水芭蕉の尾瀬へ(2024/5/10)

山の記録

GW明けに静かな尾瀬を期待して出かけることにした。例年より2-3週間ほど雪解けが早いとのことで、GWに尾瀬へ出かけた人たちの記録を見ると、驚くことに尾瀬ヶ原にはほとんど雪がなく、水芭蕉も咲き始めていた。例年であれば5月下旬から6月初旬あたりが見頃なのだが、近年は温暖化が尾瀬にも影響して季節の移ろいが早まってきている。

5月10日と11日の金曜と土曜が快晴の予報だったので、迷わず金曜日に出かけることにした。尾瀬ヶ原の北端、燧ケ岳(ひうちがたけ)の麓の見晴(みはらし)にある山小屋で1泊して、のんびりしようかと思ったのだが、営業を始めている小屋は1軒のみで、お気に入りの小屋を含めて大半の小屋は18日からの営業開始となっていた。水芭蕉の開花時期に合わせて小屋開けを動かすわけにもいかないのだろう。やむなく小屋泊を断念。日帰り散策とし、代わりに老神温泉で一泊することにした。

合計距離: 17138 m
最高点の標高: 1597 m
最低点の標高: 1395 m
累積標高(上り): 457 m
累積標高(下り): -453 m

歩行ログをもとに、Google Earth Proで以下のごとく3D歩行ルートの動画を作成した。尾瀬ヶ原の画像は、今回と時期が近い2022年5月29日に撮影された過去画像を用いている。カメラ高度は3500m、カメラ角度は65度、速度はリアルタイムの600倍の設定にしている。なお、右下の3点リーダーからPlayback speedを変更できるので、好みで調整されたし。

自宅を朝5時頃に出発して、尾瀬戸倉温泉にある第一駐車場に着いたのが8時頃。シャトルバスは8時20分に出て、鳩待峠(はとまちとうげ)のバス発着場には8時40分に着いた。8時45分に入山口をスタート。右奥は建て直し中の鳩待山荘。

スタート前からカミさんはお疲れの様子(笑)

鳩待峠の旧駐車場エリアには新たな鉄骨。新しい食堂兼土産物屋の建設が進んでいた。完成後には、私の立ち位置の背後にある既存の休憩所を解体して広場にするとのこと。完成時期は来シーズンかな?

鳩待峠からは200mほど下って尾瀬ヶ原に向かう。普通の山登りと違って、入山口から下っていくという珍しい山歩きが特徴だ。左手には至仏山(しぶつさん、右側)と小至仏山(左側)が樹間から見える。至仏山はGWが終わると雪解けが進むまで植生保護のため入山禁止となる(雪解けの早い2024は6月21日まで入山禁止)。

木道の横には残雪が残っているが、例年のこの時期と比べれば、驚くほど雪がない。

雪解けが早いので新緑も早いかというとそうでもない。種類によっては新芽が出始めているが、大半の木々はこれからだ。

山の鼻までの下りで、雪が木道を覆っているのは2カ所だけで、ごく短い区間。チェーンアイゼンも不要で普通に歩ける。ただ前夜は冷え込んだため、鳩待峠から下り始めたすぐの木道がうっすらとアイスコーティング状態だった。濡れていると思って足を置いたら、ツルっと滑って危うくひっくり返るところだった。よく見ると、木道にも横の水たまりにもうっすらと氷が張っていた。

シャトルバスの運転手さんからは昨夜2-3センチの降雪があったとは聞いていたが、太陽がしっかり昇った9時頃で、木道の雪は解けてまったくなかったのですっかり油断していた。スリップしたのはそこだけで、あとは快適に歩くことができた。

テンマ沢まで下ってきたところで、水芭蕉の群生がきれいに咲いていた。

小さい株も一杯あるので、まだ1-2週間は見られるのではないかという感じ。尾瀬ヶ原の水芭蕉も期待できそうかな。

川上川まで下ってきた。山の鼻はもうすぐそこ。

山の鼻を素通りして尾瀬ヶ原へ。正面は尾瀬ヶ原の反対側の端にある燧ケ岳。尾瀬ヶ原にも燧ケ岳にも雪がほとんどない⁉ GW直後でこの光景はちょっと衝撃的。

振り返って至仏山。こちらも残雪が少ないが、一つ上の写真の燧ケ岳の南側斜面に比べると、至仏山の北斜面はまだいくらか雪が残っている。左下には山の鼻の小屋(尾瀬ロッジ)の屋根が見える。

