計画に当たって
どうしても見たかった紅葉がある。東北の栗駒山だ。岩手・宮城・秋田の3県の県境にある標高1625mの山。山愛好家にとって紅葉の「聖地」のような山である。紅葉シーズンともなれば、登山客のみならず観光客も訪れるので毎シーズン大混雑だ
紅葉は見たい、されど渋滞登山はしたくない、という心の葛藤から二の足を踏んできた。今シーズンは、これまで計画を温めながらも、いろいろな理由でなかなか実行できていなかった山行を優先して実行している。今回もそのシリーズの一つ
9月30日(火)の晴天に出かけた人たちの記録を見ると、上部は70%くらいまで紅葉が進んでおり、居ても立ってもいられなくなった笑。天気予報と睨めっこしていると、10月3日(金)が晴れ予報
10月4日(土)からは主要登山口の一つであるいわかがみ平において、紅葉シーズンの車両規制が始まる。この週末から紅葉シーズンが終わるまでは栗駒山は混雑必死だ
規制直前の平日、このタイミングしかない! 車で行くか新幹線にするか、登山口をどこにするか、思案のしどころ。マイカーで出かけて、麓の須川高原温泉でのんびり一泊する手もある(素晴らしい濁り湯だ)。カミさんからも一泊に寛容な意見をもらい迷った
結局、ロングドライブや翌日の行楽シーズン週末の高速渋滞を考えて車をやめ、新幹線の始発で出かけて夜に戻ってくる日帰り山行とした。運転の疲れも心配ないし、アルコールを飲みながら東京へ戻ってこられる。これも捨てがたい選択肢だ
東北新幹線の一ノ関駅からバスが利用できること、下山後に魅力的な温泉に入れることを考えて、須川高原温泉の登山口からピストンする計画を検討。しかしながら今回は初めての紅葉の栗駒山なので、反対側のいわかがみ平から『神の絨毯』を通過する王道を選ぶことにした
歩行ルート図と標高グラフ
いわかがみ平登山口から真っ先に『神の絨毯』を通過する中央コースで山頂へ向かう。その後、反対側の斜面の様子も眺めに天狗平、御駒岳(おこまがたけ)へと進んで栗駒山山頂に引き返す。下山は東栗駒山を通る東栗駒コースを使用して登山口に戻る
ところが計画通りに行かないのが世の中の「あるある」。この日は登山者が多く、いわかがみ平駐車場が早々に満杯となり、翌日から使用するはずの臨時駐車場に誘導された。これにより、3.5キロほど手前の臨時駐車場から登山口まで歩く破目になった
2D歩行ルートと標高グラフ
最高点の標高: 1625 m
最低点の標高: 829 m
累積標高(上り): 1027 m
累積標高(下り): -1021 m
3D歩行ルート動画
歩行ログをもとに、Google Earth Proで以下のごとく3D歩行ルートの動画を作成した。直近のGoogle Earthの画像は7月末の真夏の画像なので、Google Earthの過去画像から比較的時期が近い2015年10月17日の画像を選択して用いた。上部の紅葉が終わり、紅葉が麓へと下りてきた頃の画像なので、上部が紅葉真っ盛りの私の写真と印象が異なる点をご了解願いたい
カメラ高度は3,000m、カメラ角度は50度、速度は50秒程度の再生時間になるよう設定している。なお、右下の3点リーダーからPlayback speedを変更できるので、好みで調整されたし
山行の詳細

東北新幹線のくりこま高原駅からレンタカーで30分ほど、栗駒山の麓までやってきた。紅葉ピークの初期なので中腹から麓はまだこれからという状況だが、上部は色付いている。中央奥やや左が栗駒山、その左方向へと続くのが天狗平への稜線。中央奥やや右が東栗駒山
写真中央下にいわかがみ平が見えている。いわかがみ平駐車場まであと10分少々、上空に雲はなし!

一つ上の写真から走ること数分で、閉められたゲートの前に係員が立って車を臨時駐車場へと誘導している。臨時駐車場からシャトルバスを運行するのは翌日からのはずなのに??
なんと、いわかがみ平の駐車場は早々に満杯になり路肩駐車も始まったとのことで、明日から使用するはずの「いこいの村栗駒跡地の臨時駐車場」を急遽オープンさせたとのこと
翌日からは駐車料金500円/日が必要だが、この日は無料だった。一方、シャトルバスは明日からの運行なので、この日はバス輸送がない。係員曰く「ここから約1時間かかりますが、歩いて進んでください」
なんてこった・・

車道を歩いている途中。バイクは進入OKのようだ。このあと、サイクリングの自転車も通過していった。前方奥に見えるのは東栗駒山のピーク

小1時間かかるところを40分で上がってきた。汗びっしょり。計画通り登山道を歩いてレンタカーの返却時間の18時に間に合わせるには、想定外のこの車道歩きで時間を稼ぐしかない
結局、往復で40分稼いだおかげで、帰りは日帰り温泉にゆっくり入り、さっぱりしてレンタカーオフィスに戻った。普通のペースで歩いていたら返却時刻ぎりぎりで焦っただろう

