計画に当たって
「表銀座」という名前だけで若い頃は敬遠してきた気がする。当時は若気の至りで斜め上から目線で見ていたかも。百高山などを目指す過程で部分的には歩いていたものの、歳を取って素直に表銀座を歩き通してみたいと思うようになり計画した。
せっかく表銀座で槍ヶ岳まで縦走するなら、そのまま岩稜をつないで穂高岳まで行く計画を立てた。槍穂の間に横たわる大キレットと呼ばれる縦走路を最後に歩いたのは29歳の独身最後の夏だった。10代、20代の頃は、槍に登ったらセットで大キレットを歩く、というような感じだった。
四半世紀のブランクを経て、57歳で本格的に山を再開し、いつか再訪しようと思いながらも、百名山や百高山を優先したため、なかなか実行できなかった。今回、表銀座と槍穂の縦走を組み合わせ、中房温泉の登山口から3泊4日で上高地へ抜ける計画とした。
登山ルートと標高グラフ
山行概要
9月3日(火):中房(なかぶさ)温泉から合戦(かっせん)尾根で燕山荘(えんざんそう)へ
9月4日(水):燕山荘から表銀座コースで槍ヶ岳山荘へ
9月5日(木):槍ヶ岳山荘から大キレットを経て穂高岳山荘へ
9月6日(金):穂高岳山荘からパノラマコースで上高地へ
2D歩行ルート図と標高グラフ
最高点の標高: 3081 m
最低点の標高: 1455 m
累積標高(上り): 3812 m
累積標高(下り): -3756 m
3D歩行ルート動画
歩行ログをもとに、Google Earth Proで以下のごとく3D歩行ルートの動画を作成した。カメラ高度は9000m、カメラ角度は50度、速度は50秒程度の再生時間になるよう調整している。なお、右下の3点リーダーからPlayback speedを変更できるので、好みで調整されたし。
山行の詳細
1日目:合戦尾根
新宿から8時発特急あずさで穂高駅へ移動。そこから乗合バスで正午に中房登山口に到着。トイレと水の調達を済ませて登山スタート。水はトイレ棟の横の休憩スペースにある蛇口から沢水が出る。中房温泉のスタッフが、しばらく出して冷たくなったら汲むとよいと教えてくれた。
合戦尾根は北アルプスの三大急登の一つ。よく整備されているものの、合戦小屋を過ぎる辺りまでは厳しい登りが続く。
第一ベンチまで上がってきて振り返る。どんよりした曇り空の中、樹林帯の中を登っていくので蒸し暑い。すでに汗びっしょりだ。
奥の登山者の立ち位置から左下に下ると沢が流れる水場がある。合戦尾根には第一ベンチから、第二、第三、富士見の各ベンチがあり、30分ほど登ると休憩ポイントになるようになっている。
登り始めて3時間弱、我慢の登りを続けて合戦小屋に到着。冷やしたスイカが名物なのだが、スタッフのお姉さんが店じまい中だった。合戦小屋は食事はできるが、宿泊はできない。
合戦小屋からさらに登ると森林限界に近づく。ここから先は傾斜が少し緩くなった尾根道を進む。風を感じられるようになって良いのだが、晴れているとまともに直射日光にやられる。
小屋が見えているはずなんだけど、ガスでゴールの燕山荘が見えない。
合戦小屋から約1時間でテン場に到着。平日だけどほぼ満員御礼。
テン場のすぐ上にある燕山荘に到着。目標の4時間で着いた。ここも同様にほぼ満員御礼状態。台風10号の迷走で山に来られなかった人が一気に押し寄せた感じだ。海外からの登山客も多い。最近、日本の山小屋は台湾、韓国、中国、欧米などからの海外登山客が多くなってきている。