山の鼻の猫又川沿いの水芭蕉。小さい株が多くみられるので、これからもっと咲くのかな。

雪解け後の尾瀬ヶ原は、池塘(ちとう)だけでなく、至る所に水があふれ、場所によっては木道が水没しそうなくらいになっているのだが、まるで草野原という感じ。

上田代の逆さ燧スポット。気持ちの良い風なのだが、池塘に波が立って鏡のようにならない。

しばらく眺めていると風が弱まり、手前から奥へと水面が落ち着いていった。これがベストショット。この後すぐに、また風が吹いて水面を揺らし始めた。

中央奥の残雪は景鶴山(かげつるやま)。シラカンバかダケカンバか判別できないけど、幹の白い木々には新芽が出始めている。

牛首分岐からヨッピ川方面へと進んできた。途中にあった橋は、まだ床板がはめられておらず、鉄骨だけだった。両端に15-20センチくらいの幅の鉄板があり、平均台の上を歩くよりずっと簡単に通過できる。

こちらのヨッピ橋も板はない。この橋を通行される方はお気をつけて。私たちはここから橋を渡らずに立ち位置の後方へ進み、竜宮小屋を目指した。

逆さ至仏山。風が収まるのをしばらく待ったけど、これがベストだった。

竜宮十字路まで進み、メインの木道を横切って少し進むと水芭蕉と至仏山のビュースポット。

一つ上の写真を撮っていると、尾瀬高校の生徒たちがやってきた。

メインの木道を至仏山方面へと進むあちらのグループも同じ尾瀬高校の生徒たち。平日だけど、鹿による食害を防ぐためにネットの設置活動をしていた。とても良い課外授業だ。

竜宮小屋のベンチで行動食を食べて昼食代わりにした。本日はここまでとし、見晴方面には進まず、山の鼻へ引き返すことに。奥は燧ケ岳。

ネット張りをする生徒たち。ありがとう!

至仏山を正面に見ながら山の鼻へと戻る。生徒たち以外には、たまに登山者や歩荷さんと出会うだけ。こんな良い天気の尾瀬ヶ原を独占しているようで申し訳ない気分。

木道の間には水芭蕉とリュウキンカ

リュウキンカが見事に満開状態の株

こちらの株のように多くの株はこれから咲くので、リュウキンカはこれからが見頃になる。

小川には魚が気持ちよさそうに泳いでいた。2匹じゃないよ、右側は底に映った影。魚は詳しくないので名前は・・?

ヤチヤナギの花。実ではなくれっきとした花でいっぱい咲いていた。ちょっと見ではわかりづらいが、ヤチヤナギが野原に群生していた。

最後にとっておいた下の大堀川の水芭蕉定番スポット。尾瀬のポスターには必ずと言っていいほどこの至仏山をバックにした水芭蕉の群生の写真が使われる。でも御覧のとおり。

今シーズンのGW後半に尾瀬に来た人たちの記録には、以前と比べると少ないながらも水芭蕉が群生している写真がみられたが、数日違いでこのような残念な光景に。どうやら、前日と前々日の寒気による気温低下と前夜の降雪で水芭蕉がやられてしまったようだ。

この至仏山の残雪の具合だと、ちょうど水芭蕉が真っ盛りというはずなのだが・・。中央やや右の川中島に白い点々と見えるのが水芭蕉の残骸。

下の大堀川の水芭蕉は、こんな感じにやられてしまっている。可哀そう。のんびり屋の水芭蕉がまだこれから芽を出してくるかもしれないが、この定番スポットに関しては今シーズンはちょっと厳しいかも・・。

山の鼻近くまで戻ってきた。営業している至仏山荘の前のベンチで小休止して、鳩待峠に登り返す。最終バスは15時半。

テンマ沢までやってきた。前を行く歩荷さんがスマホで水芭蕉の写真を撮っていた。毎日のように頻繁に往復する小屋のスタッフが写真を撮るくらいなので、きっと見頃なのだろう。このあたりの水芭蕉が、今回では一番身近に見られる群生だった。

この先から本格的な登りが始まる。休み休みのカミさんに合わせて、ゆっくりと登り返した。

鳩待峠まで戻ってきてご褒美の花豆アイスクリームを食べるカミさん。お疲れさん。

バックは長年活躍してきた休憩所。来シーズンは新築にバトンタッチ。こちらもお疲れさま。それにしても、快晴であまり暑くならず快適な尾瀬散策を楽しむことができた。感謝感謝!

