計画に当たって
1カ月ほど前に出かけた南プス主稜線大縦走のリハビリ山行。「リハビリ」と言っても、ケガや病気になったわけではない。使い果たした体力と気力が再充填されたかどうかを確認するためのリハビリ山行。八ヶ岳にしようか思案の末、天気予報の良さそうな谷川岳に久しぶりに出かけることに決めて計画した
今回はロープウェイを使わず、登りは西黒尾根を使って山頂へ向かい、下山は天神尾根を下ってロープウェイ天神平駅の手前から田尻尾根を下りるルート取りにした
歩行ルート図と標高グラフ
2D歩行ルートと標高グラフ
最高点の標高: 1973 m
最低点の標高: 737 m
累積標高(上り): 1383 m
累積標高(下り): -1410 m
3D歩行ルート動画
歩行ログをもとに、Google Earth Proで以下のごとく3D歩行ルートの動画を作成した。直近のGoogle Earthの画像は5月の残雪期の画像なので、Google Earthの過去画像から比較的時期が近い2015年10月12日の画像を選択して用いた
カメラ高度は5,000m、カメラ角度は40度、速度は50秒程度の再生時間になるよう設定している。なお、右下の3点リーダーからPlayback speedを変更できるので、好みで調整されたし
山行の詳細

今回はロープウェイを使わずに麓駅から自分の足で登って下りてくる。ロープウェイの麓駅から歩いて10分ほど、西黒尾根の登山口に到着。調べてみたら、ここから登るのは8年ぶり

樹林帯の急登を進む。ここら辺りの紅葉はまだ先だな。樹林帯で風が通らない上に、蒸し蒸しとしてすでに汗だく

森林限界を超えたかな?風を期待したのだが、ほとんどない。天気予報では8mから10mほどの風が吹くはずなんだけど・・。一つ目の鎖場を通過中に見下ろして撮影

ガスが取れてロープウェイ天神平駅が見えた(写真中央やや左下)。右側は天神尾根でロープウェイ利用者はこちらの尾根を使って登ってくる

ウメバチソウとオヤマリンドウのコラボ。お花のシーズンはそろそろ終わりだ

2つ目の鎖場。鎖場はさらに上に続いているが、特に難しいというわけではない

ラクダの背の標識まで登ってきた。ラクダのコブとも呼ばれている。ここから一旦少し下って前方の登りになる。ガスがかかって上部が良く見えない。天気予報では朝7時過ぎからは晴れる予報だったんだが、雲に覆われて風もさほど吹いていない

一旦下ってラクダのコルを通過し、3つ目の鎖場の登り。谷川岳の岩はしっかりしていて浮石も少なく、安心して体重をかけられる

上部の笹原の中にザンゲ岩と呼ばれる岩が見えてきた。上空の雲が取れはじめ青空が広がってきた。良い兆候に期待が高まる

大きな岩の上を通過していく。ここの岩には手掛かり、足掛かりが少ないが、お助けロープが設置されている

黄色のペンキの矢印をたどって岩稜帯を進む。ザンゲ岩が随分と近づいてきた。右奥に見えるのが山頂への稜線。この辺りで上空の雲は完全に取れた

振り返るとご覧の通り。雲の中をひたすら登ってきたわけだ。どおりで蒸し暑かったわけだ

一面の雲海。すばらしい眺めだ。天気予報とは異なるが、これはこれでうれしいサプライズ

雲海の奥の中央やや左は尾瀬の燧ケ岳(ひうちがたけ、左)と至仏山(しぶつさん、右)、中央右の尖がりは笠ヶ岳

稜線の左にある道標に向けてビクトリーロードを進む。写真中央やや右がトマの耳(1963m)、一旦下がって右側にあるのがオキの耳(1977m)で谷川岳の最高ポイント。谷川岳は双耳峰の山で、麓周辺からはこの二つの猫耳のような特徴的な山容が良く見える
あと少しだ。耳たち、雲に隠れずそのまま待ってなさい

稜線に登り上げると万太郎山辺りまでの主脈が雲にのまれていた。谷川連峰の主脈と呼ばれる稜線は、肩の小屋の背後辺りから写真中央やや右奥へと続いている

上の写真は10年前の2月に撮影した写真。肩の小屋の左側から奥の方へと延びる稜線が谷川連峰の主脈だ。この稜線がすっぽりと雲に覆われていることになる

まずはトマの耳(1963m)の山頂。4年前の4月初めに息子と来て以来。あの時はガスガスで何も見えず、初めての谷川岳だった息子には可哀そうなことをした。機会があれば、また雪山のシーズンにでも一緒に再訪しよう

