剱岳。立山黒部アルペンルートで室堂から別山尾根にて(2023/8/9-11)

山の記録

計画に当たって

俗にいう日本三大岩稜の一つである剱岳の八ッ峰。剱御前小舎や剱沢小屋から眺めると、剱岳山頂から右下に伸びる優美なギザギザの尾根だ。穂高の滝谷や谷川の一ノ倉沢のような岩壁ではないが、1峰から8峰、さらに八ッ峰の頭まで九頭竜を越えていく屈指の岩稜バリエーションルート。

結婚と同時に山をやめ、四半世紀ちょっとのブランクを経て56歳で山に本格復帰。59歳の時に前穂の北尾根で30年ぶりに北アルプスに復帰を果たし、その翌年の60歳には積年の夢だった槍ヶ岳の北鎌尾根をやった。

三大岩稜で残るは八ッ峰。岩稜の険しさ、ルート・ファインディングの難しさ、必要とされる技術と体力、いずれをとっても北尾根や北鎌尾根を上回る。峰々の下りで懸垂下降を多用することから、ロープ技術も必要になる。

自分には八ッ峰は無理だろうなと思いつつも、ひょっとしたらという期待で、61歳の時に奥武蔵の阿寺での実地講習会に参加して懸垂下降の技術を習得した。以降、現役時代は勤務先の工場の外付け非常階段を利用(乱用?)し懸垂下降を復習し、引退後は尾張の実家に行ったときに、近くの里山で見つけた20mほどの岩場で時々練習してきた。

八ッ峰でのスリップ事故やルーファイミスのリスクを最小限にすべく、雨やガスなどのない天気予報のコンディションを毎シーズン狙ってきた。完璧さを求めすぎて何度か絶好のチャンスを逃し、コロナ禍も加わって5年が経過してしまった。すでに66歳になり、身体的な衰えの方が最大リスクとなってきた。

ベテランの経験者に同行してもらうとか、ガイドに引率してもらうことも考えたが、北尾根や北鎌尾根と同じく、ソロのスタイルを貫くことにした。(故)谷口けいさんの八ッ峰のDVD(山と渓谷社、アドバンス山岳ガイド)を何度も見たし、様々な方のブログやレコもチェックして研究してきた。

おかげで、ブログなどの写真説明の「X峰の登り」とか「〇峰のクライムダウン」などの記載において、「△峰の間違いじゃん」とすぐに指摘できるようになった。各峰の状況やルート取りを頭に入れることができ、今回は天気予報も味方して満を持して出かけることにした。

八ッ峰について

剱岳の八ッ峰は、その名の通り1峰から8峰までの八つのピークを越えながら稜線を進み、最後に八ッ峰の頭と呼ばれるピークで終了する。一般登山道ではないので、登山地図にはルートが載っていない。赤いリボンやペンキの目印などの道しるべはなく、鎖や梯子なども一切ない。自らの目で登れそうなルートを見つけながら進むバリエーションルートだ。

八ッ峰は下半と上半に分けられ、1峰から5峰までが下半、6峰から八ッ峰の頭までが上半と呼ばれる。下半は上り下りを繰り返すものの、標高は殆ど変わらず水平移動気味だ。一方の上半は6峰の登りで一気に高度を上げ、その後も次第に高度を上げていく。

八ッ峰へのアプローチは、剱沢の雪渓を下る途中で長次郎谷(ちょうじろうたん。谷のことをこの地方では「たん」と呼ぶ)との出合(であい)へ入る。ここから、長次郎谷の雪渓を登って、下半の場合は1・2峰間ルンゼ取り付きへ、上半は5・6のコル(5峰と6峰の凹んだ部分で「鞍部」ともいう)への取り付きへ進む。

下半だけで終了する場合は、5・6のコルから長次郎谷へ下り、雪渓を出合まで下りる。上半の場合は、八ッ峰の頭から池ノ谷乗越(いけのたんのっこし。のっこしとは稜線の凹んだ部分)へと下り、長次郎谷の雪渓の最上部から右俣(みぎまた。沢の上部に向かって右側)を下って出合まで下りるか、池ノ谷乗越から北方稜線と呼ばれる別のバリエーションルートに合流して剱岳山頂に向かい、一般ルートの別山尾根(べっさんおね)で下山することになる。