小屋の周囲はほとんどホワイトアウト状態で何も見えず。燕岳(つばくろだけ)へは、往復約1時間なのだが、行っても何も見えないので止めた。
燕岳は花崗岩の山なので、山頂付近は奇岩が多くみられる。こちらは有名なイルカ岩(2019年5月撮影)。
晴れていれば、燕岳山頂や燕山荘からは槍ヶ岳方面がくっきり見える(同じく2019年5月撮影)。
チェックインすると別館の廊下突き当りの上段に案内された。ほぼ満員なのに3人で入る3畳ほどの空間に私一人だけ。カーテンを締めると個室ユース同然で超快適だった。何とラッキーな。
2日目:表銀座
2日目の朝。ヘッドランプを点けて4時過ぎに出立。前日に断念した燕岳山頂には向かわず、表銀座を先へと進む。
オレンジ色のビーナスラインと手前の雲海を眺めながら歩く。すぐにジャケットを脱いで半袖に。抜群の天気なのだが、午後には天候が崩れる予報なので、できるだけ前に進みたい。
蛙岩。左を巻いていく。2019年5月の雪の時は中央の穴を抜けて通った。
この光景。槍ヶ岳を見ながら歩けるのが表銀座の売り。予報では午前中は晴れなので、眺望を楽しみながら歩けるはず。
後ろを振り向くと、右奥に剱岳、左奥にはお盆休み前に社会人の長男と歩いた立山の稜線が雲海の上に浮かぶ。素晴らしい。
これから進む表銀座の稜線。中央右奥のピークが大天井岳(おてんしょうだけ)。さらに右奥には穂高連峰の稜線が見えている。
雲海の先が光っている。あのモコモコあたりからご来光のようだ。
お出まし。幸先良い2日目のスタートだ。
でも、まだ5時半だというのに雲海がこちらにも広がってきた。消えて無くなればよいのだが・・
私が歩いている表銀座の稜線にも雲が押し寄せてきた。左からきた雲が稜線の低い部分を越えて、右側に流れ落ちていく滝雲を見ることができた。
常念岳(じょうねんだけ)や蝶ケ岳(ちょうがたけ)方面へ向かうパノラマ銀座と、槍方向へ進む表銀座の分岐から少し歩いたところで大天井岳にかかっていたガスが一瞬取れた。この眺めを見ながら、燕山荘で用意してもらった弁当を朝食代わりに食べていると・・
大天井岳と反対方向にブロッケン現象が現れた。ガスがスクリーンの役割を果たして、背後から当たった日光による私の影がガスに映る現象。ガスの濃さや太陽光の強さでブロッケンの色彩が変わる。今回はちょっと弱いけどラッキーだ。これが9回目のブロッケンとの遭遇。ちなみに仏像の背後の光輪はブロッケンを表現したものではないかともいわれている。
山岳信仰が強い日本においては、山の上で見かけたブロッケンは自分の影とは知らず、仏様が現れたと思ったのかもしれない。
ブロッケンを見られたのは良かったけど、その後もガスガスの稜線を歩き、大天井ヒュッテに到達。時刻はまだ朝8時。予報よりずっと早くガスってしまった。
しばらく稜線を歩いていると、左手側のパノラマ銀座の稜線がくっきり見えてきた。
右手側の槍ヶ岳や北鎌尾根のガスも取れた。表銀座はこうでなくちゃね。
百高山の一つの赤岩岳までやってきた。今回は先を急ぐのでスルー。上空には高い雲も広がり始めた。
ヒュッテ西岳に到着。西岳山頂へのピストンもスルーして先を急ぐ。
ヒュッテ西岳から東鎌尾根(ひがしかまおね)を一旦下って水俣乗越(みなまたのっこし)を目指す。ここからは槍の穂先を正面に見ながら進むのだが、雲に覆われている。
下っていると、百高山の赤沢山に救助ヘリが来た。救助隊員が下りて行った。藪漕ぎ帯で滑落事故か?無事を祈る。
