計画に当たって
14年前、現役時代に会社の食堂に置いてあったパンフレットの一つにルックJTBの「大自然を歩く(世界遺産を歩く)」というのが目にとまり手に取った。ネパールやパタゴニアなどと一緒に紹介されていたのが、ニュージーランドのミルフォードトラックだった。
こんなところにいつか行けたらいいな、と会社のデスクの引き出しにしまっておいた。8年後に引退するときに、仕事関係の資料は全て適切に処分したが、このパンフレットは私物と一緒に家に持ち帰った(笑)。それから6年、ついに日の目を見るときがやってきた。
コロナ禍の2年目(2021年)と4年目(2023年)に、息子二人が相次いで所帯を持ち独立することになった。特に何かをしたわけではないが、何だか子育てを終了して肩の荷が下りたような気分になり、カミさんと二人で自分たちへのご褒美として20数年ぶりの海外旅行に出かけることにした。
提案したのはパンフレットに載っていたUltimate Hikes社主催によるミルフォードトラックのガイドツアー。カミさんも興味を示したので、ちょうど3月に始まった旅行会社(HISエコツアーデスク)による2023/2024シーズン(11月初~4月末)の予約受付に応募し、シーズン初めの11月8日からの枠を確保した。
ツアーの概要
ミルフォードトラックに関する情報(概要、入山規制など)やツアーに関する情報(予約方法、費用、ロッジ内の様子や設備、食事など)は、旅の記録のカテゴリーに以下の別ブログとしてまとめておいたので、そちらを参照されたし。
「ミルフォードトラックのトレッキング&ミルフォードサウンドのクルーズ in NZ(2023/11/6-14)」
全行程の歩行ルート図と標高グラフ
合計距離: 約65km、累積標高↑: 約2820m、累積標高↓: 約2900m
最高点の標高: 1146 m
最低点の標高: -2 m
累積標高(上り): 3876 m
累積標高(下り): -4093 m
私の歩行GPSログをもとにGoogle Earth Proを用いて3D歩行ルートの動画を作成した。氷河で形成されたU字谷を歩くコースの特徴がよく分かると思う。動画時間は約45秒だが、右下の3点リーダーからPlayback speedを変更できるので、好みで調整されたし。
山行の概要
各日の行動実績。
1日目:3.7㎞、約2時間。ロッジ到着後に、ロッジ周辺のガイドツアーに参加
2日目:18.4㎞、約6時間半。氷河が形成したU字谷歩きがメイン。最後に緩やかな登りとなり、標高差210m ↑
3日目:20.3㎞、約10時間。マッキノン峠越え(標高差:750m ↑、930m ↓)。ロッジ到着後にサザーランド滝まで往復
4日目:22.3㎞、約8時間。U字谷歩きがメイン。最初に緩やかな下り、標高差200m ↓
山行1日目
クイーンズタウンからUltimate Hikes社のバスでテ・アナウ湖に移動(約4時間)。ボートでミルフォードトラックの入り口まで移動(約1時間)。約1.5キロを歩き、グレードハウスに到着。希望者は1時間ちょっとのガイドツアーに参加。夕食後に自己紹介などのレセプションがある。
1日目の歩行ルート図と標高グラフ
最高点の標高: 331 m
最低点の標高: 210 m
累積標高(上り): 179 m
累積標高(下り): -192 m
1日目の詳細
出発当日、Ultimate Hikes社のオフィスに集合。目の前にいるJohn と奥さんは、Johnの膝が悪化し3日目の峠越えには行かず引き返し、ミルフォード・サウンドのクルーズで再び合流した。この時はそのようなことになろうとは思いもしなかった。
バスで2時間半、テ・アナウの街のカフェで昼食。2台並ぶバスの前がこれからツアーに行く私達のバスで、後ろがツアーを終えてクイーンズタウンへ帰る人達のバス。天候が悪く大変だったみたいだ。