いわかがみ平の栗駒山レストハウス前から中央コースに入る。よく整備された登山道で、最初は石が敷き詰められて、コンクリートで固められたような道を進む
ちなみに東栗駒山を進む東栗駒コースもレストハウス横から入るのだが、初っ端から泥濘の登山道を進む。こちらはスニーカーなどで入るのはやめた方が良い

ビューポイントのあたりまで上がってきた。いやぁ、綺麗だ。雲が湧いてきたが、紅葉に大きな影を落とすこともない。雲が湧いて紅葉を陰らせることを心配して、真っ先に『神の絨毯』へと向かう中央コースを進んできた
上空にはヘリが飛び回っていた。ここへ至る少し手前で、ごつい三脚とソニー製の本格的なビデオカメラを担いだ登山者がいた。話しかけたらやっぱり取材関係者だった(恐らく仙台放送)。この方は山頂には行かず、ビュースポット辺りで撮影したら下りるとのこと。上部から見下ろすようなシーンは上空のヘリが撮影するという二面作戦だ
ドローンなら両方撮影できるのでは?と不躾な突っ込みを入れてみたら、昨年はドローンで紅葉の斜面を舐めるような映像だったそうで、同じにならないよう今年は従来の方法を取ったとのこと

右横を見れば、東栗駒山の稜線。こちら方面の斜面にも紅葉が広がっている

ビュースポット辺りからは石の登山道から土の登山道になる。中央コースはよく整備されていて歩きやすい。年配者や初心者の登山者でも比較的登りやすい

ちょっとパノラマで切り取ってみた。山の全景を入れてしまうと引いた絵面になるので、広角の写真では紅葉の鮮やかさが減衰してしまう

360度圧巻の眺めを楽しみながら絨毯を進む

麓方向を振り返って撮影。『神の絨毯』とは本当に言い得て妙な表現だ。命名した人、コピーライターの才能あるよ

山頂はやたらと混雑しているのが見えるので、山頂直下から『絨毯』を見下ろして撮影

山頂標での記念撮影は順番待ち。クラウドファンディングで建立されたという駒形根神社の奥宮を入れて山頂標を撮影。奥宮にお参りするのを失念した

天狗平付近から栗駒山頂を眺めた写真。いわかがみ平側の斜面の様子。すごいな
栗駒山の反対側斜面がどうなっているのか見るため、御駒岳(おこまがたけ)へと向かう

反対側の眺め。こちらの斜面も負けていない。写真中央やや左上に須川湖が見える。少し右方向には須川高原温泉が見える。あそこの温泉は紅葉シーズンを避けて、静かで料金が落ち着く時期にいつか訪ねるとしよう

写真中央に見えるのは神秘的なブルーの昭和湖。カルデラ湖かな?

天狗平から昭和湖のすぐ横を通って須川高原温泉へと下る須川コースは、硫化水素濃度が高いため現在は通行禁止になっているので要注意

写真中央が須川湖。右端に見える湿原が、栗駒山から産沼コースを通って須川高原温泉に向かう途中にある名残ヶ原の湿原。写真左下は龍泉ヶ原の湿原

龍泉ヶ原湿原の全景。癒しの空間だな。残念ながら登山道はないので、あの湿原に行くことはできないようだ

こちらが栗駒山の反対側(北側)の斜面の様子。こちらも斜面全体がきれいに紅葉している

御駒岳まで足を延ばしてきて良かった。こちらは比較的人が少なく静かに楽しめる。この眺めを見ながら昼食代わりに行動食を食べた

さて栗駒山へ戻るとしよう

戻る途中から御駒岳を振り返って

もう少しで栗駒山山頂だ。さて下りはどのルートで行くか・・。追加の車道歩きもあるので、コースタイムの短い中央コースを戻るのが良いかな?

中央コースは団体ツアー含め人が多くてなかなか思うように進めないので、急がば回れで予定通り東栗駒山を通る東栗駒コースを進むことにした。狙い通り登山者が少ない静かなコースだ

草紅葉もきれいだ

こちらの東栗駒コースから眺める栗駒山の姿は秀麗だ

個人的にはこちらからの『神の絨毯』の眺めが好きだな

そろそろこの光景にお別れだ。素晴らしい紅葉を見させてくれた山の神様に感謝感謝!