水俣乗越と呼ばれる東鎌尾根の最低鞍部まで下ってきた。標高2,480m。時刻は11時半。ここは槍ヶ岳の北鎌尾根をやった時に通過したところ。7年前の還暦の年だった。ここから右手に天上沢を下って北鎌沢の出合へ向かった。懐かしい。
この先でレーズンパンなどを昼食代わりに食べてエネチャージ。ここから東鎌尾根を約600m登り返して槍ヶ岳山荘へと向かう。
これでもかというくらいの木段の連続。よく整備されてはいるのだけれど・・。ここは鉄梯子を登ってきて見下ろした写真。この先も1時間半ほど登り続け、ヒュッテ大槍まで100mという看板のところで雨が降り出した。天気予報が見事に当たってしまった(泣)
小走りでヒュッテに駆け込んで雨宿りすることも考えたが、しばらく止みそうもないのでレインジャケットとパンツを着用し傘をさした。しかしながら雨がさらに強くなったので、結局ヒュッテの軒先で15分ほどやり過ごし、雨足が弱まったところで先へ進んだ。自分としては数年ぶりにレインウエアを着こんで歩くことになった。
途中、ゴロゴロ鳴りだしたので傘をたたみ、小雨の中、濡れた岩に緊張しながら鎖場を抜けてきた。難所を通過すると、幸い雨もやんでメスの雷鳥がやってきた。
100m毎のカウントダウン。残り100mなのに小屋はガスで見えない。ビクトリーロードどころではない。
小屋にチェックイン後、濡れたレインウエアや衣服を干すも、乾燥室ではハンガーと干すスペースを見つけるのに苦労した。衣類などがくっつき過ぎて、なかなか乾かなかった。
16時頃にはガスが取れて日が差したが、驚くことに平日にもかかわらず穂先は数珠繋ぎの人だかり。まるで三連休の週末のような混みようで山頂往復をしばらく見合わせた。
上の写真は17時半頃の写真。17時に夕食が始まって穂先を登り下りする登山者は減ったが、傘を天日で乾かしながらアルコールをしこたま飲んでしまったので、酔っぱらいは槍の穂先に行かないことに。
明日進む大喰岳(おおばみだけ)方面。左奥に前穂高岳の北尾根のギザギザ。明日は午前中晴れで午後からガス予報。でも雨の心配はなさそう。明日は北ア屈指のスリリングな岩稜を進むので、雨だけは勘弁願いたい。
それにしても昨夜の燕山荘に続いて、この日の槍ヶ岳山荘もほぼ満員御礼状態。雨でテント泊をやめて小屋泊に変更した人もいたようだ。幸い私は壁際の寝床で、しかも反対側の隣が空いていたのでゆっくりできた。私の部屋は何と半分くらいが海外からの登山客だった。時代は変わったな・・・
3日目:槍穂縦走(大キレット越え)
3日目。4時半出立。4時過ぎに小屋を出ると、この日も満天の星空だった。しばらくすると、地平線がオレンジ色になっていく。ビーナスラインに浮かぶあの雲は・・
私にはお魚にしか見えない(笑)
大喰岳までやってきた。これから進む中岳、その奥に穂高連峰を望む。
今日もご来光を拝めた。魚の雲は骨だけになった。
遠くに富士山と南アルプスの山並み。
朝日が当たってモルゲンロートに輝く中岳。
中岳山頂から太陽と反対側(西側)を見ると、笠ヶ岳から抜戸岳の山肌に影槍などが映っていた。
通過してきた大喰岳とその奥には槍の穂先。私が立っている中岳の山頂を含めて、この稜線の影が笠ヶ岳から抜戸岳の稜線に映っていたことになる。
中岳の次は南岳(写真右上)へと進む。槍ヶ岳からの3000m級の天空の稜線が続く。前を行く白ヘルの方とは、この先で一緒になりこの日のゴールの穂高岳山荘まで同行した。