テ・アナウ湖に到着。ボートに約1時間乗り対岸のグレート・ワーフに向かう。
グレート・ワーフが近づいてきた。殆どの人がデッキに出ている。
岸に着くと靴底の消毒。空港でも靴底やストックの厳しいチェックがあり、外来種の持ち込みや防疫に対する対策が取られている。日本も見倣うべき。
ミルフォードトラックの入り口で記念撮影。心得たものでガイドが順番に撮ってくれる。
我々ガイドツアー46名と個人ウォーク約10名が乗ってきたボート。1日に数便あるようだ。
この日は約1.5Kmを歩きグレード・ハウスに宿泊。
あっという間にグレード・ハウスに到着(笑)。チェックイン後に小屋前に集合する。
まず全員で記念撮影。その後に4グループに分かれて1時間半くらいのトレッキング(自由参加)。私達が並んだ後ろに韓国のツアー客15名強全員が加わった。John夫婦と私達だけがnon-Korean(笑)
20時半を過ぎてもまだ明るい。予報通り、明日も晴れますように・・
関連情報
予約方法
ガイドツアーと個人ウォークの二種類がある。予約方法については、以下のブログに別途まとめて記載したので、そちらを参照されたし。
ニュージーランド旅行/ミルフォードトラックのトレッキングとミルフォードサウンドのクルーズ(2023/11/6-14)
トイレ事情
宿泊するUltinate Hikes社が運営するロッジはすべて水洗トイレ。個人ウォークのDOC管理の小屋(ハット)3つも水洗トイレ。その他に、ポットンタイプのトイレが所々にある。多くは建設現場などに設置するような簡易トイレのようなタイプ。どれもきれいで、臭いが気になることもほとんどない。ペーパーは設置されている。道中にはこのような簡易トイレやDOC管轄の小屋のトイレがあるので、概ね2時間も歩けば次のトイレを利用できる。次項の「飲料水」に書いたように、川や沢の水は飲み水として利用されるので、立ちしょん、キジ撃ち、お花摘み等は厳に慎むこと。
飲料水
ミルフォードトラック内では、それなりの流量と流速のある川や沢の水は、基本的にどこでもそのまま飲める。ロッジも沢の水を引いている。白人系の人は水浴びが好きなので川や湖で泳ぐことが多い。気になる人は、上流で泳ぐところがなさそうな沢やせせらぎの水を汲むとよい。スタートは500mlのペットボトル1本の水で十分。途中で補給可能。
ただし3日目の峠越えだけは、水の調達が難しいので最低1L容器(または500mlx2本)は持って歩きたい。マッキノン峠の登り初めにあるDOC管轄のミンタロハット前を流れる沢で1L満タンにしておくとよい。
なお、個人ウォーク用のDOC管轄の小屋にある炊事場の水は、雨水を貯めたタンクから供給されているようなので、近くの沢で汲んだ方がよいだろう。ただニュージーランドではオークランドのような都市部を除いては、水道ではなく雨水を溜めて使用するのが一般的とのこと。日本の山小屋も雨水利用が少なくないので、どちらを使うかは個人の判断。
諸注意
サンドフライ対策
ミルフォードトラックには「サンドフライ」と呼ばれる小さなハエがいる。スナバエとかサシチョウバエと呼ばれるハエで、コバエより小さい吸血性のハエ。歩いているときは殆ど寄ってこないが、立ち止まるとすぐにやってくる。特に湖や沼、池塘、緩やかな沢などの水周辺は要注意。咬まれると痒い。たまらず掻いてしまうと、ひどく腫れてさらに痒くなりなかなか治らない。咬まれても15分は触らず我慢するとひどくならないと言われた。サンドフライ用の虫よけスプレーを現地のPharmacyなどで購入すること。Ultimate Hikes社のオフィスでも購入可能(NZ$15くらい)。なお、日本の虫よけスプレーはサンドフライには効果がない。かゆみ止めは使い慣れたものを持って行くとよい。
日差し対策
ニュージーランドの紫外線は日本の7倍とのこと。晴れたらサングラスや日焼け止めは必須。
雨対策