歩行ルート図と標高グラフ

今シーズンの長次郎谷の雪渓の状態が悪いことは把握していた。昨今の温暖化で夏の雪渓の損傷は年々早くなり、7月上旬ごろから予報とにらめっこしてきた。二日連続で晴れる予報を狙っていたが、なかなか機会に恵まれず、ズルズルとお盆休み直前になってしまった。

その間に、雪渓の損傷状態はますます進んだと思われたが、山愛好家のSNSのヤマレコやヤマップなどにアップされる山行記録の情報をもとに、一抹の不安を抱きながらも何とか長次郎谷出合の雪渓崩落個所や途中の危険個所も突破できるのではないかと期待して出かけた。

しかしながら、初日に剱沢の富山県警剱沢警備派出所に立ち寄って最新状況を確認すると、長次郎谷出合の雪渓は完全に崩落し、通行がかなり難しいとのこと。また、そこを突破できても、1・2峰間ルンゼ取り付きまで雪渓の状態は異例なほど悪くて部分的に雪渓を進めないとのことで、横にある尾根の山肌の岩を高巻きしては雪渓に戻るという繰り返しになり、かなり通過に時間を要すると説明を受けた。また暗いうちに長次郎谷を進むのはやめるべきともアドバイスされた。

八ッ峰の取り付きまでアクセスできない状況のため、今回は断念せざるを得ないと決断。この日の午後に予定していた長次郎谷の下見もやめることにした。翌日は一般ルートの別山尾根で剱岳山頂に向かうことに変更した。以下が、行程全体の歩行ルート図と標高グラフ。

合計距離: 17466 m
最高点の標高: 2998 m
最低点の標高: 2258 m
累積標高(上り): 1973 m
累積標高(下り): -1972 m

1日目のルート図と標高グラフ

室堂 → 別山乗越(剱御前小舎) → 剱山荘

合計距離: 6356 m
最高点の標高: 2769 m
最低点の標高: 2263 m
累積標高(上り): 617 m
累積標高(下り): -580 m

2日目のルート図と標高グラフ

剱山荘 → 剱岳 → 剱山荘 → 別山乗越(剱御前小舎) → 雷鳥荘

合計距離: 9886 m
最高点の標高: 2998 m
最低点の標高: 2258 m
累積標高(上り): 1259 m
累積標高(下り): -1362 m

なお、3日目の雷鳥荘から室堂バスターミナルまでの行程は割愛

山行の詳細

1日目の山行の詳細

信濃大町の扇沢駅。立山黒部アルペンルートの信濃側(長野県側)玄関口。ここからトロリーバス乗車。扇沢駅まで歩いて5分くらいのところにある市営無料駐車場は平日朝5時半到着で8割ほど埋まっていた。なお、駅に隣接する有料駐車場は十分に空いていた。

トロリーバスで黒部湖まで上がってきた。黒部ダムを歩いてケーブルカーの黒部湖駅へ移動中。写真中央奥に立山連山が見える。左から雄山(おやま)、大汝山(おおなんじやま)、富士ノ折立(ふじのおりたて)。

関西電力の水力発電ダム。黒部ダム(黒四ダムともいう)は1956年に着工された。大抵は観光放水されている。

ダム湖の黒部湖水位はちょっと少なめだった。日本一標高の高い遊覧船もある。アルペンルートの詳細は帰路で紹介するとして、室堂へと先を急ぐ。

室堂到着。ここで湧き水を500ml汲んで出発。写真の右奥が黒部湖から見えていた立山連山の山々。中央に向かって真砂岳(まさごだけ)、別山(べっさん)へと稜線が続く。

