2019.09.29 22:44
残り少ない高山の単身生活。あと何回北ア周辺の山に行けるだろうか。ということで、晴れたら可能な限り仕事そっちのけで山に出掛けることにしたい。今回はどこからアクセスしても遠い黒部五郎岳に出かけた。日本百名山の一つである。
冒頭の写真は2日目の朝、黒部五郎山頂でのご来光。
今回アクセスした折立は薬師岳の登山口。薬師岳には今年のGWに飛越トンネル登山口からアクセスして登った
今回は折立からGWの時に宿泊した太郎平小屋を目指し、そこから薬師岳とは反対方向に進み黒部五郎岳に向かう
折立登山口は有峰湖の奥にある。有峰湖へは富山県側と岐阜県側からアクセスできる。私の単身赴任先の高山からであれば岐阜県側からアクセスすれば2時間ちょっとで折立まで到達できる
ところが、神岡町から飛越トンネルへ向かう道路が、トンネルの約4キロ手前で発生したがけ崩れが依然として復旧しておらず、通行止めになったままだ。GWの時は通行止め地点から約1時間かけて飛越トンネルの登山口まで歩いたが、この1時間のロスが多きい
やむなく国道41号線を富山へ北上し、そこから有峰湖へ向かう有料道路の亀谷料金所経由で入ることにした。朝4時にアパートを出て、5:45に料金所に到着。ゲートは朝6時きっかりにオープン。平日の金曜日で先頭から12台目だった。待ち時間の15分はコンビニおにぎりの朝食時間になった
折立からは、いきなり樹林帯の急登が続く。途中のアラレちゃんの看板があるところで日本海側の鍬鋤山(くわすきやま)が見えた。この樹林帯は展望がなく、辛い登りが続くが、唯一ここで富山側の展望が少しだけ広がる
樹林帯を抜けると、比較的緩やかな登りになる。稜線の風に吹かれてとても気持ちがいいが、遮るものがないので日光に晒される。登山道の補修工事が行われていた。三人の工事関係者に「ありがとうございます」とお礼を言って通過
進行方向の左前方に薬師岳の山容が見えてきた(写真中央奥)
左横には遠くに剱岳(左)と立山(右)が見えた。あちらにも行きたいが、なかなか天候とスケジュールが合わない
太郎平小屋に到着。折立から3時間。自分としてはとてもいいペースだ。太郎の小屋は、GW前後に臨時でオープンしていて重宝するし、秋も比較的遅くまで営業してくれるので本当に助かる
小屋前の標識の後には裏銀座と呼ばれる稜線が続く。標識の右には三俣蓮華山から双六岳の山並み、左側には鷲羽岳、ワリモ岳、水晶岳と続く。昨秋歩いたが、ぜひとも再訪したい素晴らしい稜線だ
水晶岳のアップ。その名の通り、ところどころ水晶が岩の表面に出ていてキラキラしている。国立公園内なのでもちろん採取禁止ですよ
こちらは尖ったワリモ岳と鷲が翼を広げたようなどっしりした鷲羽岳
三俣蓮華山(左)と丸山(右)。手前には雲ノ平が広がる。来シーズンにはテントを担いでのんびり出かけたい
太郎平小屋ではポンプで引っ張った水があり、登山者には大変ありがたい
小屋を後にして北ノ股岳を目指す。この辺りには池塘と呼ばれる小さな水たまりが点在し、いいアクセントになっている。北ノ股の左の稜線の奥にはゴールの黒部五郎岳の山頂が見えてきた。草たちが黄色く色づき、秋が始まっている
そして低木も。ダケカンバの赤がいい感じ
北ノ股岳の手前の太郎平山までくると、黒部五郎岳がしっかり見えるようになる(写真右)。中央奥には槍ヶ岳から中岳への稜線も見えるようになり目を楽しませてくれる
奥は槍ヶ岳から大喰岳(おおばみだけ)、中岳ヘと続く稜線。手前は丸山から双六岳に続く稜線
振り返れば薬師岳の大きな山容
おやおや、北ノ股岳から黒部五郎岳に向かう稜線に雲が湧いてきた。日本気象協会の有料サイト「山の天気」では、2日間とも黒部五郎の山頂天気予報は快晴なんだけどな・・・