南岳山頂から南岳小屋と奥に穂高連峰。小屋前でレーズンパンの軽い朝食をとった。
いよいよ大キレット突入。57歳で山を再開して10年。やっと再訪できたよ。実に38年ぶりだ。小刻みにアップダウンを繰り返して最低鞍部の2,748mまで200mほど下る。
まずは岩稜帯の下り。雪の急斜面の下りと違って岩稜の下りは嫌いではない。
梯子や鎖で至れり尽くせり。快適に下ることができる。
一つ目の鞍部まで下りてきて振り返る。何度も通過したけど、過去の記憶は飛んでいるので、実に新鮮で楽しい。
中央右下の凹みが大キレットか? 中央右4分の1のピークが難所のHピーク(長谷川ピーク)か? ちなみにキレットは外来語ではなく、日本語の方言の「切戸」が語源。
Hピーク(長谷川ピーク)に突入。知らないうちに大キレットを通過して危険ゾーンへ。
Hピークから眺めた北穂高小屋へと続く岩稜帯。まずは目先のHピークに集中しよう。
Hピークのやせ尾根を進んできた。ここで左側から右側に移って先へと進む。反対側からきた赤いザックのお二人さんが、私達のHピーク通過を待っててくれた。ありがとうございました。
Hピーク最後の部分、やせ尾根の右側に移ってステープル・ステップ(ホッチキス・ステップ)を下りる。上から下りてくるのは途中から一緒になった兵庫の白ヘルの方。穂高岳山荘までご一緒した。
Hピークを終えて休憩中。写真下の鞍部は、上からの落石が怖いので、少し手前のここで充電中。鞍部から北穂高小屋まで標高差200mを登り返す。
よく見ると白ペンキの矢印や丸印が見えると思う。写真を拡大すると中央上部には先行者が4名取付いているのが見える。
北穂へ向かう岩稜に取り付いて、途中でHピークの稜線を振り返る。水平移動に思えたけど、結構下っていたんだな。
北穂の岩稜に取り付いて、約半分の100mを登ってきた。「飛騨泣き」と呼ばれる難所を通過して休憩中。前方のオレンジヘルメットの方はここから北穂高小屋までご一緒した。我々三人は上から青ヘルの方が下りてくるのを待機中。
北穂の小屋が見えてきた(中央ピークの上)。最後の標高差100mの登りはオレンジヘルメットの方にペースを作ってもらった。
振り返ると大キレットの稜線が雲に飲み込まれそう。予報より2時間くらい早いな。
11時に北穂高小屋のテラスに着くと大キレットは完全にガスの中(涙)
カレーを食べて粘るもダメだった。何と私のすぐ横に萩原編集長がいて、少しお話しさせてもらった。山渓(ヤマケイ)主催の涸沢フェスティバルで来ていて、北穂まで足を延ばしてきたとのこと。TVで見るままだった。
北穂山頂を通過して兵庫の方と二人で穂高岳山荘を目指す。涸沢岳もガスに巻かれ始めた。
下方の涸沢ヒュッテや一番奥の常念山脈の方はまだ良く見えている。
涸沢岳への厳しい鎖の登りを終えて記念撮影。ガスガスで苦笑い。しゃがんだら膝が痛かった(笑)
14:20分頃に穂高岳山荘に到着。兵庫の方はテント泊なのでここでお別れ。大キレットを一緒に通過してきたお二人ともテン泊。私にはありえない。重いザックに振られてすぐ落ちるだろう。
時間があるので奥穂高岳山頂をピストンしようかと思ったが、この光景を見て意気消沈。今回は燕岳も槍ヶ岳も奥穂高岳もガスでスルーだ。自分的にはピークハントしないのは珍しい。
チェックイン後は、受付前のカフェ席でアルコールを飲みながら富山や滋賀や千葉からの方々と山談議に花を咲かせた。