年間降水日数、年間降水量が多いことで有名。3日目の峠越えが雨天の場合は、それなりに厳しい山行になると思われる。また、まとまった雨が降った後は、登山道が水没する箇所があり、脛から膝下まで浸かることがある。ほとんどの人は登山靴のままじゃぶじゃぶ歩き、靴用の乾燥室で乾かすようだ。私達はロッジ内用としてマリンシューズを携行し、万一の時は履き替えるつもりでいた。いずれにしても用意周到な雨対策が求められる。
寒さ対策、万一の雪対策
シーズン初めの11月は日本の春山に相当し、場合によっては雪が降る。私達の前の週は降雪があり、氷点下の気温だったとのこと。寒さ対策でウルトラライトダウンを持って行ったが、幸いにも一度も着ることはなかった(ロッジ内は半袖で過ごした)。
念のためチェーンアイゼンをスーツケースに入れていったが、現地で積雪がないことを確認したので、ザックには入れなかった。
歩行タイム
1日目
(S)グレート・ワーフ15:21→15:38グレード・ハウス。チェックイン後16:17→(自由参加のガイドツアー)→17:28グレード・ハウス(泊)
2日目
グレード・ハウス08:31→09:48クリントン・ハット09:55→12:00ヒレレ滝ランチ小屋(昼食)13:00→13:32Hidden Lake Lookout13:36→15:11ポンポローナ・ロッジ(泊)
3日目
ポンポローナ・ロッジ07:35→09:01ミンタロ・ハット09:15→11:27Mackinnon Pass11:40→12:11マッキノン・パス・シェルター(昼食)12:47→15:51クィンティン・ロッジ。チェックイン後16:09→(サザーランド滝往復)→17:26クィンティン・ロッジ(泊)
4日目
クィンティン・ロッジ07:36→08:45ダンプリング・ハット08:55→10:45ボート・シェッド(昼食)11:15→11:29Mackay Falls11:38→14:04Giants Gate Falls→15:46サンドフライ・ポイント(G)
前後の移動
11月6日(月)
成田21:15発(18:30発が約3時間遅れ)
Air NZ 90便
オークランド11:24着(11月7日)
11月7日(火):
オークランド14:40発(成田便の到着が遅れ乗継便を変更)
Air NZ 623便
クイーンズタウン16:20着
11月8日(水):
Ultimate Hikes社オフィス前9:30発
ツアーバス
テ・アナウ湖13:30着
テ・アナウ湖14時発
ボート
グレード・ワーフ15時着
11月11日(土):
サンドフライ16:15発
ボート
ミルフォードサウンド16:30着
11月12日(日):
ミルフォードサウンドのクルーズ(1時間半)
ミルフォードサウンド10:40発
ツアーバス
クイーンズタウン15:30着
11月13日(月):
クイーンズタウン9:40発
Air NZ 614便
オークランド11:25着
11月14日(火):
オークランド10:15発
Air NZ 99便
成田17:05着
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コメント入力欄
ミルフォードトラックは雨がよく降ると聞きましたが、ツアー中は土砂降りの中でも進むのでしょうか?ロッジにとどまるのでしょうか?
ご覧いただきありがとうございました。
ご質問の件ですが、そこまで考えたことなかったですね。
ただツアーの仕組み上、先へ進まないと毎日スタートする後続のツアーにも影響が出ます。
過去のブログなどの記録を見ても、水没した道を膝くらいまで浸かりながら歩いたり、そこそこ強雨の中でも峠越えしています。
落雷などは最寄りの小屋で一時待機することはあるでしょうが、崖崩れなど余程の危険がない限りは前進すると思います。
ツアーを申し込む旅行会社、あるいはUltimate Hikes社に問合わせていただければと思います。