白馬岳から唐松岳へ縦走(2022/10/01-02)

山の記録

2022.10.04 18:17

計画に当たって

2泊3日で遠見尾根から五竜岳に登り、唐松岳を経て白馬岳まで縦走する計画を立てていたら、ちょうど今シーズンの北アルプスの秋山ラストチャンスとなる好天予報になった。たまたま家にやってきた長男がこの計画に乗りたいと興味を示したので、息子の予定に合わせるべく1泊2日の土日の山行とした


五竜山荘はじめ山小屋の予約が取れず、辛うじて確保できた白馬岳頂上宿舎での宿泊を前提に、白馬から唐松への逆回りの計画に修正した。7月以来、久々の週末の晴れ予報に加え、山小屋によっては営業終了も始まっているので、北アの今シーズンラストチャンスと考えた人が多かったのだろう。今回の山行では、小屋の予約確保が一番の「難所」だった(笑)

上の写真は下山途中にある八方池に映る今回の縦走路の説明図。猿倉登山口から右端の白馬岳に登って白馬岳頂上宿舎に宿泊。2日目に杓子岳、白馬鑓ヶ岳、天狗の頭へと縦走して、難所の天狗の大下りと不帰ノ嶮(かえらずのけん)を通過。写真には写っていないが、Ⅲ峰のすぐ左にある唐松岳まで縦走して、八方尾根を下山するコース


不帰ノ嶮は北アルプスの一般縦走路としては難コースとされていて、北アの三大キレットの一つになっている。キレットとはピークとピークを結ぶ尾根が深く急峻にえぐれている箇所のことで、漢字では「切戸」と書く。外来語ではなく、長野県の方言からきた言葉とのこと


 北アの三大キレット、というより日本の三大キレットは、槍ヶ岳~穂高岳の大キレット、 白馬岳~唐松岳の不帰キレット、そして 五竜岳~鹿島槍ヶ岳の八峰キレットだ。これまで大キレットは5,6回、不帰キレットと八峰キレットは2回通過したが、個人的な感覚では大キレットが一番難しく、不帰キレットと八峰キレットは同じくらいの難易度かと思う


余談ながら、キレットとしては八ヶ岳キレットなども有名だが、北アのキレットの方が長く険しい。キレット以外には、奥穂高岳~西穂高岳の縦走路も、一般登山道としては最難路の一つだ。槍ヶ岳の北鎌尾根や剱岳の八つ峰など、バリエーションルートと呼ばれる岩稜コースは、上記の一般登山道の難コースをはるかに超えて難しい(バリルートはペンキの印や鎖、梯子などがなく、自らルートファインディングしながら進んでいく)


いずれにしても、今回の不帰キレットは岩稜好きにはたまらないコースだ。山歴の浅い息子にはちょっと厳しいコースだが、岩稜歩きの楽しさや面白さを味わってもらえるだろう

歩行ルート図と標高グラフ

合計距離: 21621 m
最高点の標高: 2904 m
最低点の標高: 1250 m
累積標高(上り): 2768 m
累積標高(下り): -2206 m

1日目の山行記録

まずは登山口の猿倉山荘。自宅を深夜1時に出発して朝5時頃に下山口の八方に到着。バスターミナル前の第2駐車場に車をデポして猿倉へと移動。6時発のバスを利用するつもりだったが、早く到着したのでタクシーで移動することに。猿倉を5時半に出立する頃には明るくなってきた

猿倉山荘の横の樹林帯を登ると林道に出る。白馬岳の稜線が朝日でモルゲンロートに赤く染まっていた。全国的に今年の紅葉は遅いようで、この辺りもまだ始まっていない

林道終点から登山道をしばらく進むと白馬尻小屋に到着。ここまで約1時間。コロナにより今シーズンも小屋は解体されたままで営業していない(トイレ棟は使用可)。ここで朝食休憩。日本三大雪渓の一つである白馬大雪渓は、シーズン初めの残雪期にはこの辺りから沢を覆う雪渓の上を歩いて登る。この時期は雪渓が最も小さくなっており、夏道の上を歩く

夏道を進むと雪渓の残骸が現れた。快晴で素晴らしい青空なのだが、秋山というには少々暑い。雪渓が続いているときは、冷たい風が吹き下ろして涼しさを感じさせてくれるのだがな・・

雪渓ポイントまで上がってきた。200m位だろうか、雪渓を斜めに上がって対岸に渡る。滑り止めがなくても登れるが、せっかく持参したのでチェーンアイゼンを着けて雪上歩きを楽しむ