北ノ股岳山頂標の右にはワリモ岳と鷲羽岳。その右奥に尖っているのは大天井岳(おてんしょうだけ)。その右手前が三俣蓮華岳。山頂標の左は水晶岳から赤牛岳への稜線。気持ちの良い秋晴れ
でも北ノ股から先に進むと雲に覆われて、私が進む稜線はガスに覆われてしまった
ライチョウが一羽。まだ若い。はぐれたのか一人立ちしたのか・・・
黒部五郎方面もご覧の通り。まだお昼を回ったばかりというのに
黒部五郎の肩に到着。明日も同じ道を通って戻るので、スルーしようかと思ったが、とりあえず山頂に行ってみることにした
やっぱりガスガスで展望なし
肩まで下りてくると一瞬ガスが引き。黒部五郎岳の象徴であるカールが見えた。左手の斜面にカールへ下りるジグザグの登山道が見える。あそこを下りて山小屋に向かう
肩からこの稜線を少し進んでカールへ下る。ガスが取れれば上空は真っ青なんだけどなぁ
カールまで下りてきて見上げる。まだ雲はかかっている。明朝に期待しよう
黒部五郎のカールから見上げた山頂方向。ガスで荒々しさ、厳かさが一層感じられる
ハイマツ帯から低木帯へと標高を下げた。木々が黄色に染まっている
秋っぽい登山道をしばらく進むと、視界が開けた
今宵のお宿「黒部五郎小舎」に到着。赤い三角屋根の建物は冬期避難小屋。左側の梯子を上って三角屋根のすぐ下の入り口から出入りする
小屋の後にはテン場がある
夜9時の消灯後に玄関横の受付カウンターへ頼んでおいたお弁当を取りに行く。ついでに外に出て星空撮影。全然寒くない
消灯後にゴソゴソ起き出して気兼ねなくこんなことができるのも、布団が7組置いてある部屋に一人だけのおかげ。最大20人くらい詰め込む部屋なんだけど今夜は個室状態。受付時に早朝出立と申告したからか、個室を充てがわれ本当にありがたい
天の川を捉えられるようになったが、もっとシャープに天の川を撮れるようになりたい
翌朝、3時半に小屋を出立。ヘッデンの明かりで昨日通ってきた道をカールへ戻る。カールの壁を登り始めると槍ヶ岳から穂高連峰の稜線がきれいなシルエットを見せた
ご来光はこちらの方角からだ。美しく静かな黎明のひと時
どうやら鷲羽岳と三俣蓮華岳の間から日が昇るようだ
肩から山頂へ向かう途中で日が昇る。山頂へ急ぐ
何とか間に合った。山頂で迎えたご来光。合掌
雲海に浮かぶ左手前から笠ケ島、乗鞍島、御嶽島。山頂からは三つの百名山が素晴らしい角度で並ぶ。本当に美しい
こちらは穂高連峰。左の北穂から涸沢岳、奥穂、ジャンダルムと続く。その右に続く稜線は西穂へ続く稜線。一般登山道では北アルプスでも屈指の難ルート。西穂は100mほど低いだけだが、角度のせいか他の穂高と比べると随分と低く見える
こちらは槍ヶ岳から大喰岳、中岳、南岳の稜線。その右の大きな凹みが北穂との間にある大キレット
ご来光の左側には鷲羽岳から水晶岳への稜線のシルエット
水晶岳の左には赤牛岳への稜線。稜線の後ろには後立山連峰の山並みが見える。五竜岳から左に唐松岳、その左に白馬三山
白馬三山の左には立山とその左奥に剱岳
雄大な薬師岳
黒部五郎から下り始めると2555m峰(左手前)と2578m峰(そのすぐ右奥)の間に雲が湧きだす。まだ7時前なのに・・。いや、ちょっと待てよ
やっぱりだ。期待通り滝雲になり始めた。雲が稜線を超えて滝のように流れ落ちていく
山小屋で作ってもらった弁当を朝食にして、しばし雲の移ろいを眺める。朝早く小屋を出立したおかげで、素晴らしい滝雲を見ることもできた
あっという間に雲は消え、美しいハイマツ帯の稜線に戻った。ハイマツ帯の中にこれから進む登山道が見て取れる。右奥は薬師岳。そのさらに右奥に立山
目の前のコルが先ほど滝雲が流れていたところ。左奥に中俣乗越(くぼみ)とその先に赤木岳から北ノ股岳に続く稜線が見える
