熊野古道 小辺路編③。小辺路:高野山から熊野本宮大社へ(2020/02/19-21)

山の記録

2020.02.26 01:11

二日目からいよいよ熊野古道の小辺路(こへち)に入る。薄(すすき)峠、祖母子(そぼこ)峠、三浦峠、果無(はてなし)峠の1000m越えの峠のアップダウンを繰り返す。薄峠以外はかなり標高を下げて次の峠に登り返すので体力が必要。また祖母子峠、三浦峠は麓の集落から急登が続く。

今回は熊野古道で一番厳しい修験道の奥駈道(おくがけみち)の予行演習も兼ねているので、山中の避難小屋で1泊する計画を立て、2泊3日で小辺路を歩き通すことにした。通常は祖母子峠の避難小屋ではなく、手前の大股の集落で1泊目とし、祖母子峠を越えた先の三浦の集落で2泊目、最後に三浦峠を越えて十津川温泉で泊まり(3泊目)、翌日に本宮大社へ進む3泊4日の行程が一般的である

この行程であれば、自炊道具や寝袋などを持っていく必要はなく、荷物も軽量化できて峠越えも楽になる

冒頭の写真は小辺路のゴール、熊野本宮大社。左手の幟には、日本サッカーチームのエンブレムである三本足の八咫烏(ヤタガラス)。このカラスが神武天皇をこの地へ導いたという神話である

歩行ルート図と標高グラフ

合計距離: 21745 m
最高点の標高: 1345 m
最低点の標高: 651 m
累積標高(上り): 1442 m
累積標高(下り): -1049 m

山行の詳細

まずは時間を戻して二日目の朝。高野山で宿泊した宿坊のある金剛三昧院(こんごうざんまいいん)で朝6時半からの勤行に参加した。この日の行程が長いので、本当は6時くらいに出立したかったが、折角の機会なので勤行に参加し、その後に朝食もいただくことにした。宿泊者は他にも数名いたようだが、勤行に参加したのは私一人だった。椅子席だったので助かった

出立前に金剛三昧院を撮影。今日はいい天気だ。雪の白が青空に映える。朝8時の遅い出立となった。万一、目標の祖母子峠の避難小屋に到達できなかったら、手前の萱小屋に宿泊するというバックアッププランに変更し、翌朝に早立ちすることになる

小辺路の入り口は分かりにくいが、金剛三昧院に宿泊した理由は、小辺路の入り口がこの寺の200mほど手前にあること。昨日チェックインする際に分岐の前を通っているので、間違える心配がない。最初は民家の間を抜けていくが、すぐに林道になる。途中で女人道と合流し薄峠に向けてしばらく進む

林道は一昨日と昨日降った雪でこんな感じ。雪道を歩けるとは望外の喜びである

紀伊山地の奥深い山並みを眺めながら最初の薄峠を越えていく

薄峠から下ること標高500mくらい。小さな大滝の集落にある東屋にやってきた。ここで休憩しようとザックを下すと、すぐに村人の爺さんが現れた。聞けば地元で小辺路のガイドもやっている方で、降雪後に祖母子峠に入ろうとする私をチェックしにきたようだ

それなりの降雪に備えてワカンやチェーンアイゼンなどの装備を持っていること、GPSで登山道を確認しながら登れること、雪山経験が適度にあることなどを確認すると、今度は貴重なアドバイスをくれた。本当にありがたい

大滝村に入る手前で数百メートルほど龍神スカイラインを歩いたが、東屋からはしばらく山道を進んだ。その後再び龍神スカイラインにでて、数キロこのような歩道のない道を歩く。時々車が通るので、水ケ峰分岐まで道路の端っこの吹き溜まりのようなところや、ガードレールに寄り添うように歩いた

水ケ峰分岐で再び山道の古道に入り、しばらくすると別の林道に出た。林道歩きの途中で奥駈道の稜線が見えた。写真の一番奥の稜線で、八経ヶ岳から釈迦ケ岳の山並みかと思われる

こちらの林道は車が全く通らなかったので、ボーっと道の真ん中を歩くことができた

この東屋でランチにした。昨夜、高野山のコンビニで調達しておいたカツサンドを食す

ボーっと歩いていて、ちょうど林道が下りになったので、ホッとしてこの標識を見落とし林道を50mほど先に進んでしまった。スマホのGPSナビが予定コースから外れている警告をアナウンスしたので、この分岐にすぐ戻ることができた。ここから再び山道の古道に入る

大股の集落へ下る山の南側斜面の道には雪は全くなかった。こちらは春山のような感じ

大股の集落まで下りてきた。トイレ休憩後に先ほどのガイドさんのアドバイスに従い、祖母子峠の山中泊の登山届を記入してBoxに投入した

大股の集落は急斜面に民家が並んでいて、最初はその間を抜けるように急坂を登る。その後は山道になるが、急登に変わりはなくタフな登りが続いた。その後、トラバース気味の緩めの登りを進むと、萱小屋に出た。女性が個人で建てた小屋で一般開放してくれている。右側に見えるように薪も積んである

