計画に当たって
新しいブログサイトの立ち上げとデータの引っ越し作業で、3月の雪山を丸っと棒に振ってしまった。やっと落ち着いたので、そろそろ山に出かけたいと思う余裕ができるようになった。ブログの引っ越しで無茶苦茶疲れたので、温泉に入れる山を物色。大好きな硫黄泉、それもかなり強烈な硫黄泉がいいなと思案して、奥日光の湯元か那須の湯本に絞り、久しぶりの那須「鹿の湯」に決定
四月上旬だというのに那須岳(茶臼岳)はほとんど雪がない状態らしい。直前のチェックでは、前日の9日(日)は寒波により降雪があり、でかけた登山者は暴風により途中撤退を余儀なくされていた。翌10日(月)の予報は快晴で風もほとんどない。ということで、毎度のごとく急遽出かけることに(カミさんはもう呆れることもなくなった)
それなら以前から一度やってみたいと思っていた朝日岳の東南稜を使って登ろうと計画。一応バリエーションルートだ。ノーマルルートで登り、途中から東南稜へと進むので、現地で状況を見極めて実行するか、そのまま一般登山道で登るか判断することにした
歩行ルート図と標高グラフ
最高点の標高: 1913 m
最低点の標高: 1471 m
累積標高(上り): 660 m
累積標高(下り): -666 m
総歩行距離:6.2k、累計標高上り:634m、累計標高下り:658m
私の歩行GPSログをもとにGoogle Earth Proを用いて3D歩行ルートの動画を作成した。右下の3点リーダーからPlayback speedを変更できるので、好みで調整されたし。
山行の詳細
峠の茶屋の駐車場からスタートし、途中から東南稜へとルートを外れて取り付きへ下る。そこから東南稜を尾根伝いに登って朝日岳山頂に向かう。その後、朝日岳から一般登山道で峠の茶屋跡の避難小屋まで下り、そこから茶臼岳をサクッとピストンし下山する
まずは車で駐車場へと向かう。東北道の那須ICで下り、そこから那須ロープウェイへ向けて一直線。途中のコンビニで朝食と昼食とスポーツドリンクを調達
どんどん坂を上がり、ロープウェイの麓駅の駐車場まできて茶臼岳の写真を撮影。素晴らしい天気。前日の雪は完全に除雪されて路面も乾いていたので、夏タイヤでさらに上の駐車場を目指す
峠の茶屋の県営無料駐車場に難なく到達。チェーンを積んできたが出番がなくてよかった。平日の8時少し前の到着で10台くらい。全然寒くなく拍子抜け。たった1日でコンディションがガラリと変わった。ラッキーだ
写真中央奥が朝日岳。これなら東南稜に行けそうと期待が膨らむ
駐車場から上がってすぐの鳥居。この時期は鳥居が結構雪で埋まっていて、匍匐前進でくぐって進むか横をすり抜けるかなのだが、この日はすんなり鳥居の下を通過
しばらく雪の道を進んだが、やがて雪はなくなりほとんど夏道状態になった。写真中央が朝日岳(1,896m)で、写真の左側から山頂へ続く稜線が東南稜
大分上がってきた、といっても大した標高差ではない。前方の「コル」とか「鞍部」とか呼ばれる稜線の凹んだところに峠の茶屋跡の避難小屋が小さく見える。一般ルートはあの避難小屋まで進んで、朝日岳は右の剣ヶ峰の山腹をトラバースして進み、茶臼岳は反対の左方向に進む
4番の案内標識まで登ってきた。これが東南稜への入り口の目印
標識の反対側には、黄色のペンキの石と立ち入り禁止の看板。ここが東南稜の取り付きへ下りていくポイント。「立ち入り禁止」はハイカーがつられて下りて行かないための看板と解釈してここから下った
正面の中央に真っ直ぐ上へと続く尾根が東南稜
砂防ダムの上から3つ目を目指して雪の斜面を下りていく。コース取りを間違えたようで、東南稜へ行かれた人たちの多数のGPSログ軌跡よりも右側をストレートに砂防ダムに向けて下りてしまった
上の写真を撮った位置からはダムに下りられなかったので、少し左手に進んで下り、砂防ダムの10mほど左側を向こう岸に渡った
砂防ダムのすぐ左の沢は雪で覆われ、その雪がとけて穴ぼこがいくつかできていたが、少し上流側で雪の上を歩いて沢を渡れた。沢を渡った後は取り付きへと進む。この時期は木の芽の状態なので、やぶ漕ぎが楽でありがたい
取り付きから少し上がったところで東南稜を見上げる。中央のピークを越えて、その左奥のピークも越えていく。その背後には、さらに朝日岳山頂に向けて小ピークが続く