トマの耳から主脈方向の眺め。左から右方向へと雲が流れ、主脈を乗り越えて右側の谷へと落ちていく。「滝雲」という現象だ。滝雲の動画を以下に張り付けておいた

一ノ倉岳(中央)と茂倉岳(左)。8年前に主脈縦走と馬蹄形縦走を繋いで歩いて以来、あちらには出かけてないな・・

両耳の鞍部(凹んだ部分)からオキの耳を撮影

オキの耳も静かな山頂(1977m)。両耳とも青空のもとでおとなしく待っててくれた

オキの耳の山頂からトマの耳を振り返る。谷川岳の山容が良く分かる写真だ。右側が比較的なだらかで、左側がスパッと切れ落ちている。「非対称山容」と呼ばれる山の特徴だ。北アルプスの白馬岳も同じような姿をしている
右側は日本海側で雪が降り積もる斜面。強風で山頂の稜線を越えて大きな雪庇が形成される。誤って雪庇の上に歩を進めると、崩れた雪とともに奈落へと落っこちる。雪解け時に雪庇が崩落することで左側の斜面を削って絶壁のような急峻な姿になった
この絶壁が谷川岳の有名な一ノ倉沢の岩壁だ。多くのアルパインクライマー(ロッククライマー)が挑戦する岩壁で、世界で最も多くの人命を奪った記録でギネスにも載っている

オキの耳から先へ進んで、富士浅間神社の奥の院にお参り

奥の院のすぐ上に登ってオキとトマを撮影。このあたりが紅葉するのはもうすぐだな

オキの耳に戻って居合わせた方に撮ってもらった。背後の筋雲がいかにも秋を感じさせる

肩の小屋まで戻るとガスガスに。山の天気はすぐに変わる。谷川岳は特にそうだ。ロープウェイ山頂駅から天神尾根で続々と登山者がやってくるが、山頂はガスガスだな。1-2時間粘れば、また青空になるチャンスもあるだろう。幸運を祈る
写真を家で見返して気が付いたが、屋根にソーラーパネルが設置されたな。以前はなかった

曇り空の中、黙々と天神尾根を下ってきた。天神尾根は岩がゴツゴツとした尾根で段差も多い。膝の悪い人には厄介な登山路だ
ところどころ蛇紋岩様の黒光りする岩もあり、乾いていても滑るので質が悪い。やっぱり雪のある時が歩きやすい

熊穴沢避難小屋まで下りてきた。積雪期は右側を進んで真っすぐ行く、というか小屋が雪の下に埋もれていて目印の煙突がかろうじて出ているだけで、小屋の上を通過していくことが多い。ひさしぶりに全景を見た。ここから黄色の矢印に従って左方向へ夏道を進む

この分岐から天神尾根と別れて田尻尾根へと進む。ロープウェイ天神平駅はまっすぐ進んで10分ほど

左端の道を下っていく

田尻尾根には岩がほとんどなく、写真のような比較的フラットな下り坂が続く。ところどころ湿って滑りやすいところや、木の根っこが網の目のように露出して滑りやすいところがあるが、総じて歩きやすい
ただ、利用する人が非常に少ないので、熊鈴や携帯ラジオ・プレーヤーなどの活用をお薦めする

これでもかという数のピンクテープ。下りで使う際は自然にここへ出てくるけど、登りで使う場合はこれくらい目印がないと入り口が分からないもんね

あとは林道歩き(田尻尾根コースの3分の1弱くらい)。写真の通り小石の多いザレ気味の道なので、大股に歩くとズルっと滑る
ときどきロープウェイの軌道とクロスするので、上空を行くロープウェイの乗客から手を振られたら、笑顔で手を振り返そう(笑)

