2022.06.03 10:26
約7年ぶりに美濃戸の登山口から無雪期の赤岳へ出かけた。今が旬のホテイランとツクモグサを見ながら、主峰の赤岳に加えて、阿弥陀岳、横岳、硫黄岳を周回する計画とした
冒頭の写真は、阿弥陀岳(2,805m)に登る北稜の途中から八ヶ岳主峰の赤岳(2,899m)を眺める。手前のピークは中岳(2,700m)。阿弥陀岳に登頂後は、中岳を通る稜線で赤岳に向かう
まずは諏訪南ICを下り、原村などを通って登山口の美濃戸へと向かう。朝5時に登山開始。南沢で行者小屋へと向かい、阿弥陀岳から赤岳、横岳、硫黄岳と周回し、赤岳鉱泉小屋から北沢を戻ってくる周回コースだ
駐車場から歩いてすぐ、南沢と北沢の分岐を南沢へと進む。しばらく進むと、ホテイラン(別名ツリフネラン)の自生地を通る。保護のため張られたロープから手を伸ばして撮影。亜高山帯に咲く多年草の小さな野生のランで、植物学者の牧野富太郎が「最も美しい野生欄」と称賛したとか・・
漢字で表記すると「布袋欄」で、その名の由来は、膨らんだ白い唇弁(しんべん)が七福神の布袋様のお腹に似ているため名付けられたという
おやおや、熱心に撮影している方がいる。この後ろ姿はひょっとして・・。お声がけしてみたら、やはりJimny-Hikerさんだった。何と7年ぶりのばったり再会だ。このホームページのヘッダー画像の写真に使わせてもらっている「孤高のブナ」の撮影者だ
二人で再会を喜び、男二人で抱き合ってしまった(他に登山者がいなくてよかった、笑)。スズキのジムニーを乗り継いで、山を駆け巡っている方で、通称ジムニーさん。初めてお会いしたのは、2015年1月の赤城山だった。赤城山の主峰黒檜山(くろびさん)から駒ヶ岳へと一緒に周回したのがお付き合いの始まり
その後、山愛好家のSNS「ヤマレコ」やブログを通じてやりとりをしていて、何度か山でニアミスしたものの、実際に再会できたのは今回が初めて。いつかどこかで「ばったり再会」できるという確信のようなものがあったが、こんな形で再会できるとは嬉しいやら驚くやら・・
ジムニーさんと話をしながら一緒に行者小屋へと向かった。樹林帯を抜けると赤岳が視界に入ってくる。左の稜線には赤岳展望荘の小屋も見えている。この景色が見えるようになれば、行者小屋はもうすぐそこだ
二人とも赤岳から横岳、硫黄岳へと周回するコース取りであることを確認して、私は計画通り北稜を使って阿弥陀岳に登り、そこから赤岳へと向かうことにした。ジムニーさんは、ここから赤岳を目指し、横岳周辺に咲くツクモグサをゆっくり時間をかけて撮影するとのこと
上手くいけば、横岳かその先で再び合流できることを期待するも、念のためここで記念撮影。居合わせた登山者にシャッターを押してもらった
バンダナを頭に被り、サングラスをかけているので分からないと思うが、パッと見はTOKIOの国分太一さん似で、目元は俳優の滝藤賢一さんに似たいい男だ(※個人の感想です、笑)。外見もさることながら、人柄が素晴らしく、老若男女を問わずファンが多い
冒頭の写真。二人で文三郎尾根の道と中岳のコルへの道の分岐まで進み、そこからジムニーさんは文三郎へ、私は中岳のコル方面へと、各々の道を歩んだ。北稜で阿弥陀岳を目指す途中に撮影した主峰赤岳の写真
やがて第1の岩が現れる。この岩を登って先に続く尾根を進む。岩は自分が登れそうなところを登ればよい。この日の朝は八ヶ岳ブルーの青空だった
急峻な尾根を進むと、第2の岩に出る。ここはクラックを利用して正面突破した
二つの岩は呆気ないほどすぐに終わる。大半は急な細尾根で、シャクナゲやハイマツの枝や根を掴んで攀じ登る。登りきると少し緩やかになり、すぐに山頂直下で一般登山道に合流した
阿弥陀岳山頂(2,805m)。奥は赤岳
南方向には八ヶ岳南部の権現岳、ギボシ、編笠山などが見える。その左奥には富士山、右奥には南アルプスの山なみ
富士山アップ。裾野が美しい
編笠山の奥に南ア北部の名峰たち。右から南アの女王と呼ばれる仙丈ケ岳、その左には貴公子とか団十郎と呼ばれる甲斐駒ヶ岳、左端は日本第2の高峰の北岳
西北には北アルプスの槍ヶ岳から穂高連峰への稜線がくっきり。さすがに残雪が多いな
さて、写真中央に見える登山道で、中岳を経由して赤岳に向かおう。まずは阿弥陀からの激下り。一般登山道も急峻で侮れない
中岳を越えて文三郎尾根との分岐地点まで登り返してきた。奥には、右から横岳、硫黄岳と周回する稜線が続く。硫黄岳の左奥に双耳峰の天狗岳が見える。東天狗岳には本沢温泉から昨秋再訪した
分岐から赤岳を目指すと、山頂の上にハロ(日暈、ひがさ)ができていた。天気予報通り、薄い雲が出始めた
赤岳山頂直下の岩場の登り。奥の稜線の窪んだ部分を目指して進む
あと少し。稜線の窪んだところに竜頭峰の標識が小さく見える。あそこから左方向に山頂を目指す
赤岳山頂(2,899m)。日本百名山でもあり山梨百名山でもある。奥は富士山
富士山アップ。低い雲が厚くなってきた
赤岳頂上山荘はコロナで3年連続休業のようだ。小屋は締まっている
頂上山荘からの眺め。これから進む尾根が一望できる。まずは眼下の赤岳展望荘へと下り、稜線を先に進んで横岳のピーク群を進む。写真中央上部に見えるのが硫黄岳、その左奥に天狗岳、一番左奥が蓼科山
展望荘から横岳方面に進むと、オヤマノエンドウがあちらこちらに見られた
日の出ルンゼの急な斜面を登りきるとツクモグサの群生地に出る。北海道ではまだあちこちで見られるが、本州ではここ横岳と白馬岳のみに自生する絶滅危惧種の高山植物。白い毛で覆われているが、毛はやがて落ちていく
こちらはだいぶ毛が落ちてきている
今年は沢山咲いているように思うが、気のせいかな?