穂高岳山荘も海外の方がそこそこいて、夜中の寝言も中国語のような外国語だった(笑)。イビキは万国共通のようで外国人も同じイビキだった(笑笑)。日本語でわざとらしく「うるせーなー」とつぶやいてみたが通じなかった。
4日目:パノラマコース
4日目の朝。この朝もビーナスラインがきれいだった。小屋の混雑と違って、下方に見える涸沢のテントの灯りはさほど多くなかった。
左奥のピラミダルな常念岳、その右に続く平たく見える蝶槍から蝶ケ岳の稜線、手前の中央右のギザギザは前穂北尾根、その右手上方へ続く稜線は前穂から奥穂へと続く吊尾根。
ザイテングラートを下りてきた辺りでご来光。蝶槍の左側から昇ってきた。
モルゲンロートに染まる穂高の山々を見たかったのだが、日の出のすぐ後に低い雲が太陽を遮り、鮮やかなモルゲンロートにはならなかった。
再び雲から出てきた太陽で照らされたものの、モルゲンロートのような鮮やかなピンク色の輝きにはならなかった。ちょっと残念。
分岐から涸沢のテン場をぬけてダイレクトに涸沢ヒュッテに向かうルートを下ってきた。涸沢はあと2-3週間ぐらいで紅葉かな。
涸沢小屋の上部に北穂の東稜。左に北穂。
涸沢フェスティバルのデコレーション@涸沢ヒュッテのテラス。田中陽気さんが講演をするらしい。
涸沢ヒュッテからパノラマコースを歩いてきた。振り返って涸沢と穂高の眺め。ここから錦秋の涸沢を眺めたらさぞかし綺麗だろうな。
パノラマコースは至る所にロープが張られていて心強い。ただし、コースの入り口には、「熟達者向け」との注意看板があった。確かに、数か所いやらしい所があって、なぜかロープなどもなかった。
崩落個所は足を置く幅が狭く気を抜けない。
パノラマコースから見る槍から北穂の稜線。昨日歩いた稜線だ。楽しい再訪だった。
パノラマコース最高点の屏風のコルまで登り上げた。ここから下りに突入。梓川までひたすら下っていく。
下りの途中の沢は水流の音がするのだけれど水は岩の下を通っており、まったく汲めない。昔は冷たい水を補給できたのだがな・・。涸沢ヒュッテで1Lを確保しておいて助かった。
奥又白谷も干上がっている。近年、温暖化で雪渓の消失が早いからかな?
新村橋は流されて工事中なので、少し下流の徳澤仮設橋を渡る。
仮設橋から梓川の上流側を眺める。仮設期間限定の眺めだ。
中央右奥に前穂の北尾根の各ピークの頭、中央から左は明神岳の各ピーク。
徳澤園の寄り道食堂でソフト。スルーできないアイテム。
徳澤のテン場の半分くらいが涸フェスの会場になっていた。
明神岳。左手前から5峰、4峰、小さく1峰、その右のピラミダルなのが2峰、一番右が3峰、だと思う。5峰が一番高く見えるが、1峰が一番高くて5峰が一番低い。
昨年秋に前穂山頂から1峰、2峰、・・・5峰へ下ってきた。
岳沢湿原。現在、明神館から上高地までは梓川の左岸が通行できないので、観光客も登山者もみんなこちらの右岸の道を歩く。ちょっと混雑していて、いつもの静寂感がない。
六百山、右奥に霞沢岳。
河童橋手前まで下りてきた。穂高連峰を眺める。
河童橋を渡って下流方面の焼岳を眺める。火山活動による焼岳の入山規制は解除されたのかな?
定番の梓川と河童橋と穂高連峰。
上高地バスセンターに到着。2Fの食堂のテラスから撮影。午後は毎日ガスに見舞われたが、素晴らしい3泊4日の稜線歩きを楽しんだ。山の神様に感謝!