小屋の横には沢から引いた水がホースから出ていて水には困らない。ただしトイレはないので、持参の携帯トイレを使用することになる

内部はとてもきれいで、三人寝るのがやっとというスペースだが、左下にあるように薪ストーブもある。火の始末に気を付けて使用するよう注意書きがあったので、外の薪も使用してよいようだ

高野山の金剛三昧院の出発が8時と遅かったので、この時点で14時50分。このままこの小屋に泊らせてもらって、薪ストーブで暖を取りながら一夜を過ごそうかと思案するも、翌日も行程が長いので、予定通り祖母子峠の小屋まで進むことに・・。本当に後ろ髪を引かれた

萱小屋からも気力で登り続け、祖母子峠の分岐まで到達した。右は護摩壇山への道で、左が小屋へのトラバース路、正面が祖母子岳の山頂を経由して小屋へ向かうルート。ガイドさん曰く、左のトラバース路は雪が多いと斜面の道が隠れて分からなくなるので、山頂経由で進むのが良いとのアドバイス。ガイドブックもそのように書いてあるので、正面ルートで進む

祖母子岳山頂。1344m。今回の全行程の中の最高地点。山頂は拍子抜けするほど雪がなかった。天気予報では寒気団の影響で警報級の大雪の可能性を警告していたが、結果的にはこのあたりはさほど降らなかったようだ

本当に幾重にも重なる奥深い山並みだ。西方面

南西方面の山並み。紀伊半島にはこんな自然が残っているんだと改めて思い知らされた

山頂から小屋への下りは、吹き溜まりで膝下くらいの雪があったが、ルートを選べばくるぶし程度の雪だった。明るいうちに今宵の宿に着けて良かった。右のトイレ棟は冬期使用禁止。左の小屋の左側に、工事現場に置いてあるような簡易トイレが置いてあった。水場はないので、ここから明日進む方向に5分程行ったところの沢で水を汲むことになる。自分はそこそこ水が残っていたのでそれを使用した

小屋の内部。まずは箒で床を掃除した。避難小屋としては悪くないが、萱小屋が良すぎた。寒いので、お湯を沸かして持参の焼酎350mlをお湯割りにして、おつまみやマグロの缶詰と一緒にすべて胃に流し込んだ。ちっとも酔えない(涙)。アルファ米の山菜おこわに湯を注ぎお腹を一杯にするも、寒さと久しぶりの避難小屋泊でなかなか寝つけなかった

重量を少しでも軽くしようと、冬用ではなく夏用の寝袋とシュラフカバーの組み合わせにしたのが失敗だった。3000m級の山で使用するモンベルのダウンジャケットEX1000を着て寝袋に入ったが、それでも寒く感じるのは年のせいか。シュラフカバーなしで冬用寝袋にした方がトータル重量はほぼ同じにでき、暖かかったかな・・・

歩行ルート図と標高グラフ

合計距離: 25889 m
最高点の標高: 1221 m
最低点の標高: 144 m
累積標高(上り): 1113 m
累積標高(下り): -2190 m

山行の詳細

翌朝5時に目覚め朝食を取る。暖かいインスタントスープにブドウパンとソーセージ。寝袋などの撤収に時間がかかり、小屋を出た時にはご来光に少し遅れてしまった。でも今日もいい天気のようでうれしい