みくりが池。きれいな逆さ浄土山(右)と立山連山(左)。風がほとんどなく(ということは暑い)、水面がほぼ鏡のようになっていた。幸先良いスタートだ。

中央奥が別山乗越のある尾根。手前は雷鳥荘。2泊目は予定外でここに宿泊した。写真には写っていないが、雷鳥荘の左下にある地獄谷から源泉を引き揚げている。大好きな気持ちの良い硫黄泉だ。

雷鳥荘前から雷鳥沢のテン場を見下ろす。背後は剱御前(つるぎごぜん)から別山へ連なる尾根。左端の剱御前とそのすぐ右横のピークの間の凹んでいる部分が別山乗越(べっさんのっこし)と呼ばれるところで、剱御前小舎という山小屋がある。

雷鳥荘から下に見えるテン場まで下り、テン場を抜けて別山乗越まで標高差約500mを登り上げる。1日目の難所だ。多くの登山者はテン場から剱御前小舎に向けて直上する雷鳥坂ルートを進むが、私は左斜めに上がって新室堂乗越の分岐から写真の左の尾根を上がる「くの字」のルート取りで進む。

コオニユリかな。ここからトウヤクリンドウまでの花は新室堂乗越経由で剱御前小舎に至る登山道で撮影した。くの字に進むこちらのルートは雷鳥坂の直上ルートよりわずかながら時間がかかるが、静かな歩きやすい登山道で、私はこのルートが好きだ。

シラネニンジンはいたるところに群生していた。よく似た花でハクサンボウフウがあるが、多分シラネニンジンで合っていると思う。

ミヤマリンドウ。何枚も撮ったが、中央部にそばかす模様のあるタテヤマリンドウは1枚も撮影していなかった。


イワイチョウ。これもリンドウの仲間だそうな。

ミヤマダイコンソウの群生。

イワキキョウ。

ヨツバシオガマ。


トウヤクリンドウ。剱御前小舎の手前に群生していた。重いザックに喘ぎながら、お花を撮りつつ休憩し、何とか剱御前小舎に到着。汗ぐっしょり。

剱御前小舎の手前から雨がポツポツし始め、小舎の前で小雨となり、他の多くの登山者と同じようにレインウェアの上着とザックカバーを着けた。予報では午後3時ごろに小雨になるとのことだったが、ちょっと早い。

小舎で500mlペットボトルを調達し、剱沢のテン場へ向かって下ると徐々に雲の中へ突入。雨は降っているのか降っていないのか微妙なレベルになったが、いずれにしてもガスでも濡れる。

剱沢の幕営場。こちらもまだテントの数は少ない。雨はほとんど止んで、ガスも薄くなってきた。直射日光が当たらないので、涼しくていい。

写真左手のテントの先に小屋が見える。テン場の管理棟と富山県警の剱沢警備派出所だ。先述したように、派出所で明日向かう予定の長次郎谷の雪渓の状況を確認し、今回の八ツ峰縦走を断念することに。断念を決断してしまえば、午後から予定していた雪渓の下見も取りやめることにし、小屋でビールを飲んでまったりすることに。

写真右側の源次郎尾根に雲がかかり、その奥の剱岳本峰も八ッ峰も見えない。この日の天候は織り込み済みなのだが、「岩と雪の殿堂」の剱岳の美しい稜線が見えないのはやっぱり残念。

写真を撮っている立ち位置は剱沢小屋の前。ここから写真左に見える剱山荘へと向かう。雨は止んでガスも高度を上げたので、濡れたレインウェアやザックカバーが徐々に乾きだす。

アップダウンのほとんどない登山道をとぼとぼ歩き、予約した剱山荘に到着。早速、温水シャワーを浴びた。そう、この小屋も剱沢小屋もシャワーが浴びれる珍しい山小屋なのだ。石鹸やシャンプーは環境保護のため使用できないが、汗を流すことができ、さっぱりとして生き返る。

早速ビールとおつまみでくつろぎタイム。この日は久しぶりに重いザックを担いで本当に疲れた。

前立腺肥大気味にビールの飲みすぎが加わり、夜中2時前にトイレに起きる。起きたついでに小屋の外に出ると満天の星空。驚くほどの暖かさで無風状態。しばし小屋の前で天の川撮影。iPhoneでここまで撮影できる(無加工)。

