谷川岳登山を諦め、谷川岳を眺めに白毛門へ(2024/02/13)

山の記録

豪雪地帯にある谷川山系。積雪期には天神平スキー場へ向かうロープウェイを利用して、天神尾根からアプローチするルートが一般的だ。登山者が多く、好天の土日ともなると蟻の行列のように山頂を目指す登山者が列をなす。

一方、ロープウェイを使わずに下から西黒尾根を登って山頂を目指すルートもある。こちらは三大急登の一つに数えられる尾根で、無雪期であればさほど難しくはないが、積雪期になると尾根は雪庇を伴うナイフリッジ状となり、難易度が跳ね上がる。

いつか積雪期に西黒尾根で山頂を目指したいと憧れてきたが、寄る年波にのんびりもしておられず、そろそろ挑戦の限界に近付いてきた。というわけで、2日くらい好天が続くタイミングを狙っていたところ、2月13日と14日が高気圧に覆われる予報となった。

問題は非常に暖かい空気が入り込む予想で、4月下旬並みの陽気になること。雪崩の季節が厳冬期の2月中旬にやってきてしまうという状況。山愛好家のSNSの『ヤマップ』や『ヤマレコ』の記録を見ると、2月12日の三連休最終日は降雪にホワイトアウトの悪天だった。それでも西黒尾根に向かった人たちがいて、腰までのラッセルを続け、ホワイトアウトで雪庇の状況がよく見えない中、悪戦苦闘しながら登っている。途中撤退して下りた登山者も少なくなく、賢明な判断だったと思う。

13日と14日の天気予報は良いのだが、前日の雪の状況がどうなるのか読めない。ダメなら途中で引き返し、今回は下調べ山行とすることで自分なりに踏ん切りをつけ、谷川岳に出かけることにした。

結果は以下にご覧の通り私の下調べ不足で、両日ともにロープウェイの定休日で下山ルートとして予定する天神尾根が使えず、西黒尾根を往復せざるをえないことが判明。登りは何とかなるとしても、疲れた足で西黒尾根を下るのは滑落事故のリスクが高まり、年寄りの私には危険極まりない。

ということで、今回は谷川岳を諦めて、谷川岳の眺望を楽しむべく白毛門(しらがもん)に登ることにした。こちらも急登が続く尾根道で、難易度は決してやさしくない。

総歩行距離:7.4㎞、総山行時間:6時間(休憩含む)

累計標高上り:1067m、累計標高下り:1067m

合計距離: 7937 m
最高点の標高: 1725 m
最低点の標高: 650 m
累積標高(上り): 1138 m
累積標高(下り): -1125 m

以下はGPSログ記録をもとにGoogle Earth Proで作成した3Dツアー動画。
Google Earth の過去動画を調べたが、今回の登山と同じくらいの積雪量の画像が見つからなかった。使用した画像は2013年5月14日の残雪期の画像で、今回の写真の画像とはちょっとイメージが異なるがご容赦を!
作成条件:カメラ角度65度、カメラ高度1750m、作成速度500倍(対実速度)

赤城高原SAから上州武尊山(ほたかやま)を望む。実はここで谷川岳ロープウェイの最終時刻を確認すべくWebサイトにアクセスし、この日が定休日であることに気づく。翌日は赤城山登山を予定し、渋川に宿を予約しているので、赤城と谷川を入れ替えようかと思案。ところが、サイトをよく見ると火曜と水曜が定休日とのことで、予定を入れ替えてもロープウェイを利用できないことが分かり頭が真っ白に。

星野リゾートが天神平のスキー場を買収して、火曜定休が今年から火・水定休になったようだ(期間は2024.1.9~2.28)。しばらくコーヒーを飲みながら朝食のパンをかじって冷静に考えをめぐらす。そして「登れないなら眺めることにしよう」と、谷川岳を諦めて白毛門に山を変更。Web提出してあった谷川岳の登山届を取り下げ、白毛門の登山届を急いで作成しWeb申請した(Web申請は「コンパス~山と自然ネットワーク~」で行っている)。何だかんだで赤城高原SAで30分以上ロス。登山開始が遅れることに。

白毛門に取り付いた。下りてきたことはあるけど、ここを登るのは初めて。急登は覚悟していたが、やはりキツイ!

