

海沿いのトラバース路はすぐに終わり、次の集落の道瀬に入り、海沿いを行く

すぐに三浦峠(113m)の入り口がある

三浦峠にも峠越えに切通しがある

三浦峠を下ったところ。橋を通って下っていくと三浦の集落になり海に出る

三浦の海岸。ここもリアス式の入り江で静かできれいな海岸だ

海岸を進むと始神さくら公園につく。公園の先に始神峠(はじかみとうげ、147m)への入り口がある

登り口にある橋を渡って進む

ずっと樹林帯の中を登って峠に到達するとこの光景が見に飛び込んでくる。思わず「おぉー」という声が出た。江戸時代の記録にも、紀伊の松島の島々が熊野灘に浮かぶ景色が美しいとあるそうな。まさに・・

始神峠にも斜面を通る道の崩壊を防ぐため、野面乱層積みの石垣が残っている

石垣の先で江戸道と明治道の分岐がある。江戸道は狭い下りですぐに国道42号に合流する。暫く山中を進む明治道を進むことに

明治道は物資を運ぶ大八車が通れるよう幅広に作ってある

明治道を通って麓に下り、一般道を進む。ここで右側の道を下り、涸れた大舟川を渡って対岸の坂道を上がる。堤防に上がったところで、右折して集落を抜けて行くのだが、電柱の取り換え工事で通行止めとなっていたため、対岸の堤防をまっすぐ進んで国道に出た。国道を進み、すぐに向こう側の側道へ入り、その後は国道と側道を交互に歩く

上里(かみさと)から国道と側道を交互に歩き、相賀(あいが)の集落で馬越峠(まごせとうげ)へと向かう。相賀の道標には、新宮まで70kmとあり、伊勢から100㎞歩いてきたことになる

馬越峠へは清流で有名な銚子川沿いを上流側に進む。銚子川を渡ってJRの線路を越えると、数軒の民家の玄関先を抜けていく急坂を登り国道に出る

国道を渡れば馬越峠の入り口で、ここを進んでいく

馬越峠の石畳は比較的大きく重厚な石が敷かれ、普通の古道のように階段状ではなく、坂道に石を嵌め込むように置かれている。かなり急な坂道なので、反対側から下ってくる人たちは滑らないよう慎重に下りてきていた。この日は晴れて石が乾燥していたので滑ることはなかったが、濡れている場合は神経を使うだろう

他の主な峠と同じように、馬越峠にも100mごとにこの道標がある

馬越峠(325m)に登り上げた。ここから下って尾鷲の街に向かうのだが、宿のチェックインには少し早いので、峠から古道を外れて天狗倉山(522m)をピストンすることにした。ザックはここにデポした

天狗倉山への道端にはアサマリンドウが並んでいて、いくつか咲いていた。アサマというのは、伊勢にある朝熊(あさま)山からの名だとか

天狗倉山の山頂直下。この梯子で大きな岩を登れば山頂だ

梯子を上った大岩の上にもう一つ大きな岩が続いており、その上に山頂標があった

尾鷲湾と熊野灘の眺めが素晴らしい

尾鷲の入り江と街の眺め。街の手前側の端に今宵のビジネスホテルがある。尾鷲の街の背後には山々が迫っていて、山と海に取り囲まれるように街ができている

馬越峠に戻って尾鷲へと石畳を下る。馬越峠は登り口から下り口までずっと石畳が続いていた

ホテルの部屋から街の夕景を撮影。峠越えが多くなり、平坦な舗装道路歩きが減ったことが足に幸いし、最初二日間で受けたダメージがさらに悪化することはなく、少し安堵した

 

5日目の記録

歩行ルート図と標高グラフ

合計距離: 23657 m
最高点の標高: 650 m
最低点の標高: -3 m
累積標高(上り): 1486 m
累積標高(下り): -1531 m

山行の詳細

5日目の朝。この日は伊勢路で一番標高の高い八鬼山越え(やきやまごえ、647m)をはじめ4つの峠越えがあり、約24キロの行程だ。早朝5時に宿を出発。早い出立や遅い到着にはビジネスホテルが都合よい


尾鷲の街の端から反対側の端へと横切るように歩くこと一時間。夜の帳が開け始め、黎明の空になってきた。街路灯が少ないので、ヘッドランプを点灯して街中を歩くのだが、犬に怪しまれて吠えられるのが厄介だ

尾鷲のほぼ反対側の端にきたところで、伊勢路は「やのはま道」という小刻みに街中を曲がる道を進む。民家の並ぶ裏路地のような道なのだが、スマホの伊勢路ナビの画面を見ながら、薄暗いなかで道を探すのに難儀した


そのうちの一か所は人がやっと一人通れるくらいの細い路地だったので、不審者に間違われる恐れもあり、通過が憚られて一本横の道を歩いた。さらにナビ通りに先に進むと、公園の先で行き止まりになり、無理やり進んで伊勢路ルートに復帰せざるを得なかった

