2019.10.23 11:30
2日目の朝は6時からの小屋の朝食をのんびり食べて出発。いよいよ長年の夢を果たし、奥穂から西穂への縦走路再訪に向かう。奥穂までは小屋からピストンする人、吊尾根を経て前穂へ向かう人なども多く、結構な人で賑わっていた。西穂方面へ向かう人もそこそこいたが、やはり数は少ない。
この写真は奥穂からジャンダルムへ進む縦走路。馬の背と呼ばれる難所の一つ。両側が切れ落ちたナイフリッジ状の稜線。奥に突き出ているのがジャンダルム。フランス語で憲兵というような意味らしい。奥穂を守る前衛門のような存在
朝4時過ぎにトイレに起きたついでに小屋の外に出てみると、写真では分かりづらいが月の周りにリングができていた(画面の確度を変えるとうっすら見える)。日暈ならぬ月暈だ。
予報通り天気が良くない兆候。雨さえ降らなければ良しとしよう
5時過ぎに起きて黎明の移ろいを楽しむ。八ヶ岳と浅間山の間から太陽が昇るみたいだが、今日は雲でご来光は見えなさそうだ
皆さん5時くらいから続々と出立。西穂からの下りはロープウェイを利用するので、私は1時間半ほど遅れてのんびり出発。まずは小屋のすぐ横に聳える奥穂山頂に登る
祠まで上がって槍ヶ岳方面を望む。昔は祠が木製だったようなイメージがあるが、風雪にもびくともしない立派な御影石の祠だ
祠から槍穂の縦走路を眺める。本日は低い雲の雲海と高曇り。稜線はその間でしっかり遠望が利く。まずまずの天気だ
冒頭の写真。中央の丸い尖がりがジャンダルム。もう山頂に立っている人がいる。ちなみにジャンダルムとは、フランス語で傭兵のこt
左下には上高地。中央やや奥の右に焼岳、左に霞沢岳。中央最奥には乗鞍岳と御嶽が重なって見える
上高地の河童橋も見える
黄色のジャケットの方の前方にクライムダウンする登山者が見える。ここは本当に怖い。ジャンへ向かうと途端に難易度が上がり、この「馬の背」と呼ばれる核心部は、今回も跨いで進んだ。絶対に左右に落ちない(笑)
続く「ロバの耳」と呼ばれる難所を通過。この岩壁を斜めに上がっていく。登るのは下りるよりも恐怖感がなくていい
ジャンダルム山頂。天使が迎える。左横は槍ヶ岳。ジャンを眺めつつ30数年前と同じように直登するかどうか思案しながら進んできたが、取り付きまで来て直登することにした。ただし、若くないので今回は念のためザックをデポして空身で登った。以前の取り付きポイントは岩が崩落していたので、登れそうなルートで進むと何と2-3分で頂上に到達してしまった
以前の記憶では10分くらいかけたような記憶があるが、気のせいだったか・・。あまりのあっけなさにザックを担いで登ればよかったと後悔するも、まぁ仕方ない。ノーマルルートでデポの場所まで戻り、ザックを回収して西穂ルートへ戻る
ジャンダルムの山頂から奥穂を望む
途中でスライドした奥穂へ戻るカップルが岩場を通過中。青と赤のジャケット。あんなとこ自分も通って来たっけ?