標高950mくらいまでは、上の写真のように数か所で地肌が出ていた。ちょっと驚き。

我慢の登りを続けると、樹間から谷川岳が見えた。中央はマチガ沢で、左端が行き損なった西黒尾根。谷川岳も例年より岩肌が見えているように見える。

白毛門も見え始めた。画面右から3分の1くらいに見えるピーク。それにしても春のような天気で、しかも快晴無風。早々に冬山用のジャケットを脱ぎ、手袋を薄手のフリースに替え、フリースの帽子をメッシュの野球帽に替えた。それでも汗が滴り、汗拭きタオル大活躍。

谷川岳の美しい稜線。中央が一の倉沢。この沢の上にある壁に多くのクライマーが挑み、命を落とした。犠牲者の数は世界一ともいわれている。

画面左下から右斜め上に続くのが西黒尾根だ。こっちを想定していたが、下山でロープウェイを使えないので断念。前日はホワイトアウトの中、腰までのラッセルだったようだ。本日の雪の状態も分からない中、西黒尾根のピストンは厳しいと判断せざるを得なかった。天候や雪質などのコンディションさえ良ければ、積雪期でも登りは極端に難しいわけではないと思っているが・・

「高速道路」とは言わないが、「県道」くらいのトレースがあり助かった。尾根通しのルートなので、道迷いのリスクは小さいが、せり出した雪庇からどれくらい離れて歩くかの見極めが肝心だ。

スノーボールが転がり始めると雪崩のリスクが高まるというが、前方の斜面には転がった跡がいっぱい。この春みたいな気温は大丈夫か・・

松ノ木沢の頭を越えて、最後の急登だ。ここは斜面が広いこと、雪がしまっていないことから。こけて滑落しても途中で止まりそうだ。

最後の急登を登ったと思ったら、まだ先があった(笑)。山ではよくあることで・・

鎖を掴んで力任せに体を引っ張り上げた。鎖が出ていてよかった。

白毛門山頂到着。やれやれ。山頂標の背後は谷川連峰。

馬蹄形のパノラマ写真。奥の左から谷川岳、一ノ倉岳、茂倉岳、武能岳、七ッ小屋山、その手前の右側から朝日岳、笠ヶ岳、そして白毛門へと稜線がつながる。

谷川岳。何度も撮っちゃうな。写真の左奥には浅間山が見えている。

未練がましく西黒尾根。コンディションの良いときにトレースを利用させてもらっていつかできれば・・。奥が浅間山。

左奥に燧ケ岳(ひうちがたけ)とその右前に至仏山(しぶつさん)。ともに尾瀬ヶ原を挟むようにそびえる日本百名山。燧の左に上越のマッターホルン「大源太山」の頭が見えている。

朝日岳と笠ヶ岳をアップ。日帰りで朝日まで行ってきた方とスライドした。すごいな。

私の後に山頂にやってきた山ガールさん。写真撮ってる姿が絵になる。

さて下山開始。急斜面の下りからスタート。年寄りはすぐ滑落するので慎重に・・

黙々とノンストップで登山口の東黒沢まで下りてきた。素晴らしい展望を楽しめたこと、無事に登山できたことに感謝感謝!

正直言うと白毛門にはこれまで足が向かなかった。というか、できれば登らないでおこうと決めていた山だ。時計回りで馬蹄形をやった時に、これでもかという白毛門からの下りで心が折れた。

その時は、平標山から谷川岳へ主脈を縦走して茂倉岳避難小屋に宿泊し、さらに続けて馬蹄形を回った。ところが秋なのに都心で真夏日になるほどの暑さで熱中症のような症状に見舞われ、朝日岳への登り返しでバテバテになり、笠ヶ岳に着いた頃には山頂直下の蒲鉾型避難小屋に転がり込み、2泊目を余儀なくされた。

翌日、いくらか体力を取り戻し、土合へと下ったのだが、白毛門からの長い下りにやられ、登山口の東黒沢(最後の写真)に着いた時には頭を沢に突っ込んで水をがぶ飲みした。以来、トラウマのような記憶になり、白毛門を避けてきた。