尾鷲の街の外れから八鬼山越えの山道を進むと石畳の道になった。ここにもお馴染みの道標がある

7時を過ぎたので随分と明るくなった。苔むした石畳の道は油断すると滑る

さらに進むと「七曲がり」の難所と呼ばれるところに差し掛かった。くねくねと右に左に峠道を登っていく

七曲がりからさらに登り続けると荒神堂のある空間に出た。私の立ち位置の背後にはトイレ棟もあった。八鬼山峠まではもう少しなので、休むことなく通過していく

峠の東屋。この少し手前で伐採など木の手入れをする方が作業を始める準備をしていた。お話しすると、八鬼山の山頂は木に囲まれて眺望はないとのこと。そこで山頂すぐ下にあるこの峠の東屋で休憩したが、すぐ先の「さくらの森エリア」にある東屋で休憩すべきだった

こちらがその東屋。前にはスギコケの空間が広がりベンチもあり、開放感がある

何より熊野灘のこの眺めが素晴らしい。左下の入り江には九鬼町の街が見える

九鬼町のアップ。戦国時代に信長方の水軍として活躍した九鬼水軍の本拠地だった街と入り江だ

絶景ポイントのさくらの森エリアからは江戸道を下ってきた。ここで左側の明治道と合流するのだが、現在は明治道が荒廃しており、江戸道を使用するよう注意看板がある。山頂から下ってくるときは、さくらの森エリア方面へ進めば、自動的に江戸道を下りてくることになる

峠道を下りてきた。この峠は伊勢路随一の難所なので、杖も一杯ある

越えてきた八鬼山峠方面を振り返って撮影

賀田湾(かたわん)にある三木里(みきさと)ビーチまで下ってきた。ここも静かな入り江で綺麗なビーチだ

三木里の集落を抜けて、左下に潮騒の音を聞きながら三木峠(120m)を進む

三木峠から望む賀田湾の眺め

三木峠からの下りの石畳の道

三木峠から古江町に下りてすぐ、次の羽後峠(はごとうげ)への入り口がある

猪垣(ししがき)の間を抜けて行く。伊勢路の峠の至る所でこのような猪垣が残っている。今も昔も獣と人との住み分けには並々ならぬ苦労があるのだ

羽後峠から賀田の街に下り、国道をしばらく歩いたのち、この日の最後の峠に入る。甫母峠(ほぼとうげ、305m)の石畳道

鯨石。確かにザトウクジラを頭部から眺めた姿に見える。この地域はクジラ漁が盛んだったので鯨石と名付けられたのも良く分かる

甫母峠には東屋があったが、休憩せず通過

甫母峠からの下り、二木島湾方面の眺め

石畳がないところでは、木の根が張り巡らされたような道も多い。雨で濡れると根が滑るが、幸い晴れの日が続き木の根を気にせず歩けた

二木島の集落まで下りてきた。本日はここまで。甫母峠からの下りはペースを大幅に落としてゆっくり下りてきたが、二木島駅には午後3時過ぎに着いた。列車の時間まで1時間強の待ち時間がある


二木島は宿が非常に少なく、1棟貸しの宿があるくらいなのだが、食事は自分で手配しなくてはならない。集落には食堂もスーパーもなく、車で熊野市あたりまで行かないと調達できないので、ここからJRで熊野市駅まで移動し、熊野市の宿に泊まることにした


実のところ、もう一つ先の新鹿駅(あたしかえき)まで進めないかと、甫母峠までハイペースで飛ばしてきたのだが、この先には二つの峠越えがあって新鹿駅で列車に間に合わなそうなので、二木島駅で乗車することにし、ペースを落として下りてきた


ゴールの新宮まで残り38キロ。明日の朝は、熊野市駅から列車で4駅戻り、二木島駅から伊勢路歩きを再開する。本日は早朝に尾鷲の宿を出立し、10時間近く歩き続けてきた。十分歩いて距離を稼いだので、これで良しとしよう

 

熊野古道 伊勢路編④(終盤)へ進む ☜ クリック

熊野古道 伊勢路編②(序盤)へ戻る ☜ クリック

歩行タイム

4日目 山行

7時間35分 休憩 29分 合計 8時間4分

着時刻 地点 発時刻

S          古里 07:41

07:56 若宮神社

08:17 三浦峠 08:20

08:32 熊ヶ谷橋 08:33

08:47 三野瀬駅

09:07 始神さくら広場

09:35 始神峠09:44

10:13 宮谷池

10:22 始神峠東屋 10:23

10:35 馬瀬バス停

10:54 トロッコ道跡 10:55

12:51 相賀神社 12:52

13:24 馬越峠海山登り口

14:20 馬越峠 14:22

14:43 天狗倉山 14:51

15:05 馬越峠 15:07

15:29 馬越公園 15:30

15:45 北川橋(尾鷲)泊

5日目 山行

9時間20分 休憩 38分 合計 9時間58分

着時刻 地点 発時刻

S          北川橋 05:06

05:29 やのはま道

06:01 八鬼山登山口

06:42 行き倒れ巡礼供養碑 06:44

06:52 籠立場 06:53

06:59 林道出合い 07:01

07:11 七曲がり 07:13

07:34 八鬼山桜茶屋一里塚 07:35

07:46 蓮華石と烏帽子石

07:51 九木峠 07:53

08:00 荒神堂 08:03

08:17 八鬼山

10:24 雁木付きの家 10:28

10:45 ヨコネ道

11:11 三木峠 11:18

12:09 羽後峠 12:20

13:43 甫母峠 13:46

15:04 二木島(電車で熊野市駅へ移動し宿泊)

タイトルとURLをコピーしました