山行を終えて
今回やっと表銀座と大キレットを歩くことができ、念願が叶って万感の思いだ。表銀座の東鎌尾根の登り返しは想像以上にきつかった、というのが率直な感想。槍ヶ岳に続く登山道はどこも厳しいな・・。
大キレットのHピークを過ぎて北穂高小屋へ至る登りは、若い頃とルートが変わっているように思ったが、気のせいかな? 特に北穂高小屋直下の登りが若い頃のイメージと違うような・・。もっと高度感のある垂直に近い登攀だったようなイメージなのだが、きっと歳のせいによる記憶の変質だろう。何せ38年ぶりのキレットなので。
最近、山では行動不能や転倒・滑落事故による救助要請が増えていて、「体力や技術に見合った登山をするように」と注意喚起されている。ロングの縦走や難易度の高い山行はそろそろ自重した方がいいなと思っている。
と言いつつも、ストックされている山行計画は、3泊4日から5泊6日程度のものばかり。晴れ予報しか山に行かないポリシーなので、なかなか実現できる好天続きの予報に巡り合わない。今回は2日目の午後に久々にレインジャケット・パンツを着て歩いたが、概ね天候に恵まれて計画を実行できた。本当に山の神様に感謝感謝だ。
今後については、天気予報的にも体力的にも、もう少し計画を短縮してチャンスを窺うことにしよう。
関連情報
公共交通機関によるアクセス
<往路>
新宿駅8:00発 →(あずさ5号)→ 穂高駅10:59着(チケットレス割引6,960円。ただし、乗車券は紙のチケット発券が必要。穂高駅はスイカなどが使用できない)
穂高駅11:10発 →(中房線乗合バス)→ 中房温泉登山口12:05着(予約不要、1,500円)
https://www.azumikanko-taxi.co.jp/2011/04/030-01.html
<復路>
上高地 →(さわやか信州号のバス)→ 新宿
158号線の事故渋滞と岡谷JCT手前の工事渋滞で、到着が3時間20分遅れ、8時間20分かかった(泣)
コンビニ、日帰り温泉
コンビニ:
穂高駅周辺にはないので、事前調達すること。
上高地の日帰り温泉:
以下のURL参照。時間的な制約とロケーションが課題
https://www.kamikochi.or.jp/enjoy/public_baths/
小梨の湯:河童橋から約10分
14:00~18:00(日曜、祭日、最盛期は12:00~)、1,000円
上高地アルペンホテル:河童橋から約10分
9:30~12:00(受付終了11:30)、1,000円(フェイスタオル含む)
上高地インフォメーションセンター:今回利用
8:00~17:00、500円、湯舟や洗い場はなくシャワーブース2つのみ。シャンプーと石鹸は各50円、20分をめどに終える必要あり
コース概況
登山口から燕山荘:
合戦小屋の少し上まで急登が続く(北ア三大急登の一つ)。樹林帯で暑い。その先は傾斜がやや緩くなり尾根を歩く。風はあるが日差しに晒される。
燕山荘から大天井ヒュッテ:
喜作レリーフ手前と、その先の大天井岳トラバース路に鎖場などがあるが、慎重に歩けば難しくない。大天井岳山頂へ向かう場合は、喜作レリーフ先の分岐から常念方面のパノラマ銀座へ進んで大天荘まで行く(おいしいカレーあり)。
大天井ヒュッテから西岳:
何度もアップダウンはあるが、槍を眺めながら歩く快適な登山路(ガスらなければ)。
西岳から槍ヶ岳山荘:
水俣乗越までかなり標高を下げる。東鎌尾根は木段や鉄梯子の連続。ヒュッテ大槍から先はヘルメット推奨。穂先の真下を通過(鎖場などの岩場もあり)。
槍ヶ岳山荘から南岳小屋:
アップダウンを繰り返しながら天空の尾根を進む。抜群の眺望。
南岳小屋から北穂小屋:
まずは劇下り。鎖や鉄梯子多数。先行者や反対から来る登山者に配慮すること(落石の直撃リスクが無くなってから通過すること)
鞍部から大キレット方面へは厳しいアップダウンが続く。核心はHピーク(長谷川ピーク)。反対側からの登山者がいないことを確認して突入すること(途中でのスライドはほぼ無理)。