対岸に渡ると夏道にもどり、ここから徐々に傾斜が増して急登になっていく

振り返ると、赤いベンガラの印に沿って雪渓を渡る登山者や、それに続く夏道を上がってくる大勢の登山者が見える。今日はどこの山も登山者で大賑わいだろう

急登をかなり上がってきた。左手には杓子岳(しゃくしだけ)に続く荒々しい岩稜がひときわ目を引く

今宵の宿、白馬岳頂上宿舎が見えてきた。いつもながら、あと少しが長い

頂上宿舎に到着。登山口から5時間弱、10時過ぎの到着。小屋前からは左に杓子岳、右に白馬鑓ヶ岳が見える

遠く八ヶ岳の右奥に富士山も見えている。まずは小屋にチェックイン

必要な荷物だけアタックザックに詰め替えて、白馬岳山頂までピストンしようと小屋を出ると、雲が湧き始めていた。チェックイン前は雲一つない快晴だったのに・・

急いで山頂を目指して白馬山荘まで上がってくると、白馬岳山頂方面にも雲がかかり始めている。ヤバいよ、ヤバいよ

白馬岳山頂(2932m)に着くと雲に覆われてしまった。息子と二人で苦笑い。どちらを見てもほとんど眺望なし

しばらくすると、栂池スキー場から小蓮華山を経て上がってくる稜線がちょっとだけ顔をのぞかせた

粘ってもダメそうなので、サッサと白馬山荘まで下ってスカイプラザで昼食をとることに。ちなみに白馬山荘は山頂直下にあり、私たちが泊まる白馬岳頂上宿舎より100mくらい標高が高いところに建つ。定員800名の日本最大級の山小屋だ

外来食堂、売店を兼ねるスカイプラザの内部。12時前だが随分と空いていて拍子抜け。これからどんどん登ってくるんだろう

お昼は生ビールとボリュームたっぷりのカレー。残念ながら、ゆっくり昼食をとっても状況は変わらず、諦めて頂上宿舎へと下る

下り始めると、一瞬ではあるが旭岳の雲が取れて姿を見せる。しかしすぐに雲に覆われてしまう。その後は、頂上宿舎の談話室や外来食堂で、持参のおつまみとビールやワインでまったり

早くチェックインしたので、夕食は一番最初の組で17時スタート。バイキングで食べたいものを好きなだけ取ってお腹を満たしていると、窓越しに雲が見る見るうちに取れていく。二人で外に出ると、白馬岳がアーベントロートに染まっていた

急いで稜線に向かうと、ちょうどサンセットショーの始まりだった。これには二人で大感激。山の神様が微笑んでくれた。右は旭岳

稜線には多くの人がショーを楽しんでいる。奥には剱岳が三角錐の姿を見せている

日本海方面に広がる雲海に沈んでいく太陽。素晴らしいサンセット劇場だった。二人とも大満足

太陽が沈むと、赤く染まっていた白馬山荘と白馬岳は静かに元に戻っていく

頂上宿舎の裏にあるテン場。最大100張りなのだが、ざっと数えると85張りくらい。ほぼほぼ満員御礼状態

左の丸山山頂にも多くの登山者がショーを楽しんでいた。三日月がきれいだ。明日は終日晴れますように・・

 

2日目の山行記録

翌朝4時半に出立。黎明の空に白馬山荘の灯りとその上に白馬岳の山頂

飛行機雲がモルゲンロートに染まる

杓子岳山頂(2812m)へは進まず、山腹のトラバース路を行く。白馬鑓ヶ岳の左斜面もモルゲンロートに染まり始めた。杓子岳と白馬鑓ヶ岳のコル(鞍部、低くなったところ)へ急ぐ

コルからご来光を拝む。何とか間に合った

杓子岳を振り返る。山頂を目指していたら、ご来光に間に合ったかどうか・・。トラバース路を飛ばして来て正解だった

コルから白馬鑓ヶ岳(2903m)の山頂まで登り返してきた。山頂標の左奥は白馬岳

写真中央奥の白馬岳からS字を描くように左下へと続く稜線を歩いてきた。今朝も快晴のスタートだ

これから向かう天狗の頭への稜線。左奥には不帰ノ嶮、唐松岳、五竜岳、鹿島槍ヶ岳が続く。後立山連峰の山並みは、そこから右奥の針ノ木岳へと続く。中央奥の蓮華岳の奥には槍穂の稜線もくっきり。北アのどこに登っても完璧な晴れだ

蓮華岳の奥に槍穂の稜線。右から槍ヶ岳、大キレット、北穂高、奥穂高、吊尾根、前穂高

右手には、立山連山(左から中央)と剱岳(右)。室堂も登山客と観光客でごった返していることだろう

天狗の頭への稜線を進んできた。天狗山荘はすぐそこ。天狗の左斜面の奥に、下から不帰ノ嶮Ⅰ峰、Ⅱ峰北峰、右へⅡ峰南峰、さらに右へⅢ峰、すぐ左奥に唐松岳。唐松岳のすぐ奥に五竜岳、その後ろに重なるように双耳峰の鹿島槍ヶ岳

天狗山荘の入り口前のテーブルとベンチで朝食用に作ってもらった弁当で腹ごしらえ。天狗山荘は昨夜が最終宿泊日だった。中ではスタッフが小屋仕舞いを始めていた

いよいよ不帰キレットに突入。天狗の大下りの一つ目の鎖場を下りてきて振り返る

天狗の大下り、二か所目の鎖場をクライムダウンする息子。鎖の下りがあるニか所だけは特に慎重に。先行者や下から登ってくる人がいたら、待機して待つこと。待機してクリアになっても、絶対に落石させないこと。鎖場を終えてさらに先に下っている人や、反対側から登ってくる人を直撃しかねないので。また、長い鎖の下りは、鎖を両手でつかんで下りると体が振られるので危険。片手だけ鎖を持ち、もう一方は岩をしっかり捉えて下ること(登りも同じ)