5分くらい進むと一つ目の沢が現れた。雪のため沢に下りづらい

雪が心配したより少なかったので、細い登山道は隠れておらず、通過は容易だった。ただし左側は急な崖になっているので要注意

すぐ先に二つ目の沢。こちらの方が取水しやすい。まだ水はあるし、これから先は下りなので、汲み足す必要はなかった

下りで初めて石畳のような道が現れたが、すぐに石はなくなった

三田谷橋まで下りてきた。祖母子岳から1000mくらい標高を下げたことになる。山を迂回するように川の蛇行がすごい

一般道を三浦の集落までやってきた。ここから古道に入っていくが、道路に石畳模様の塗装がしてあるので、これを追えば間違えずに行ける

頑丈で揺れない吊橋を渡り山道へと向かう。吊橋手前の水場は出ていないが、民家の前を抜けていくと自販機がある

三浦峠も祖母子峠と同じように最初から急登が続く。旅籠をやっていたという吉村家の跡地の周辺の巨木

この枝は妖怪の手みたいだ

標高800mくらいまで急坂を登り上げると、水場がある。さほど冷たくはなかったが、ありがたい

水場から先は比較的緩やかなトラバース路が続いた

振り返ると、下りてきた祖母子峠からの稜線と三浦の集落が見えた。中央やや右奥の双耳のピークが祖母子山

登山道の崩落個所。鎖の先にトラロープが設置してあるので、掴みながら進む

祖母子峠に比べて三浦峠は雪がないが、標高1000mを越えたあたりから雪が現れた。でも少ない

三浦峠に到着。東屋でランチにする。お湯を注いでアルファ米の五目御飯とソーセージ

三浦峠の下りはこんな感じで石や岩もなく、膝に優しいフラットなトラバース路だった。おかげでどんどん飛ばすことができた

峠から800mほど下り、西中の集落に下りてきた(右側の山道から一般道へ)。ここから車道歩き。狭い上に歩道もなく、工事用車両が通るので要注意

8年前の豪雨による災害から復旧工事が続いている。土砂処理場には大量の土砂が積み上げられていた

一般道を歩くこと2時間弱。今宵の宿、十津川温泉の「昴の郷」に到着。かけ流し温泉に入りながら洗濯機で洗い物を済ませた。温泉後はおいしい料理に地酒の飲み比べセットを2セット。さらに一番おいしかったお酒を冷酒で1合追加。至福の時間だ・・・

歩行ルート図と標高グラフ

合計距離: 18648 m
最高点の標高: 1072 m
最低点の標高: 48 m
累積標高(上り): 1268 m
累積標高(下り): -1400 m

山行の詳細

朝食の代わりにお弁当を用意してもらい、翌朝は6時過ぎに出発。いよいよ小辺路のゴール、熊野本宮大社を目指す。今日も1000mを越える果無峠(はてなしとうげ)を越えていく。ホテル前の小さい方のトンネルを抜けてきて振り返る

すぐに柳本の吊橋に出る。定員5名。揺れる上に板が霜で滑るので、慎重に通過した

吊橋を渡ると、すぐに果無峠へ向かう古道の入り口。湧き水もある

おぉ、古道っぽい石畳の道だ。だけど、この石畳の道を下りで使うのは嫌だな。膝に衝撃を受けるのと滑りやすそうで下りづらい。この先にベンチがあった

ベンチでご来光を待っていると、5分くらいの短い時間だったが、滝雲のショーが見られた。右から左へ雲が流れ落ちていった

山の稜線からご来光。今日もいい天気だ

果無の集落に出た。熊野古道の紹介で雑誌やTVによく出てくる集落だ

民家の間を抜けていく石畳の道。左の家のお婆ちゃんが旅人にお茶を振舞ってくれる。勿論、朝早いのでお休み中だろうが・・

果無の集落を抜けて振り返る。奥には前日通過してきた三浦峠が見える

天水田跡地のベンチで朝食代わりにホテルに用意してもらった弁当を食べる

観音堂まで上がってきた。ここは良い休憩所だ。まずはお堂にてお参り

水場があって冷たい水が飲める。溢れた水が凍っている

トイレもある。ペダル式水洗の洋式トイレ。きれいだった。隣接の小屋は施錠されていて入れない

越えてきた祖母子岳が左の木の横に見える。ずいぶん遠くまで来たものだ

果無峠。標高900mくらい登り上げてきたが、これから900mくらい下る。場違い感満載のワカンを隠すため、グレゴリー65Lのザックに常にカバーをしてきた(笑)

下る途中で小辺路のゴール、本宮町が見えた

八木尾まで下りてきた。ここからは一般道歩き。歩道があるのでのんびり歩ける

上流で護岸工事をやっているせいか、それとも元々こういう色なのか、乳白色がかった青色の川。すぐ先の道の駅でお昼ご飯。カツカレーうまし

道の駅からしばらく一般道を歩いた後、脇道の一般道へ入って登り坂を進んだ。登りきったところで中辺路と合流し、厳かな雰囲気の古道を進んできた。すると住宅街に出て、この鳥居に着いた。現在の本宮大社の位置に対して、裏手からアプローチするような入り方になる

小辺路ゴールの熊野本宮大社。本殿の裏側から回ってきて、この門の左手より正面に出た。正面に続く長い参道を登ってくるアプローチではないので、ちょっと違和感と驚き。

門をくぐって4つの社に参拝するのだが、参拝順序を記した案内板を見逃して順序を間違えてしまった

おまけに撮影禁止の社殿を撮影。ご利益半減どころじゃないな・・

正面の参道を下りてきて、向かいのお土産屋で抹茶ソフト。槍穂から下りてきて上高地手前の徳澤園でアイスクリームを食べてしまうのと同じ感じかな。それにしてもお店のおばさん、真っ直ぐ作ってほしいな

この日の行程は川湯温泉まで続くのだが、以降は④中辺路後半に続く・・・

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なお、本山行の詳細については、以下の記録を参照されたし

憧れの高野山から熊野三山へ。町石道→熊野古道(小辺路→中辺路)☜ ヤマレコの記録

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