シャトルバスの発着場から至仏山と小至仏山の眺め。定員一杯になるのを待って15時10分にバスが出た。

今日は麓の第一駐車場から車で約30分にある老神温泉(おいがみおんせん)の宿でのんびり宿泊。

老神温泉に着くと、なんとこの日と翌日は大蛇祭りとのこと。その昔、奥日光の戦場ヶ原で、男体山の神様と大蛇に化けた赤城山の神様が対戦し、傷ついた赤城山の神様が老神温泉で傷を癒した伝説からお祭りが始まったそうな。

この蛇は途中で胴体が分かれて収納されるようになっているが、それでも各々50mを超える長さだ。Uの字の建物にぐるりと奉納されている。

宿の前にも夜の9時前にやってくるとのことだったが、飲み過ぎて寝てしまった。寝床の中で、子供たちのワッショイという掛け声と、太鼓の音を聞いて終わってしまった。と言うわけで上の写真で代用。子供たちは短めの白い大蛇を引いていたようだ。

翌日の土曜日の朝、朝市をのぞいた後に温泉街をぶらり。尾瀬方面の景色。今日もすごい天気になりそう。ただし予報では気温が上昇するようだ。雪解けはさらに進むだろう。

朝食を食べて宿を出立し、沼田インター近くの川場田園プラザに寄った。9時オープンの10分前に到着するも、すでに多くの人。山ウドやこごみ、山蕗などを買い込んで帰宅の途についた。この夜はさっそく山菜の天ぷらや山蕗の佃煮で冷酒を楽しんだ。

若い頃、岐阜の事業所で働いていた時に、関東出身の同期に案内してもらって初めて尾瀬に来たのが40数年前のGWだった(25歳の時だった)。あの時のGWの尾瀬ヶ原は一面雪に覆われていて、どこに木道があるのか分からない状態だった。

尾瀬沼の長蔵小屋周辺も雪深かったし、燧ケ岳はすっぽりと雪に覆われていた。山の鼻からピストンした至仏山も同じように雪に覆われ、山頂からはビニール風呂敷を敷いてシリセードで山の鼻近くまで勢いよく下りてきた。今となっては懐かしい思い出だ。

30歳で山をやめ、20年ちょっとのブランクを経てポツポツと山を再開した。再開初期に訪れた山の一つが尾瀬だった。水芭蕉の頃に、初めての時と同じコース取りで燧ケ岳と至仏山を周回した。それ以降、何回かこの季節に尾瀬に来たが、残雪に関していえば今シーズンの尾瀬は特異的な状況だった。

雪解けのタイミングがシフトするだけなら、それに合わせて残雪期の登山を計画すればよいのだが、水芭蕉などの尾瀬の生態に影響するようになると重大だ。是が非でも尾瀬の別世界のような湿原の空間を後世に残していきたいものだと思う。

尾瀬に関する情報

尾瀬に関する情報は、以下のサイトに網羅されており参考になる。
https://oze-fnd.or.jp

コンビニ

沼田ICからしばらくメジャーなコンビニ多数。片品村への入り口辺りのセブンが最後(ENEOS併設)。その先は、R120ロマンティック街道を進み、「鎌田」の信号を尾瀬方面へ左折しR140に入り、橋を渡った先にDailyがある。これが本当の最後。

日帰り温泉

尾瀬ぷらり館:
戸倉駐車場入り口にあり。600円。10-18時。土日のみ営業
https://www.tepco.co.jp/oze/iku/purari/index-j.html

ほっこりの湯(片品):
ほぼR120沿い。650円。13-20時(受付19:30)。木曜定休(行楽シーズン及び祝日は営業)TEL:0278-58-4568。内風呂だけの地元密着型の小さな温泉。洗い場6つ。
https://oze-katashina.info/hokkorinoyu/

花咲の湯(片品):
R120から5km離れる。800ー850円。10-20時。毎週金曜
TEL:0278-20-7111。大きな施設
https://oze-katashina.info/hanasakunoyu/

湯元華亭(老神温泉):食事も15時までOK
R120からのアクセス路は狭い。R120への復帰路は快適。
11-19時。金曜定休。TEL:0278-56-4126
https://www.hanatei.info/

望郷の湯(白沢高原。沼田ICすぐ手前):
10-21時。第2火曜定休。TEL:0278-53-3939
http://www.boukyou.com/

その他

食事:
R120の日本ロマンティック街道は、別名「とんかつ街道」と言われており、沼田周辺にはとんかつ屋が多い。

川場田園プラザ:
https://denenplaza.co.jp/

歩行タイム

8:43 鳩待峠 → 9:39 ビジターセンター 9:50 → 9:51 至仏山荘 → 10:33 上ノ大堀川橋 → 10:53 牛首分岐 → 11:38 ヨッピ吊橋 → 11:49 竜宮十字路 → 12:03 龍宮小屋 12:23 → 12:27 竜宮十字路 → 12:40下ノ大堀川橋 12:50 → 12:59 牛首分岐 → 13:29 至仏山荘 13:39 → 14:43 鳩待峠

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