あれから6年半が経ち、ロープウェイの定休日を失念して、のこのこと谷川岳を目指し、途中の赤城高原SAで運休に気づくというお粗末さ。パニックになりかけながらも、「登れなければ眺めに行こう」とその場で谷川岳の登山届を取り下げて、白毛門の登山届を作成して申請した。

結果、今回の白毛門の再訪となった。脚力はますます衰え、雪庇横の細い稜線歩きはふらつき、急登に次ぐ急登に腿や脹脛はパンパン。よく無事に下山してきたと自分でも感心(笑)。それでも前回に下ってきたときよりは、雪のおかげで歩きやすくスタコラ下りてこられた。

下山途中に、この急坂をテン泊装備で登る人たちとスライドしたが、本当に頭が下がる。稜線沿いにいくつかの設営跡があったが、根っからの山好きの人たちだろう。登りの途中でスライドしたソロの方も、前日夕刻はホワイトアウトで幕営場所が見つけられず、笠ヶ岳で雪洞を掘って寝たとのこと。厳冬期に白毛門から笠ヶ岳、朝日岳を目指す人たちは、いぶし銀のような山屋さんだと敬服する。

さて、今回は西黒尾根をやり損なったが、残り少ない山人生にチャンスはあるかな? 夢の一つとして温め続けることにしよう。

駐車場

土合駅前の駐車場は「登山者の利用お断り」なので、土合駅100mほど手前のドライブインに駐車。下山後に500円をお店で支払う。

星野リゾートによる買収により、ロープウェイは今年から火曜と水曜が定休日になったとのこと。一方で、駐車場が無料になったとか。ロープウェイ駅の駐車場は誰でも利用できるが、これまで通り定休日は閉鎖されて使えない。

コース状況

登山口:
積雪期は少し分かりずらい。土合駅からロープウェイ駅方面へ291号線を進み、道が左へカーブするところにロッジがある。その駐車場からロッジの右横を抜けて奥へと進むと登山口に至る。

登山口から松ノ木沢の頭:
標高950mくらいまでは、地肌の出ているところが数か所あった。今週の暖かさでさらに露出するかもしれない。アイゼンを付けた下りでは躓き等に要注意。急登が続くのでペースを保って地道に登ること。

松ノ木沢の頭から白毛門:
一旦、フラットな道を進むが、その後は最後の急登になる。先に見えているのは手前のピークで、奥に本当の山頂がある。山頂手前で鎖の岩場があるが、この日の時点では鎖は露出していて掴んで登れた。雪が降って埋もれているときは、鎖を掘り出すか、あるいは諦めて岩場の左側からアイゼンとピッケルを駆使して攀じ登るかになるだろう。

全体を通して、登りよりも下りに神経を集中する必要があると思う(個人の感想です)。

コンビニ

水上ICを下りて進むと。セブンとファミマがある。

日帰り温泉

湯テルメ谷川:今回はこちらを利用
水上の街を過ぎるあたりで右折。約2㎞先にある。第3木曜日定休(祝日の場合は翌日)。3種類の異なる源泉の風呂がある
TEL:0278-72-6169、630円、10:00~20:30(受付終了20:00)
http://www9.wind.ne.jp/mizukikou/sub35.htm

鈴森の湯:個人的にはこちらの湯が好き
水上IC近くまで戻り、三叉路を右折。2㎞ほど先にある。源泉かけ流し、ほんのり硫黄臭が体に残る。水曜定休。4月は臨時休業が多いそうなので要注意
TEL:0278-72-4696、800円、11:00~20:00(最終19時)
https://suzumorinoyu.com/

その他、水上温泉の旅館で日帰り入浴を再開したところがあると思う。

歩行タイム

8:33 土合駅 → 8:40 白毛門登山口駐車場 8:46 → 11:18 松ノ木沢の頭 → 12:17 白毛門 12:42 → 13:10 松ノ木沢の頭 → 14:18 白毛門登山口駐車場 14:26 → 14:33 谷川岳ドライブイン駐車場

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