ジャンダルムから先も何度もアップダウンを繰り返す。このピークも黄色の矢印の上を歩いて通過した。先日の戸隠山の「蟻の塔渡り」よりは幅が広いが、左に斜めっていて嫌らしかった。両側は「蟻の塔渡り」どころではなく、数百メートル下まで落っこちる
天狗のコルとよばれる鞍部まで来た。ここを左に下りれば岳沢小屋に行くが、このルートはエスケープルートにもなっているものの、不安定なガレ場を下りるので神経を使うし、決して容易なルートではない
天狗の頭に向けて岩場を登り返す
天狗の頭から登ってきた岩場を覗きこむ。こういう確度で写真を撮ると、とんでもないところに見えるが、ホールドやスタンスはしっかりしており案外簡単に登れてしまう。ただし、下を見なければ・・(笑)
間ノ岳とその奥に赤岩岳と西穂。何度も下って登り返す
毎度の下りが半端じゃない。どうやって降りるのって感じ。ここもその一つ。逆層スラブの難所
逆層スラブと呼ばれる難所の岩場。岩が下に行くほどへこんでいるのが逆層と呼ばれる所以。写真の上下をひっくり返せば順層になり、段に足を置いて下りたり登ったりできるが、逆層は滑り台のようだ。鎖を握って下りてきたが、岩が濡れていると靴底のフリクションも効きづらく厄介だ
逆スラの全容を見上げる
お次は間ノ岳。あの尖がりの上まで登る
尖がりのところまできた。口がカラカラ(笑)。左には赤岩岳とその右に西穂高。まだまだアップダウンが続く。やれやれ・・
赤岩岳の山頂に先行パーティーが数人見える。あと少しだ。頑張ろう
赤岩岳に向かう途中で岩壁を左に巻く。通過する岩棚が左に斜めになっていて谷底へ滑り落ちそう。鎖を握る手に自然と力が入ってしまう
赤岩岳の後ろに隠れていたP1のピークから西穂山頂を眺める。あと少しなんだけど、ちょっと疲れてきた。お昼前でお腹もすいてきて力が入らない・・(泣)
やっと西穂山頂に到達。ここから西穂山荘へは登山者の数がぐっと増える
西穂山頂直下の岩場の下り部分だけは要注意。登山者が多く上り下りが錯綜する。岩場になれていない登山者も多いので時間をかけて譲り合いながら通過する
山頂直下の岩場を過ぎれば、奥穂からの縦走路よりずっと歩きやすくなる
8峰のピラミッドピークまで飛ばして下りてきた。山頂標の右が西穂本峰
こちらは同じピラミッドピークの3月の写真。雪が少なめの年だったが、雪が岩を覆うとずっと歩きやすくなる
西穂山荘まで下りてきた。2時少し前。遅めの昼食として西穂ラーメンのみそ味を食す。生き返った。ここからロープウェイ山頂駅まではハイキング道のような登山道。飛ばして下りたが、途中でソロの女子にあっという間に抜かれた。気持ちだけ飛ばしているつもりでも、思うほどには足が動いていないということか・・
ほぼ待ち時間なしでちょうど到着したロープウェイに飛び乗る。ロープウェイから紅葉を眺める
同じくロープウェイからの紅葉。早く温泉に入りに行こう
30数年ぶりに奥穂ー西穂の縦走路を歩くことができた。記憶というのは都合の良いように増幅や縮小されるもので、こんなにアップダウンを繰り返したっけと唖然とする。20代の時は北ア最難関縦走路の一つを進むという高揚感と、次々と現れる岩場にワクワクし、西穂から上高地に夕方5時ころ下りた時には何とも言えぬ達成感に浸った。今回はやはり年のせいか、これでもかと繰り返すアップダウンに「やれやれ」感満載で、西穂に着くころには疲労感が溢れんばかりだった。ロープウェイで新穂高に下りる計画にしておいて本当に良かった
今回久しぶりに再訪してみて、このルートはやはり厳しいルートだとしみじみ痛感した。鎖とペンキの印をなくしたら、前穂の北尾根や槍の北鎌尾根に勝るとも劣らぬ難コースになる。逆スラなどはロープで懸垂下降を2回くらい繋がないと下りられない。鎖にできるだけ頼らず、かつ安易にペンキの印を探さずに自ら進むべきルートを考えながら進むことで、この縦走路は北尾根や北鎌などの岩稜コースの練習にはうってつけのコースだ
さて、これが高山在住での北ア最後の山になるだろう。最後にこのルートを歩けたことは最高の思い出になる。無事に歩き通せたことに感謝感謝!
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