Hピーク終了後の鞍部手前で休憩し、体調を整えて北穂の岩稜に取り付く(北穂小屋まで約200mの高度)。高度感のある登攀を進むと飛騨泣きの難所が現れる。飛騨泣きを通過したところで休憩して最後の登りに備える。ほぼ中間点で、残り約100mの標高。その先は途中でゆっくり休憩する場所はない。
北穂小屋から穂高岳山荘:
大キレットに比較すると難易度は下がるが、事故の多いルートが続くので要注意。最後の涸沢岳への登りは急な斜面の鎖場を延々と登る。休憩して体調を整えてから取付くこと。急登が終わると涸沢岳の手前のピークに出る。山頂を踏んでから穂高岳山荘へ向かう下りはごく普通の登山道。
穂高岳山荘から涸沢:
涸沢へ向かうザイテングラートにも鎖場や梯子の岩場の通過がある。気を抜かないように。ザイテンの難所が終わってしばらくすると、涸沢小屋と涸沢ヒュッテへ向かう分岐がある。涸沢ヒュッテへ向かう登山路は良く整備されたショートカット。
涸沢からパノラマ経由で上高地:
名前につられて安易にパノラマコースに進まないこと(進入路の分岐に熟達者向けのコースとの注意看板あり)。最高点の屏風のコルまでは小刻みにアップダウンを繰り返して標高を上げていく。登山道の崩落によりステップ幅の細い箇所が多い。ロープなどが設置され良く整備されているが、2-3カ所において欲しいところにロープがない。屏風のコルからはひたすら下り。特に難所や危険個所はない。
山小屋情報
燕山荘:
https://www.enzanso.co.jp/
夕食時に小屋の主人によるスライドを使ったプレゼンあり。なかなか面白く参考になる。ポンプアップしているので、水は豊富にある。
槍ヶ岳山荘:
https://www.yarigatake.co.jp/yarigatake/
日本屈指の大きな山小屋。3000mを超える稜線に立つ。水は細くてかなり貴重。
穂高岳山荘:
https://www.hotakadakesanso.com/
涸沢岳と奥穂高岳の鞍部に立つ小屋。こちらもほぼ3000mの標高に立つ伝統ある山小屋だ。涸沢岳の雪渓から水を引いているが、とても細くて貴重。
今回の歩行時間
<1日目>
中房登山口 12:10 → 12:33 第1ベンチ 12:39 → 13:12 第2ベンチ 13:19 → 13:43 第3ベンチ 13:48 → 14:20 富士見ベンチ 14:27 → 14:55 合戦小屋 15:00 → 15:17 合戦山 15:20 → 15:59 燕山荘
<2日目>
燕山荘 4:15 → 4:57 蛙岩 4:58 → 5:28 大下りの頭 → 7:05 喜作レリーフ → 7:10 槍ヶ岳・常念岳分岐 → 8:03 大天井ヒュッテ → 9:40 赤岩岳 → 10:12 ヒュッテ西岳 10:15 → 11:10 水俣乗越 11:15 → 13:30 ヒュッテ大槍 13:45 → 14:44 槍ヶ岳山荘
<3日目>
槍ヶ岳山荘 4:33 → 4:55 飛騨乗越 4:59 → 5:17 大喰岳 5:19 → 5:47 中岳 5:48 → 6:25 天狗原分岐 → 7:01 南岳小屋 7:21 → 8:53 Hピーク 8:56 → 10:59 北穂高小屋 11:30 → 12:30 ドームの頭 → 13:50 涸沢岳 13:58 → 14:18 穂高岳山荘
<4日目>
穂高岳山荘 4:19 → 5:20 ザイテングラート取付 → 5:36 涸沢分岐 5:38 → 6:18 涸沢ヒュッテ 6:24 → 7:31 屏風のコル 7:33 → 8:52 中畠新道分岐 8:57 → 9:48 徳澤園 9:56 → 10:42 明神館 10:43 → 11:26 岳沢湿原 11:27 → 11:52 河童橋 11:53 → 11:57 上高地バスターミナル
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