本来ならば、今頃は剱沢の雪渓を下って長次郎谷の出合に向かっている頃なのだがな・・

2日目の山行の詳細

同室の方々が3時くらいから準備をして出立し始めた。しばらく横になっていたが、自分も出かけることに。3時50分に小屋を出て、一般ルートの別山尾根をヘッデンの灯りで進む。

一服剱の手前で稜線に登り上げ、きれいに輝く富山の街と能登半島の灯りが見えた。灯りの形で富山湾が浮き上がる。

一服剱を通過し、背後に立ちはだかる前剱へ向かう。かなり明るくなってきた。天候は申し分ないが、やや風が強い。ウィンドブレーカーがバタバタと風に煽られてうるさい。

前剱山頂直下。左奥の剱岳本峰上空の雲が焼け出した。日の出が近いな。

前剱山頂から本峰を望む。雲海もいい感じになっている。

一つ東側の尾根の後立山(うしろたてやま)連峰、通称後立(ごたて)の稜線には雲がかかっており、そこから日が昇る。

ご来光。神々しい。左は5番目の鎖がある前剱の門。

前剱から前剱の門へと渡る短い橋。その先は鎖を伝って岩のへつり。定番の写真。左右は切れ落ちているが、平均台と違ってすんなり歩ける。

写真中央、八ッ峰の頭(右)とチンネの頭(左)が奥に並んで見え始めた。『チンネの頭に ザイルをかけて パイプ吹かせば 胸が湧く』アルプス一万尺の16番の歌詞。

中央の鎖は平蔵の頭からの下りルート。本峰への登りは中央の岩の右を巻いて進む。難所は混雑回避や安全のために上下が別ルートになっている。右へ巻いた先は、平蔵の頭の急峻な岩の鎖場を下ってコルへと下りる。

9番目の鎖場、カニのたてばい。登りの最後の難所。看板の左側に回り込み、鎖を補助にして岩を登る。足置きの鉄杭も打ち込んである。

私の前後には誰もいない。3回目のカニのたてばいなのだが、こんなことは初めて。

カニのたてばいの上側。ここを登り上げれば、あとは稜線伝いに山頂へ。

はい、山頂。ロープやアイゼンなどの八ッ峰用の重い荷物は小屋に置いてきたので、この日は身軽にホイホイ登れた(笑)。山頂には驚いたことに誰もいない。これも初めて。

山頂直下で下ってくるソロ3人と次々とスライドした。剱山荘泊の先行者なら、重いザックを小屋に残して身軽にピストンするはずなのだが、アタックザックではなかったので、早月小屋から上がって別山尾根に下りる人たちだったのだろうか。それとも単に重いザックを担いで登りたかっただけとか・・

まずは貸し切りの剱山頂から八ッ峰の1峰から八ッ峰の頭まで9つのピークを眺める。あそこを登って来れなくて無念。八ッ峰の後方にある後立の尾根には相変わらず雲がかかっている。