黒部五郎を振り返る。昨日はこのあたりガスガスだったので分からなかったが、何とも気持ちの良いトレイルが続く
赤木岳への登り返し。アップダウンが続く
右手にはずっと裏銀座の稜線が見えていて、次第に角度を変えていく
北ノ股岳まであと少しのところで、黒部五郎(写真ほぼ中央)から歩いてきた稜線を眺める
北ノ股岳で自撮り。さすがに北アの最深部。登山者にあまり出会わない。本当に静かな山歩きが楽しめる
北ノ股から富山方向を見ると有峰湖が見える。背後の山並みの向こうに日本海が見える
草紅葉も雲も秋を感じさせる
低木も色づき、短い山の秋が駆け抜けていく
太郎平小屋まで戻ってきた。薬師岳にサヨナラ。折立に向けて下山する
おやおや、立山方面は雲が出てきた。あちらに行こうか迷ったが、こちらに来て正解だったかな
北ノ股岳を振り返ると、こちらも昨日と同じように雲がかかってきている。早朝に小屋を出て歩き始めて大正解だった
雲が出始めたけど私が歩いている上空は青空で、気温も昨日より高めで暑い。贅沢は言うまい。素晴らしい黒部五郎への稜線歩きを楽しむことができたことを感謝しよう
さて今回はどこからアクセスしても遠い黒部五郎岳に出かけた。高山のアパートから車で1時間ちょっとでアクセスできる新穂高温泉の登山口からは1泊2日では厳しいので、折立か飛越トンネルの登山口からアクセスすることにして検討
・飛越からだと折立より100m高いところからスタートできる
・有料道路を通らなくて良い
・時間を気にせず登山口駐車場まで行け、余裕を持ってスタートできる
ということで、飛越名物の泥濘登山道さえ我慢すれば飛越に分がある
気になるのは神岡から飛越トンネルに向かう4キロほど手前のがけ崩れ。今年のGWには約4キロ手前に停めて1時間ちょっと歩いた。この1時間は大きい。神岡町に電話すると、まだ修復しておらず通れないとのこと。やむなく折立からアクセスすることになった
折立も飛越トンネル経由でアクセスできればアパートから2時間ほどだが、通れないので富山回りせざるを得ず、2時間半を要する。まぁ、贅沢な不平か・・・
気象協会の有料サイト「山の天気」によれば、黒部五郎の山頂天気は2日間とも快晴予報。2回連続で外されているので一抹の不安はあるものの、出かけることにした。結果は半日も持たず雲に包まれてしまった。1日目はガスガスの中で山頂到達。黒部五郎小舎に1泊したので、2日目の午前の快晴のもと、山頂や稜線を楽しむことができた
小屋では78歳の現役山岳写真家の方と向かい合わせで食事をし、いろんな話をしながら美味しい小屋の夕飯(カツや石狩鍋風汁物)を楽しむことができた。この方、15キロの機材を担ぎ山に入っている強者で驚かされる。小屋の受付に掛かっていた「山と渓谷」のカレンダーの9月のページの写真(五竜)はこの方の写真とか。13枚の写真のうち、表紙と9月の2枚が採用されたとのこと
今回は3日間小舎に泊まり、山頂には行かずカールの写真だけを狙うとか・・。その山に感じるもの(厳かさや華やかさなど)を写真にするそうで、現像は富士フィルムの専門家に出すそうだ
自分は78歳になって15キロの機材を担いで山に入れるだろうか?何か一つでいいので、アマチュアでも「現役」と言えるものを持ち続けられたら素晴らしいと思う
さて、今回の黒部五郎で、遅々として進まぬ百名山も本州で残すところは最西端の伯耆大山のみとなった。それ以外で残るのは四国、九州、北海道の山で、ほとんど手つかずだ。みんな遠いので、まもなく訪れる完全引退後に車で旅行しながら片っ端から楽しみたいと思っている
なお、本山行の詳細については、以下の記録を参照されたし
山行記録: やっと来れたよ黒部五郎 ☜ ヤマレコの記録