二か所目の鎖場が終わると、普通の急斜面の下りになるが、少々ザレ気味なので、スリップして転倒しないよう注意

Ⅰ峰山頂。ここへの登り返しは容易。ここからⅡ峰とのコルへの下りも危険個所はない

いよいよ不帰ノ嶮の難所、Ⅱ峰北峰への登り返し。鎖場の連続。後続者だけでなく、唐松側からこちらへ下りてくる登山者もいるので、上下に注意を払いながら進む

息子が登り上げたところから鎖を伝ってこちらに移動する

左は切れ落ちた崖。緊張の連続。慎重に!

高度感ある岩壁を登る。手掛かり、足掛かりはしっかりしている。鎖に頼らず、しっかりと岩をホールドして登る

集中して! 見ている方が緊張するな・・

八峰キレットにも同じようなほぼ水平の梯子がかかっている。ここの梯子の下もストンと切れ落ちているので、鎖をしっかり握って渡る

あと少し。緊張を切らさずに!

最後の一歩。よく頑張った

Ⅱ峰北峰。ここまでくれば難所は終わりだ。スポーツドリンクで乾いた喉を潤す

Ⅱ峰北峰からの小さな下り。途中で下山ルートの八方尾根が見えた。写真中央に八方池も見える

八方池をズームアップ

Ⅱ峰南峰から通過してきた稜線を振り返る。左の天狗の大下りから写真中央の不帰Ⅰ峰、その右に不帰Ⅱ峰北峰

唐松岳山頂に到着。すごい人で大混雑。同じルートで先に到着していた方に撮ってもらった。山頂標の背後は剱岳

こちらも山頂写真。背後は白馬鑓ヶ岳、天狗の頭、天狗の大下り、不帰ノ嶮。息子も大満足の稜線歩きだった

威風堂々、どっしりとした五竜岳。今回の続きの縦走はまたいつか一緒に

山頂は密状態なので、長居はせずに唐松岳頂上山荘に下りる。背後は浅間山

頂上山荘に下りて来て唐松岳山頂を振り返る。登山者が蟻の行列のように続いている

八方尾根の下山途中、登山道に人だかり。さながら雷鳥撮影会の様相だった

下山途中の紅葉。この辺りは幾分色づいていた

大会でもあったのかな?すごい数のパラグライダーが飛び交っていた

八方池が見えてきた。ここまで陸続と登ってくる登山者に何度も足止めを食らいながら、何とか下りてきた

定番スポット。弱い風が水面を揺らし、右端の逆さ白馬三山を乱す。でも大満足、初めてこれを見ることができた

有名な八方尾根の第3ケルン。人の顔見たいでしょ? 八方池までは観光客やハイカーも上がってくるので、彼らと一緒にリフトトップまで下っていく。下山はリフト2基とゴンドラを乗り継いで下りる。ここまでの下りで足が痛いので、ここから文明の利器を利用できるのはありがたい

山行を終えて

私にとっては38年ぶりの不帰ノ嶮で、山歴の浅い息子にとっては初めてコース。お互いに楽しめるだろうと計画を立てて実行に移した。ドピーカンで上々のスタートだったが、白馬岳頂上宿舎にチェッックインし、準備をして外に出るとまさかの事態。30分前まで雲一つなかったのに、瞬く間に雲が湧いて旭岳や杓子岳、白馬鑓ヶ岳を飲み込み始めていた


急いで白馬山頂に向かうも、山頂に到着するとほぼ四方を雲に覆われ、眺望がほとんどなくなっていた。これには二人で苦笑い。山頂で粘っても期待薄だったので、さっさとスカイプラザに下りてランチタイム(私はアルコールも)。ビールを飲んでも食事をしても状況は変わらず、頂上宿舎へ戻ってまったりすることに


早くチェックインしたので、夕食は一番最初の組で17時スタート。バイキングで食べたいものを好きなだけ取ってお腹を満たしていると、窓越しに雲が見る見るうちに取れていく。二人で外に出ると、白馬岳がアーベントロートに染まっていた。急いで稜線に向かうと、ちょうどサンセットショーの始まりだった。これには二人で大感激。山の神様が微笑んでくれた


翌日は下山するまで終日快晴で、白馬から唐松までの快適な稜線歩きを存分に楽しんだ。最高のコンディションで不帰キレットをエンジョイでき、本当にラッキーだった。股関節の慢性痛に苦しめられながらも、息子も久々の大満足な登山だったのではないかと思う


彼女との新生活をスタートさせたばかりなので、以前のようには一緒に山へ出掛けることも難しくなったが、また機会を見つけて誘ってみたいと思っている。息子の嫁さんに睨まれない程度に・・・


なお、本山行のコースやタイム等の詳細については、以下の記録を参照されたし

山行記録: 白馬岳 -> 不帰ノ嶮 -> 唐松岳(猿倉↑八方↓ ☜ ヤマレコの記録

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