写真右上が1峰。その左が2峰。その下の写真中央に見えるのが3峰。左下の端が4峰。

5峰のアップ。

右が6峰Dフェースの頭、左が6峰山頂。

7峰。

8峰。

八ッ峰の頭。

後続の方々が到着されたので写真を撮ってもらった。

立山連山と剱沢を望む。右側奥には薬師岳、その左に黒部五郎岳、ほぼ中央奥に笠ヶ岳、中央やや左奥に三俣蓮華岳。その左手前が立山連山で奥に槍ヶ岳の頭も見えている。

別山の背後に見える槍の穂先をアップ。

最後にもう一度八ッ峰。奥の後立の左端の方に白馬岳と旭岳がみえる。さて下山するとしよう。


カニのよこばいを通過して下降中。先行者の先には、平蔵小屋跡に下りる梯子がある。

カニのたてばいに3人取り付いている。平蔵のコルから撮影。

平蔵の頭の左側から登りの登山者が下ってくる。下山ルートは写真右側の白いラインを上に登り、中央上部のL字型に白くなっているルートを進む。見た目ほど怖くない。

イワキキョウ

下山もトラバース路ではなく、前剱山頂に立ち寄る。剱岳本峰を振り返る。素晴らしい青空。

未練がましく八ッ峰を眺める。左端のチンネのすぐ左奥に白馬岳がはっきり見えるようになった。

別山から剱御前への稜線の後ろに立山連山の頭。写真中央やや左に剱沢小屋とテン場が見える。

下りは慢性の膝痛をいたわりながらゆっくり下りる。こういう下りが続くので絶対に落石させてはいけない。

ハクサンフウロが所々に咲いていた。

大分下りてきた。小屋までもうひと頑張り。

剱山荘に戻ってきた。往復5時間ちょっと。小屋前の出っ放しの冷たい引き水で頭と顔を冷やした。この水は誰でも利用できる。ただし、夕食前あたりは6つあるシャワーが全部使用されることが多いので、水量が極端に低下する。休憩の後、荷物を回収してパッキングし直し、10時前に出立。快適な小屋だった。お世話になりました。

剱沢小屋まで移動してきた。定番の写真は、やはりこうじゃなくちゃ。それにしても、ザックが重い。ここから別山乗越までの登り返しが思いやられる。

剱沢小屋の横でちょうど真砂沢から上がってきた4人組と会話。前日に真砂沢のテン場に向かう途中に長次郎谷の雪渓を確認したら、あまりに酷くて本日のチンネを諦め、こちらのテン場に移動してきたとのこと。やはり県警派出所の人は、危険性を誇張して話していたわけではないようだ。

彼らはこの日はテン場でまったりし、翌日に別山尾根で剱岳をピストンするとのこと。アルプス一万尺の16番歌詞のようにはいかなかったけど、剱岳を存分に楽しんでください。

行きに情報収集した派出所。左隣がテン場の管理棟。この前に水場がある。

テン場を抜けて剱御前小屋へと登り返す。ここの登り返しもしんどい。小舎から剱山荘へ直接下るルートは、写真の雪渓の最上部を数メートル横切る。

剱御前小屋で昼食休憩。小さなネズミを咥えた小さなオコジョが現れた。すぐに人垣ができ写真取れず。剱と八ッ峰にサヨナラ。どうでもいいけど、トンボが写っているな。

上りと同じく新室堂乗越方面へ尾根を下る。膝をいたわりつつぶらぶらと。

浄土山と雄山のコル(鞍部)にある一ノ腰山荘の奥に槍ヶ岳から穂高連峰への稜線が見えた。

奥大日岳。こちらも静かで良い山だ。

雷鳥沢まで下りてきた。雷鳥沢のテン場のベンチで重いザックを放り出して大休憩。

雷鳥沢のテン場から石段をヒイコラ言いながら登り返してきた。標高差100mほどだが、ここも本当に疲れる。ここから室堂へは30分くらい。扇沢方面の最終トロリーバスには2時間くらい余裕をもって着けるが、ひどく疲れたのと、元々2泊の予定だったので、今日の下山をやめて雷鳥荘に飛び込みで宿泊することに。空いていてラッキーだった。

早速、雷鳥荘で温泉に入り、ビールでまったり。おいしい夕食後に富山方面に日が沈む。

ちょっぴり剱御前から別山への尾根がアーベントロートに染まる。

雄山、大汝山、富士ノ折立も夕日に照らされる。

テントの数が大分増えてきた。明日の「山の日」祝日は盆休みの初日。きっとすごい盛況だろう。

3日目の山行の詳細

3日目。暑くならないうちに雷鳥荘を6時半に出立。オヤマリンドウはまだ咲いていない。

みくりが池温泉小屋から地獄谷と大日三山の奥大日(右)と中大日(左)。その奥には大日岳がある。今日もいい天気だ。いつか、日本一の落差の称名滝から登って大日三山を歩きたい。