林道沿いの小さな滝。13時にロープウェイ麓駅に着いた
今回は絶妙のタイミングで雲が取れて山頂で絶景を楽しむことができた。山の神様に感謝!
山行を終えて
西黒尾根を登り始めると樹林帯が蒸し暑くて、暑がりの私は汗だくになりながら登った。さらにラクダの背あたりまではガスで周囲の景色が見えない。天気予報のはずれに選択ミスかと悔やむ
ところが、ザンゲ岩の手前あたりで劇的に青空が広がった。振り返れば一面の雲海とその上に真っ青な空。蒸し暑い樹林帯を登ってきた苦労もブルーな気持ちも一気に吹っ飛んだ
そこからトマとオキを往復するまで素晴らしい眺めを楽しむことができた。おまけに谷川連峰の主脈を越えて落ちていく滝雲まで見ることができた。何ともラッキーだった
ただ、下山後に日帰り温泉へ行こうとして「湯テルメ谷川」の廃業を知り愕然。「鈴森の湯」へナビをセットしようと電話番号を調べると、本日は休みかもとのAIもどきの情報。よく調べると本当に臨時休業だ
ふれあい交流館に行ってみると、ここも臨時休業。水上温泉を30分以上右往左往して万事休す。日帰り温泉をやっている温泉旅館を探す気力もなくなり、直行で帰宅することに。山頂で運を使い果たしたか・・・
まぁ贅沢は言えないな。久しぶりの谷川岳で絶景を観させてもらったのだから
関連情報
駐車場
谷川岳ヨッホの駐車場(旧谷川ロープウェイ駐車場):
星野リゾートが買収してしばらくは従来通り利用できたが、ついに駐車場ポリシーが変わり、無料で駐車できなくなった
https://tanigawadake-joch.com/access/
時間外の早朝は1Fのみ利用可能で時間外駐車料金500円/日を出る時に支払う。1Fトイレは使用可能。時間外はエレベーターを利用できないので駐車場入り口から外へ出て坂道を歩き、6階玄関方向へ向かう
2025年10月1日(水)~ 11月3日(月)の土日祝前日18:00より翌日6:30まで駐車場は全面閉鎖とのこと。ロープウェイ以外の登山者は要注意
なお、ヨッホ駐車場の少し下(坂道の途中)に新しい大きな駐車場ができていた。詳細不明
コンビニ
水上ICを下りてからセブン、ファミマの順にある。ともに24時間営業
日帰り温泉
鈴森の湯:
TEL:0278-72-4696。900円。11:00〜20:00(最終19時)、季節によって変動。源泉かけ流し。水曜日定休、9月10月は木曜も休業
https://suzumorinoyu.com/
この日は休業日だった(涙)
ふれあい交流館:
TEL.0278-72-8885。600円。11:00~20:30(最終受付20:00)。火曜日定休(休日の場合は翌日に変更)。水上駅から徒歩12分。街中の狭い道なので車ではちょっと入りずらい
https://www.enjoy-minakami.jp/spa.php?itemid=585
この日は臨時休業だった(泣)
湯テルメ谷川:
2025年3月末をもって営業終了
コロナが落ち着いたので、日帰り温泉を再開した旅館を利用するのも一手
コースの状況(私の主観です)
登山ポスト:
ロープウェイ利用者は切符売り場のフロアーで提出可能。ロープウェイを利用しない場合は、早朝から登山指導センターで提出可能。冷たい引水あり。トイレ利用可。
西黒尾根:
登山口、登山路ともに明瞭。樹林帯は地面が湿っており滑りやすい。ラクダの背あたりから鎖場あり。鎖を使わなくても岩場は通過できる。鎖を使用する場合は、片手で岩を掴み、もう片方で鎖を補助的に使うのが良い(両手でつかんで登ると振られやすい)
天神尾根:
岩が露出した登山道で段差もある。膝の悪い人には悪路。所どころ蛇紋岩様の黒く光沢のある岩があり、乾いていても滑るので要注意。要所には鎖やロープあり
田尻尾根:
岩がほとんどなく、比較的下りやすいフラットな登山路。樹林帯なので地面が湿って滑りやすい箇所がある。木の根が露出して滑りやすいところもある。ほとんど利用者がいないので、熊鈴や携帯ラジオ・プレーヤーの利用をお薦めする。田尻尾根コースの下3分の1くらいはザレ気味の工事用林道歩きになる
歩行タイム(私のログ記録。コースタイムの0.7-0.8位で歩行)
土合口駅/谷川岳ベースプラザ 6:24 → 6:31 登山指導センター 6:38 → 8:27 ラクダの背(ラクダのコブ) → 9:25 ザンゲ岩 → 9:47 トマの耳 → 10:03 オキの耳 → 10:15 富士浅間神社奥の院 → 10:20 オキの耳 → 10:35 トマの耳 → 10:48 肩の小屋 → 11:11 天狗の溜まり場 → 11:34 熊穴沢避難小屋 → 11:58 天神尾根・田尻尾根分岐点 → 12:42 田尻尾根登山口 → 13:02 ロープウェイ山麓駅
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