2022.03.31 14:25
栂池高原スキー場のロープウェイが3月12日から3月末まで早春運行を実施した(毎日運行)。ウィークデイにこれを利用して白馬岳(しろうまだけ、2,932m)に残雪登山すべく、天気予報と睨めっこしていた
ゴンドラとロープウェイでゲレンデトップまで行けるとは言え、余程の健脚でない限り日帰りはできない。山小屋は閉まっていてテント泊をすることになるので、1日目の午後と2日目の好天が必要。3月下旬と言えども、天候が荒れれば真冬並みの悪天になり、身動きが取れなくなってしまうので、天気予報には神経質にならざるを得ない
3月24日(木)と25日(金)の天気予報が良かったのだが、問題は24日の風が強いこと。テントで山中泊するので、強い北西の風では不安な一夜になってしまう。ということで断念し、今シーズンの残雪登山を諦めかけていたところ、3月28日(月)と29日(火)が曇り/晴れで風も穏やかな予報となり、ラストチャンスにかけることにした。
冒頭の写真が、この日の我が家@白馬大池。先人の遺構とも言うべき幕営跡が一つ残っていた。すでに雪面が硬くなり始めているので、スコップで穴を掘るのも一苦労だ。手を入れて再利用させてもらうことで、大幅な時間短縮と労力低減となり、本当に助かった
風上側のブロックを高くし、万一の強風にもテントが風に煽られないようにした。ご覧の通り、無雪期仕様のテントなので、雪が降り積もると出入りが難しくなる。このテントでは、冬山は雪が降らないときしかテン泊できない
横の煙突と右後方の露出物は白馬大池山荘(はくばおおいけさんそう)の一部。右後方は、小屋の屋根の棟だ(むね:屋根が三角に合わさったてっぺんの横木)。凍結して雪が覆っている大池の上でもどこでも幕営できるのだが、わざわざ小屋の横に幕営するのは、ホワイトアウトしてもGPSを頼りに小屋を目指せば、容易にテントに戻れるから
こちらが2020年8月に訪れた白馬大池山荘。つまりテント後方には、この2階建ての屋根の一番上の部分が、かろうじて見えているということ。さすがの豪雪地帯だ
まずは自宅を朝5時半頃に出発して、5時間かけて栂池高原スキー場までドライブ。夜間も利用できる第2駐車場に駐車して準備万端整える
最初はゴンドラ「イブ」で20分の移動。一気に約5キロ分のゲレンデをワープ。その後、ロープウェイを乗り継いで5分、スキー場トップへと向かう。ありがたや。それにしても、空模様は予報と随分違うな・・
山頂駅(自然園駅)を出て右手の尾根に登り、尾根伝いに天狗原まで急登。写真の通り、視界は10mほどしかなく、ホワイトアウト手前の状態。おかげで、急斜面の登りに集中できた(笑)
天狗原まで登りきるとガスが取れて少し青空も。正面は白馬乗鞍岳(はくばのりくらだけ)で、山頂は中央やや左の黒い点。BCスキーヤーはあそこまで夏道ルートで直登してドロップ開始。私は夏道を外れ、傾斜が少し緩やかに見える右端の尾根ルートを登った
その前に、天狗原にある白馬岳神社の祠に手を合わせ、安全登山を祈願する
脹脛(ふくらはぎ)が攣りそうになりながら尾根筋を登っていくと、妙高山・火打山・焼山の頚城三山(くびきさんざん)が右手に見えた。どうやら山頂駅から天狗原まで、この雲の中を上がってきたのでガスガスだったようだ
尾根を登り切って白馬乗鞍岳を回り込むように進むと、翌日に向かう船越の頭(ふなこしのかしら)から小蓮華山(これんげさん)へと続く尾根が見えてきた。白馬大池山荘を目指して、写真中央方向へ進む
16時過ぎに先人の幕営跡に到着。山頂駅から約4時間かかった。数か月ぶりのテン泊装備を担いだ登山で、急登の連続に苦戦し、コースタイム(CT)の約2倍の時間を要した。30分程でサイトを整備し直し、5時頃にテントの設営を完了。夕日も見えそうもないので、一人宴会を即開始。この日は本当に疲れた
夜は予報が外れて、風がほとんどなく、静かなテント泊になった。でも毎度ながら、なかなか眠ることができなかった
翌朝、4時に起きて軽く朝食を取り、5時に出立する予定が、もたもたして5時半になってしまった。結果、ヘッデンが不要になるほど明るくなってからの登山開始となった。空は薄青く、白銀の稜線と青空のコラボに期待が膨らむ
日本百名山の高妻山(たかつまやま)の右が赤く染まっているが、ご来光を拝むことはできなかった