オオハナウド

室堂に戻ってきた。涼しいうちに歩いたので、ちょっぴり汗ばむ程度で済んだ。まだアルペンルート稼働前なので静寂に包まれる室堂。

始発は8時15分なのだが、一番乗りで7時に到着。待っていると期待通り7:45に臨時便のトロリーバスが出た。1台目の半分くらいしか乗客はいなかったが、4台並んで走る。途中ですれ違った上りの4台は立っている人が一杯。

トロリーバスの次はロープウェイ。大観峰(だいかんぼう)駅から後立の山並みを眺める。左端の五竜岳から右端の針ノ木岳までばっちり。本日の後立は完璧な山の日びより。ただし熱中症警戒アラートMax。下に見えるのは黒部湖。

一杯飛び回っているツバメがロープウェイ駅で休憩。

上がってきたこの便に乗って下りる。

中間地点ですれ違い。途中に支柱が一本もない珍しいロープウェイだ。

立山連山の大汝山と富士ノ折立が奥に見える。写真中央の左端にロープウェイの大観峰駅が見える。トロリーバスは室堂から雄山の真下のトンネルを通ってあの大観峰駅へ下ってくる。

ロープウェイの次はケーブルカーで黒部ダムまで下ってきた。左は続々と室堂へ向かう人たち。観光客やハイカーも多い。

黒四ダムの放水にダブルレインボー。

今回の山行では主目的の八ッ峰はできなかった。おかげで(?)快晴の中、一般ルートで安全に剱岳登山を楽しむことができた。感謝だな!

山行を終えて

長次郎谷の雪渓の状態が悪いことは把握していた。昨今の温暖化で雪渓の損傷は年々早くなり、7月上旬ごろから予報とにらめっこしてきた。二日連続で晴れる予報を狙っていたが、ズルズルとお盆休み直前になってしまった。

山愛好家のSNSのヤマレコやヤマップの情報をもとに一抹の不安を抱きながらも、何とか長次郎谷出合の雪渓崩落個所や途中の危険個所も突破できるのではないかと期待して出かけてきた。しかしながら、取り付きまですら到達できない状況と判明。雪渓に関しては楽観的過ぎた。

八ッ峰をやったら、岩稜のバリエーションルートは卒業だと心に決めていた。年齢的な体力や気力の衰えからも、今シーズンが最後のチャンスと狙って臨んだのだが、結果は挑むことすらさせてもらえず、あっけなく終わってしまった。

きっと「お前の未熟さではまだ早い」、というか「お前の年では挑戦には遅すぎる」との山の神様の思し召しなのだろう。来シーズンからは一般登山道に専念するつもり。とはいえ、「60代、男性、ソロ」という遭難・事故率が一番高いカテゴリーに入っているので、一般登山道といっても健全な恐れの意識をもって慎重に山歩きを続けたいと思う。

それにしても、今回は久しぶりにロープ類などを詰めた重いザックに苦しんだ。50mロープが3キロちょっと、ATCやカラビナ類、12本爪アイゼン、ピッケル、パワーヘッドランプで計5.5キロの重量増。老化しつつある背骨が圧迫骨折するんじゃないかというくらい痛んだ。とてもテン泊装備と一緒には担げない。小屋泊しかありえないと実感した。

翌日の剱岳はアタックザックでの軽量登山のおかげで、剱山荘から山頂まで500m強の標高差をホイホイ登れた(笑)。本番シミュレーションとして上記の5.5キロ一式を剱山頂へ担ぎ上げるべきだったか・・。重いザックで室堂と剱山荘を往復し、標高差500mの別山乗越も歩荷したので、「まぁ、これで良しとしよう」と自分に言い聞かせている。

関連情報

コンビニ

安曇野ICを下りてから扇沢に向かうまでに、メジャーなコンビニが数件ある

立山黒部アルペンルート関連

安曇野ICから扇沢へのルート:
http://www.kurobe-dam.com/access/guide_car.html

扇沢駐車場
市営無料駐車場:第一170台+第二60台
有料駐車場350台、1000円/24時間
https://tozanguchi-p.com/post-442/
https://www.kurobe-dam.com/access/guide_car.html
到着日は第一無料駐車場が8割程度埋まっていた。帰りの山の日(お盆休み初日)は、2キロ下った辺りまでスノーシェッド前後の両側路肩に路駐されていた