灌木帯をしばらく進むと沢に出る。新湯沢の渡渉点だ。右岸にわたって岩の上を歩いていく。沢用でなくても普通の登山靴で問題ない

沢沿いに進んでいくと、通せんぼのロープが張ってある。ここから右手に入っていく

沢歩きの後はこのような気持ちの良い色づいた灌木帯を抜けていく。そして、この後に泥濘が多い登山路に変わる。この周回の順番だと最後に心が折れるような悪路になる。逆回りでこちらからスタートして中央コースを下りるのもありかな
我慢の泥濘コースを進むとレストハウスの横にひょっこり出た。レストハウスの玄関に蛇口と靴洗い用のブラシがあったので、汚れを落としてから下りの車道歩きに突入した。疲れもあり、下りも上りと同じ40分程度かかった
臨時駐車場から登山口までの往復約7キロ、標高差約290mの上り下りのアルバイトが今回の鬼門だったけど、聞きしに勝る紅葉をこの目で眺めることができ、素晴らしい山行だった
山行を終えて
桜もしかり紅葉もしかり、ピークに近づけば近づくほど美しいのだが、一方で人出が多くなりゆっくりと眺められない。こればっかりは致し方ないな
紅葉の山としてとても人気の高い山なので、人出の多さは甘受するものの、いわかがみ平まで車で進めず、臨時駐車場から歩くことになったのは想定外だった。私のような暇な隠居老人が多くなった日本の高齢化社会では、平日の旨味が昔ほどはないということか・・
今シーズンで言えば、9月30日(火)の晴れの日に出かけた人たちが、人出と紅葉の両面から最適なタイミングだったかもしれない
まぁ、結果論なので贅沢を言っても仕方ない。好天のもと素晴らしい景色を堪能することができたことは、日頃あまり行いのよろしくない自分にとっては感謝以外何もない
次回、紅葉シーズンに栗駒山に来る機会が訪れれば、最盛期を少し外しても良いので須川高原温泉ルートで温泉宿の宿泊をセットにしたいと思う
関連情報
アクセス
新幹線利用 いわかがみ平登山口の場合
東北新幹線のくりこま高原駅下車
東京駅 6:04発 → くりこま高原駅 8:26着(やまびこ51号)
駅前のレンタカー利用(東口:ニッポンレンタカー、西口:トヨタレンタカー)
くりこま高原駅からは、土日祝であれば毎年9月20日ごろから10月20日ごろまでの紅葉シーズンには「栗駒山紅葉号」がバス運行される。事前予約が必要。詳細は以下のサイト参照
栗駒山紅葉号2025 ☜ クリック
新幹線利用 須川高原温泉登山口の場合
東北新幹線の一ノ関駅下車
東京駅 6:04発 → 一ノ関駅 8:35着(やまびこ51号)
駅前から須川高原温泉行の路線バスあり。片道1,480円
往路:一関駅前 9:00発 → 須川温泉着 10:34着
帰路:須川温泉 16:35発 → 一関駅着 18:01着
須川温泉行は2025年6月14日~10月31日の期間運行で、平日も休日も同じダイヤ
岩手県交通(株)須川温泉行のバスダイヤ ☜ クリック
マイカー、レンタカーの場合
いわかがみ平へは舗装道路で快適なドライブだが、最盛期の10月4日(土)から10月19日(日)までは車両規制が行われる(2025年)。詳細は以下のサイト参照
紅葉時期の交通渋滞対策 ☜ クリック
トイレ、靴洗い
トイレはいわかがみ平駐車場にあり。山中にはない。靴洗いはいわかがみ平のレストハウス玄関前に蛇口とブラシあり
コンビニ
くりこま高原駅から途中にメジャーなコンビニ数件あり
日帰り温泉
臨時駐車場から新幹線駅、高速インターへ向かう場合、以下の選択肢がある。車で数分の距離
ハイルザーム栗駒:10:00~15:00は850円。 15:00-18:00は650円。TEL 0228-43-4100。こちらを利用した。ごく普通の入浴施設(ホテル)という感じ
https://eeonsen.com/day-trip
新湯温泉くりこま荘:10:00-15:00 。料金?。不定休のため予め要電話確認。TEL 0228-46-2036。いくつかある浴室は貸し切り制に変更になったかも。入浴料+貸し切り料金が必要か?
http://kurikomaso.jp/spa.html(保護されていないサイト)
コースの概況
中央コース:
よく整備されており、道迷いや危険個所なし。当日はレストハウスから少し登ったあたりで、強烈な獣臭がした。人が多いので熊が出てくることはないと思うが用心に越したことはない
栗駒山頂から御駒岳:
よく整備されており、道迷いや危険個所なし。御駒岳山頂は須川温泉側が切れ落ちた崖になっているので、写真を撮るために近づき過ぎないように要注意
東栗駒コース:
レストハウスから1キロ弱は泥濘の多い樹間を進む。岩もあって滑りやすいので要注意。それ以外の部分は歩きやすく景色も良いコース。当日はこちらのコースでは獣臭はしなかったが、人通りが少ないので熊鈴や撃退スプレーなどを推奨
歩行タイム(私のログ記録)
いこいの村栗駒跡地臨時駐車場 9:50 → 10:29 いわかがみ平 10:31 → 11:10 中央コース展望台 → 11:44 栗駒山山頂 → 11:59 天狗平 → 12:12 御駒岳 12:20 → 12:39 天狗平 → 12:56 栗駒山山頂 → 13:14 分岐 → 13:34 東栗駒山 → 14:28 いわかがみ平 → 15:05 臨時駐車場
注)コースタイムの0.7 – 0.8位で歩行している
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