船越の頭に登り上げると、後立山連峰(うしろたてやまれんぽう。通称、後立:ごたて)の稜線が姿を現した。右側手前に白馬三山の杓子岳(しゃくしだけ)と白馬鑓ケ岳(しろうまやりがたけ)、左奥には百名山の五竜岳(ごりゅうだけ)とその奥に双耳峰の鹿島槍ヶ岳が見える
薄い青空は消えて高曇りとなった。この日も天気予報の外れか・・・
船越の頭から一旦下ると、小蓮華山への尾根が続く。雪が融けて、夏道が一部見えている。NHKの「坂の上の雲」のドラマで、サラ・ブライトマンの歌声とともにエンディングに使われた坂道だ。左奥は杓子岳と白馬鑓ヶ岳
夏道の登山道のすぐ横には、融雪による亀裂や穴と、先人が踏み抜いた穴が多数。靴底には12本爪のアイゼンを装着しているので、できるだけ摩耗を防ぐために、露出した夏道を避けて雪の上を歩きたくなる。私も登山道のすぐ横の雪の上を歩いて、数回踏み抜いた。下は空洞になっており、股下まで踏み抜き、脱出に難儀した。以降は、雪がない部分も夏道を歩いた
ほぼCT通りに小蓮華山に到着。山頂からは白馬岳(左の一番高いところ)へと続く尾根が眼前に見える。一旦下って三国境(みくにさかい)へと進み、山頂目指して最後の稜線を進む
白馬山頂へワープ。ここまで喘ぎ喘ぎで写真を撮る余裕なし。途中の三国境からの急登斜面でプチ滑落もあり、CTより約30分遅く9時過ぎに到着。やれやれ
毛勝山・釜谷山・猫又山からなる毛勝三山(けかちさんざん)。立山連峰の端っこにある
「岩と雪の殿堂」として名高い名峰剱岳(2,999m)。威風堂々とした山容でファンも多い
遠くに槍ヶ岳と穂高連峰も見えた。高曇りながら素晴らしい眺めだ
眼下には日本有数の大きさを誇る白馬山荘の建物群がみえる。南斜面の雪解けは早い
さて、下りの最終ロープウェイが15時発なので、ゆっくりもしていられない。そろそろテントの撤収に向かおう。まずは大きく下り、帰路の苦行となる小蓮華山への登り返し
右側に鉢ヶ岳。その左、写真中央に黒部川が蛇行して日本海に注ぐ様子が小さく見える。三国境のあたりから
写真中央の白い部分が白馬大池エリア。背後の山々は妙高、火打、雨飾山(あまかざりやま)などの頚城山塊
テントまであと少し。小屋の煙突と屋根の棟が見える。11時頃には着けそうだ。これなら余裕で最終便に間に合う。出発時にパッキングをほぼ済ませてあるので、テントを撤収するだけ
白馬乗鞍岳に登り返し、往路を戻りながら天狗原へと下った。天狗原からロープウェイ山頂駅へと一気に下る。往路ではガスガスで何も見えなかったが、杓子岳と白馬鑓ヶ岳の迫力ある姿
右下隅は私が下っている斜面。BCスキーヤーはスイスイと下っていくが、登山者にとっては劇下りの斜面だ
山頂駅の手前まで下りてきた。写真は栂池ヒュッテと栂池山荘。その向こうに自然園が広がる。夏は高山植物の宝庫で、観光客も多く訪れる
13時半過ぎに山頂駅に無事下山。アイゼンを片付けて下山準備を済ませ、14時発のロープウェイで下山した
青空はほとんど見えず、白銀の稜線とのコラボはなく、モノクロ写真のオンパレードのような記録になってしまったが、気持ちの良い一泊二日の残雪登山を楽しむことができた
さて、プチ滑落。久々に滑り落ちた。「この急斜面、ストックじゃきついな」と思いつつ、「万一滑っても下で止まるか。突起物もクラックもないし・・」と高を括って半分くらいまで急斜面を詰めたところで、本当にひっくり返った。その後は、スキーの上級斜面で転倒したときと同じ
残雪期の雪は良く滑る。ストックじゃ止めようがない。じたばたしようもなく、開き直って成り行きに任せ、30mほど滑って御鉢の底のような所で停止。幸運としか言いようがない。赤城神社の登山御守のご加護か、天狗原で白馬岳神社の祠にお参りしたおかげか、とにかく助けられた
それにしても、初日のロープウェイ駅から天狗原までと、白馬乗鞍岳の急登は辛かった。相変わらずパッキングが下手で荷物が多く、20キロ弱のテン泊装備を担いでの急登は、途中でやめて帰ろうかと思うほど苦しかった
全く使用せず、歩荷(ぼっか)訓練しただけで終わったスノーシューとコンデジ用三脚で3キロは重量を減らせた。まぁ、結果論ではあるのだが・・。無事に山頂を極めて帰ってこられたことに感謝感謝!
なお、今回の山行の詳細については、以下の記録を参照されたし
山行記録: 残雪の白馬岳(栂池スキー場から) ☜ ヤマレコの記録