立山黒部アルペンルート
扇沢から室堂:片道6,850円、往復12,300円
WEB予約あり。扇沢からの行きの便は指定可能。室堂からの帰りは指定不可
https://www.alpen-route.com/index.php

利用した宿

剱山荘(1泊目利用):
1泊夕食のみで12,000円だった。温水シャワーがあり、汗を流せるのがありがたい(石鹸シャンプー使用不可)。トイレも水洗。小屋前には誰でも利用できる水場がある。携帯電波は入りずらい(ドコモは1本のみ)。部屋は左右に上下二段になった寝床で、各段とも布団二組毎にビニールシートで間仕切りされ、さらに布団二組の間は上半身をビニールカーテンで仕切っている。今シーズンも二人組の場合は同じ間仕切りの布団二組に入るが、ソロの場合は一人だけとなる(隣が空き)。コロナ対策継続。
https://www.kenzanso.com/blank

雷鳥荘(2泊目利用):
飛び込みで空いていたので宿泊した。1泊夕食のみで9,900円だった。かけ流しの硫黄泉の温泉あり。ソープ・シャンプーは備え付け。食事も山小屋の域を出る。ウォシュレット。クレカ、QRコード決済可。携帯電波も届く。小屋ではfree wifi利用可能。二段ベッド4つ/部屋。カーテンでプライバシー確保可。
http://www.raichoso.com/

日帰り温泉

<大町温泉郷周辺>
湯けむり屋敷 薬師の湯:今回も利用
7:00~21:00(最終入館20:30)。750円。TEL.050-3101-9679。長野県大町市平2811-41。扇沢から車で約15分
http://o-yakushinoyu.com/

籠川渓雲温泉、13:00~19:00、720円、0261-22-1530
https://www.kuroyon-royal.jp/hotspring/

葛温泉 高瀬館:
10:00~20:00。700円。TEL.0261-22-1446。長野県大町市大字平高瀬入2118‐13。扇沢から車で約20分、七倉山荘の手前
https://www.takasekan.com/hot-spring/

<室堂周辺>
雷鳥荘:
11:00~20:00。1000円。地獄谷を源泉とする白く濁る硫黄の香りの100%掛け流しの湯(風呂の中の階段を上がった湯舟。下の湯舟は普通の水を沸かした湯かな?)シャンプー、ソープあり
http://www.raichoso.com/sisetu.html

みくりが温泉:
9:00~16:00。1000円。地獄谷を源泉とする白く濁る硫黄の香りの100%掛け流しの湯。シャンプー、ソープあり
http://www.mikuri.com/spa.html

歩行データ

1日目

08:50室堂バスターミナル → 08:57みくりが池 → 09:00みくりが池温泉 → 09:14雷鳥荘→09:20雷鳥沢ヒュッテ → 09:29浄土橋 → 10:00新室堂乗越 → 11:40剱御前小舎11:53 → 12:31剱沢キャンプ場 → 12:37剱澤小屋12:43 → 13:13剣山荘(泊)

2日目

03:49剣山荘 → 04:10一服剱04:12 → 05:02前剱05:09 → 05:20前劔の門05:21 → 05:48平蔵の頭05:51 → 05:52カニの縦バイ → 06:03カニのヨコバイ06:09 → 06:18カニのハサミ06:19 → 06:32剱岳06:52 → 06:55カニのハサミ07:03 → 07:11カニのヨコバイ07:17 → 07:23平蔵の頭07:24 → 07:39前劔の門 → 07:51前剱08:06 08:45一服剱08:47 → 09:01剣山荘09:43 → 10:10剱澤小屋10:18 → 10:28剱沢キャンプ場 →12:02剱御前小舎12:17 → 13:14新室堂乗越 → 13:35浄土橋13:48 → 13:58雷鳥沢ヒュッテ →14:23雷鳥荘(泊)

3日目

06:33雷鳥荘 → 06:45みくりが池 → 06:55ホテル立山 → 06:56室堂バスターミナル

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