東南稜の門が近づいてきた。東南稜を残雪期にやる人が多い理由が良く分かった。ガレザレで歩きにくいし、落石させやすい。アイゼンを利かせてピッケル片手に雪の上を歩く方がよほど登りやすいし、石も雪で固定されて落石もほとんどないだろう
この日は、東南稜と剣ケ峰の間の谷筋で、頻繁に自然落石が起きていた。幸いなことに尾根筋の東南稜では自然落石はなかった
左側の門を登る。ピーク直下は岩が脆く右へ巻いた
門の背後のギャップ。手前側をクライムダウンで下ってギャップの底におり、向こう側を登り返す
クライムダウンを振り返って。積雪期は雪の張り付き状態によって懸垂だろうな。雪が無くても、身長が低い人や手足が短めの人は懸垂下降が無難だと思う
反対側の登り返しの壁。ここは割と岩がしっかりしていて助かったが、見た目よりてこずった。写真の左上に光の反射なのか、変なものが映ってしまった
難所を抜けて茶臼岳を振り返る。前日はガトーショコラ状態になったようだが、あっという間にふりかけが消えた
茶臼岳の右方向に剣ヶ峰とトラバース路(写真左側)。下りはあそこが鬼門になるか?雪の状態がちょっと心配
剣ヶ峰の右奥に会津駒ヶ岳(左寄り)と越後駒ケ岳(中央付近)。上越はまだまだ雪が多い
門(写真中央やや上の左側)からすぐ右の尖がりを越えて写真右側の尾根伝いに上がってきた。不安定なガレガレの斜面で神経戦が続く
さらに1個ピークを越えると朝日岳の山頂が見えてきた。ビクトリーロードだ
山頂の話し声が聞こえる。あと少し
ゴール。やれやれ。山頂に登ってきた方に撮っていただいた。ありがとうございました
岩が脆くて本当に怖かった。こういうところも、もう少し若い頃は力任せで強引に突破したが、体重をかけて大丈夫か、掴んだ岩は剝がれないか、足元は崩れないかなど、あれこれ心配してしまう。年だな・・
しばし、景色を楽しみながらパンをかじる。こちらは飯豊連峰(いいでれんぽう)。飛び回っている小さな虫(鳥?)が写真に写ってしまう
飯豊山の右方向に朝日連峰が見えた。iPhoneの限界写真
朝日連峰の右側には磐梯山(ばんだいさん、左手前)と西吾妻山(にしあづまやま。中央奥)も見えた
会津駒と越後駒などの上越方面
会津駒ヶ岳のすぐ左側には尾瀬の燧ケ岳(ひうちがたけ)とその左奥に至仏山(しぶつさん)も見える
多くの人が朝日岳山頂に登って来られた。これだけ来ているのだから剣ヶ峰のトラバースは大丈夫なのだろうと安心して下山開始。まずここのトラバース。積雪期は剣ヶ峰のトラバースと並んで緊張するところ。無雪期は緊張することもなく通過できる
右下から左上に伸びるのが東南稜。再びやることはないだろう(笑)
そして剣ヶ峰のトラバース。雪がなければ全く平気。この先で雪が残っていたが、割とすんなり通過できた。一部雪解けでぐちゃぐちゃ
峠の茶屋跡の避難小屋で小休止後に茶臼岳山頂へワープ
三倉山(みくらやま、写真やや左)方面。那須連山の端っこで、栃木と福島の県境。いつかあちらまで足を運んでみたい
奥に見える飯豊連峰が美しい。久しぶりに出かけるかな、遠いけど・・
茶臼岳から下りてきた。避難小屋が近づいてきた。右奥が朝日岳
最後に東南稜を眺めておしまい。気もちの良い春山だった。無事に終えて感謝感謝!
山行を終えて
山を本格的に再開したころに、2013年、2014年、2015年と毎年のように訪れた那須岳。うち2回は4月上旬だったが、今回と比べてはるかに雪が多く、剣ヶ峰のトラバースで緊張した記憶がある。今回も4月上旬ながら驚くほど雪は少なかった
雪の季節に東南稜は無理だなと自分で思っていたが、今回やってみて雪のない時も無理だなと改めて思った(笑)。なにせ岩が脆くて、次第に手をかけたり足をのせたりするのが怖くなる。実際に2回落石させてしまった。ソフトボールより少し大きいくらいの岩で、しまったと思たっときには、カラカラと落ちていった
後続者がいなかったから大事に至らなかったが、落石させるようではこのルートをやる資格がない。大いに反省している。それじゃ、雪のある時にもう一度やるか?無理だな。もうそういう年じゃないと痛感した次第
ところで、この稜線のことをずっと「南東稜」と思い込んでいた。エベレストの一般的な登頂ルートも南東稜だし、他の山でも南東稜と呼ぶことが多い。ろくに調べもしないで、勝手に思い込んでいた自分が恥ずかしい。もうやることはないけど、しっかり「東南稜」と覚えておこう。でも何で南東じゃなくて東南?
