昨年12月末で仕事を辞め、隠居生活に入った。二度目の引退だが、今回は後戻りすることなく、完全引退のつもりである。1月後半は尾張の実家で過ごし、本棚、本箱、机の引き出しなどの整理にとりかかった。海外を含め、引越しを繰り返すうちに増えていく荷物。引っ越すたびに溢れて実家の納戸に積みあがっていく段ボール箱。今回は気合を入れてこれらの整理にとりかかり、思い切った断捨離をやっている。結果、SUVの後部座席を倒し、車一杯になるほどの本や資料などを詰め込んで、市の都市美化センター(廃棄物処理センター)に持ち込んだ。
係の人が驚いたり迷惑がるかなと思ったら、何のことはない、慣れたもので手伝って廃棄用の籠に放り混んでくれた。聞けば、親がなくなって実家の跡片付けで同じように大量の資源ごみを持ち込む方が少なくないとか・・。早めに自分で終活を始めたのは正解だった。先々の息子たちの手間を少しでも減らすことができる。
1月末に一度関東の自宅に戻り、2月の中旬に入って再び実家で終活の続きを行っている。あれだけ片づけたのに、まだまだ出てくる。今日は引っ越しの際に余ったヤマトや日通の段ボール箱の後ろに隠れた本箱や三段ボックスなどの整理を行った。本や学会誌、卒研などの資料に加え、100本以上のカセットテープを廃棄した。
カセットテープは可燃物処理で、ケースはプラ、曲名をかいた目録は紙というように、分別して捨てる。ついついタイトルを見てしまう。60年代・70年代の懐かしきフォークやロック、五つの赤い風船、杉田次郎、荒井由実、オフコース、ビートルズなど、70年代・80年代のJ-POPSやアメリカの音楽、サザン、大瀧詠一、山下達郎、ビリージョエル、クィーン、などなど・・
実家の自分の部屋にあるミニコンポは約30年前のもので、ネットにもPCにもスマホにもつながらないが、Wカセットデッキがついている。一つ一つ思わず聞きたくなるカセットばかりだったが、そこは意を決して次々に廃棄処分した。唯一、片付けのバックミュージックにかけたのはイーグルスのカセット一本。
Take it easy、Peaceful easy feeling、Hotel Californiaなど学生時代に車を走らせていた時によくかけていたテープだ。ガンガン流すと、あっという間に70年代後半にタイムスリップ。全くごきげんな気分だ。
それはともかく、1月の時も今回も、片づけていると色んなものが出てくる。大学時代の研究資料やサークルの資料、入社してからの仕事に関する資料、結婚式に関する資料、MBA留学の準備資料などなど、思いもよらない資料が数十年の時を経て現れた。見返していると切りがないので、これらもどんどん廃棄処分。
そんな中で20代中頃の山行記録が出てきた。記録をつけていたことさえ忘れていたが、もっと驚いたのは、行ったことがないと思っていた山域に実は訪れていたこと、断片的に記憶していた山行がかなり実際と異なっていたことなどである。
例えば、GWに初めて行った南アルプスの仙丈ケ岳。部分的な記憶はあるのだが、途中で撤退したと長年思っていた山頂に実は到達していたとか、小屋に泊った経緯や冬山講習会で一緒だった人に偶然再会したことなどなど。他の山行記録でも同じような状況で、いかに自分の記憶が曖昧なこと、あるいはすっかり抜け落ちていることなどを思い知らされた。
たまたま見つかった山行記録でこの有様なので、記録のない記憶は実際とは相当異なるのだろうなと思い知らされた。人の記憶というものは、都合よく増幅されたり縮小されたりするものらしいが、本当の過去を知ることで、恥ずかしいやら懐かしいやら、いろんな想いが錯綜する終活作業である。