赤岳を振り返って。山頂から下りてきた稜線を境にして、ハイマツの生え方が左右(東西)で全く違うのが見て取れる
ツクモグサの群生地には、ジムニーさんの姿がなかったが、奥の院と呼ばれる横岳山頂(2,829m)を目指しているときに、山頂にジムニーさんらしき姿を捉えることができた。山頂に着くと、硫黄岳方面へと下っていくジムニーさんの姿を確認できた
山頂標の左奥には、今にも雲で埋もれそうな富士山
横岳と硫黄岳の鞍部(低くなった部分)にある硫黄岳山荘の手前で再び合流することができた。写真は硫黄岳へ登り返すジムニーさんの後ろ姿。以降、駐車場まで話をしながら一緒に下った
硫黄岳山頂(2,760m)から本日周回した阿弥陀岳、中岳、赤岳、横岳の山々(右から反時計回りに)
硫黄岳の爆裂火口。先月、阿蘇山で同じような爆裂火口跡をいくつか見てきた
赤岩の頭へ下る。ここだけ雪が残っていた。幸い赤岳鉱泉への下り口部分には雪がない。左は阿弥陀岳で、右奥が南プスの千丈と甲斐駒
赤岩の頭から樹林帯を赤岳鉱泉小屋まで下りてきた。背後は横岳の稜線。左の解体中の骨組みは、沢の水を散水してアイスクライミング用の氷壁を作るためのもの。通称「アイスキャンディー」と呼ばれ、赤岳鉱泉の冬の名物。トレーニングに使用されている
赤岳鉱泉小屋からは、沢のせせらぎの音と新緑に癒されながら北沢の歩きやすい道を下って駐車場へと向かった
実は、計画段階では那須朝日岳の東南稜へ出かけるつもりだった。念のため、懸垂下降の道具一式を持っていこうとしたら見当たらない。4月に実家に行った際に向こうで練習してそのまま置いてきてしまったことに気づく
代替案として、黒戸尾根で甲斐駒ヶ岳に登る1泊2日の山行を検討したが、2日目の天気予報が今一つパッとしない。諦めて日帰りとし、ホテイランやツクモグサが見頃の赤岳に出かけることにした。無雪期の赤岳は4年ぶりで、美濃戸から無雪期に登るのは7年ぶりだ
結果は大正解。南沢へ入りホテイランの自生地まで来ると、熱心に写真撮影している方がいた。しゃがんで撮影している後ろ姿をみて、もしやと思い声掛けすると、やはりジムニーさんだった。2015年1月の赤城で出会って以来だ。いつかどこかで再会する予感はあったのだが、ここで再会できるとは行き先選びの幸運だった
一緒に行者小屋まで歩いたが、ついて行くのが精一杯で赤城の時の記憶が甦った。お互い横岳方面へ周回することを確認し、私は計画した阿弥陀の北稜へ進み、その後に赤岳から横岳を目指すことにした。横岳でツクモグサの撮影に時間をかけるというジムニーさんにどこかで追いつける可能性に期待して一旦お別れ
私の足で本当に追いつけるとは思わなかったが、ジムニーさんがツクモグサの撮影にたっぷり時間をかけて調整してくれたおかげで、三叉峰を過ぎたあたりで奥の院に向かうジムニーさんらしき後姿を捉えることができ、奥の院から硫黄岳山荘への下りで再び合流することができた
最近、日帰り登山は25Lのデイパックのようなザックを使用しており、今回もガッツリ周回に向けて軽量ザックにしたことが奏功した。さもなくば、とても今回のスピードで周回できなかった。もう一つの要因は気温が低かったこと。朝方は0度を下回り、阿弥陀山頂までの登りはほとんど汗をかかなかったことで、快調に歩くことができた
とはいえ、久しぶりのガッツリ周回に足や肩など全身の筋肉が悲鳴を上げたのも事実で、この日の夜は久方ぶりのとても深い眠りだった。梅雨に入る前に、良い山歩きができた。うれしいバッタリ再会をお膳立てしてくれた山の神様に感謝感謝だ
なお、本山行のルート状況やタイムなどの詳細については、以下の記録を参照されたし
山行記録: 八ヶ岳 主峰群を周回。うれしいバッタリ再会 ☜ ヤマレコの記録