今回の山行には、チェーンアイゼン、12本爪の本格アイゼン、ピッケル、ハードシェル(ジャケット)、フリースの帽子と手袋、お湯一杯の保温水筒を持って行ったが、すべて出番なく単なる歩荷に終わった。持っていくのを忘れたのは日差し対策の帽子
それはさておき温泉。強烈な硫黄泉の「鹿の湯」を目当てに那須にきたのだが、結局入ったのは大丸温泉の単純泉。実は帰り支度の駐車場で、近くのグループが「鹿の湯」へ行こうと話しているのを聞いたら、「やっぱり人気だよな」と気が変わってしまった。鹿の湯をやめて、同じ源泉の旅館にする手もあったな・・
那須岳周辺の山は登りやすいのでこれからも来ることがあるだろう。那須湯本の硫黄泉はそのときに再訪するとしよう
歩行データ
山行4時間28分、休憩51分、合計5時間19分
到着時刻 | 通過ポイント | 出発時刻 |
S | 登山指導所・登山ポスト | 08:25 |
08:45 | 中の茶屋跡 | 08:45 |
08:58 | No.4標識 | 08:59 |
09:30 | 東南稜取り付き | 09:30 |
09:56 | 東南稜の門 | 10:07 |
11:06 | 朝日岳 | 11:33 |
11:36 | 朝日の肩 | 11:37 |
11:56 | 恵比寿大黒 | 11:57 |
12:14 | 峰の茶屋跡避難小屋 | 12:15 |
12:38 | 山頂口 | 12:48 |
12:48 | 那須岳 | 12:58 |
13:01 | 山頂口 | 13:02 |
13:17 | 硫黄鉱山跡 | 13:18 |
13:23 | 峰の茶屋跡避難小屋 | 13:34 |
13:34 | 中の茶屋跡 | 13:34 |
13:44 | 登山指導所・登山ポスト | 13:44 |
13:47 | 駐車場ゴール地点 | G |
関連情報
駐車場
ロープウェイ山麓駅の少し先に峠の茶屋の駐車場がある。第1、第2合わせて167台。無料
トイレ
峠の茶屋駐車場のトイレは冬期閉鎖中だった(4月10日時点)。まもなく閉鎖解除されると思う。心配な方は、途中の「鹿の湯」駐車場周辺の公衆トイレ、またはその先の「恋人の聖地」のトイレを利用されたし
コンビニ
那須ICから県道17号線をロープウェイ方面に進むと、ローソン、セブン、セブン、ファミマ、セブン(一軒茶屋前交差点。これが最後)の順にある。那須は景観対策なのか、通常の各社の看板や店の外観デザインではなく、いずれも那須感を打ち出した同じような地味な(?)仕様なので、探すときはご注意を
日帰り温泉
ロープウェイ方面に上がっていくにつれて、道路沿いに那須湯本温泉、弁天温泉、大丸温泉がある。湯本の温泉街は硫黄泉が多く、その他は単純泉。湯本の「鹿の湯」は石鹸シャンプーはない(10年位前まではなかった)。石鹸シャンプーを使いたい人は、湯本の旅館などの日帰り温泉を利用されたし
那須湯本:
鹿の湯:8時―18時(17時受付終了)、年中無休、500円、TEL 0287-76-3098
鹿の湯から少し下ったところに、日帰り温泉が利用可能な旅館やホテルがある。同じ鹿の湯の源泉。中藤屋旅館、旅館山快、松川屋 那須高原ホテルなど多数
大丸温泉:
那須 休暇村:11時30分ー15時(14時受付終了)、年中無休、880円、TEL 0287-76-2467
大丸温泉旅館:11時30分-15時(14時30分受付終了)、火曜休みが多いが要確認、1000円(タオル付き)、TEL 0287-76-3050。日本秘湯を守る会の会員宿。今回は駐車場から下って一番近いこの温泉を利用した
コメント入力欄
こちらにもコメントします(どっちを使ったらいいのかわからないので)
ロープは必携ですか?
迂回するルートはありますか?
ご覧いただき、ありがとうございました。
お問い合わせの件、ロープはあった方が安心ですが、必携ではないです。
迂回ルートはあります。尾根筋の少し右側を登って迂回できます。
ただし、迂回するのはガレガレの斜面なので、そちらも安全といえるかどうか・・
個人的には、ガレガレの斜面よりは、脆いながらも岩稜を登った方が気が楽でした。
行かれる際は、どうぞお気を付けて!
PS コメント記入欄が重複してましたね。ご指摘ありがとうございました。
片方を削除します。