ミヤマキリシマ咲く、くじゅう連山へ(2022/05/19-20)

山の記録

2022.05.23 12:11

前年12月に1泊2日で、九重山(くじゅう連山ともいう)の主峰中岳をはじめ、久住山(くじゅうさん)、稲星山(いなぼしやま)、星生山(ほっしょうざん)などを縦走した。いつか、九州固有のツツジの仲間であるミヤマキリシマの咲くころに再訪したいと思っていた。今回、早くもそのチャンスが訪れ、阿蘇山に出かけるついでに、くじゅう連山にも出かけることにした


できれば、今回も山中の坊ガツルにある法華院(ほっけいん)温泉山荘に泊まって、1泊2日でくじゅう連山の未踏の峰々を歩きたいと計画した。心配した宿の予約は、ミヤマキリシマのピークにはちょっと早いようで、直前に電話したものの、すんなり取れた(6畳個室)


満開の頃にはとても予約が取れないし、山もひどく混雑して密状態になる。全体的には2-3分咲きというところだが、株によっては満開のものもあったので、ちょっと早いくらいで結果オーライだった

冒頭の写真がミヤマキリシマ。背後(写真中央)は、くじゅう連山の一つである三俣山(みつまたやま、1,745m)。今回は、三俣山、平治岳(ひいじだけ、1,643m)、大船山(だいせんざん、1,786m)の3峰に登る計画

こちらの温泉は、12月にくじゅう連山から下山した際に立ち寄った九重星生(くじゅうほっしょう)ホテルが運営する日帰り温泉「山恵の湯」の露天風呂の一つ。4種類の異なる温泉を楽しめる露天風呂の一つで、鉄分を含んだ酸性緑礬(りょくばん)泉の浴槽。三俣山を借景にした素晴らしい癒しの温泉だった


温泉に入りながら、次回はぜひとも三俣山にも登ってみたいと思い、今回は三俣山からスタートすることにした

まずは長者原(ちょうじゃばる)ビジターセンターの登山口からスタート。この日の朝は、由布院にある由布岳に登り、下山後に長者原へと移動してきたので、午前11時頃の2回目の登山開始となった


暫く林道のような登山道を進むと、土砂崩れの復旧工事で迂回路ができていた。迂回路は林道と何回かクロスしながらしばらく続いた。乾いていたからよかったが、降雨後は滑りやすく、靴が泥で大変なことになるだろう

林道に戻ってしばらく進むと、諏蛾守越(すがもりごえ)を目指す登山道の入り口がある。この登山道に入ると、急な山道となり登りが続く。急登を登り終えると、前回利用した大曲登山口からの舗装道に合流した。舗装路が終わると涸れ沢を渡り、岩ゴロの登りになる。右手に写真のような小さい噴煙を上げる硫黄山を見ながら進む

諏蛾守越の分岐まで登り上げた。前回は、ここから北千里ケ浜へと下り、さらに坊ガツルへと下って法華院温泉山荘に直行した。今回は写真の正面にある三俣山を西峰、本峰、南峰と周回して坊ガツルへ下る

少し登って、諏蛾守越にある火山のシェルターを兼ねた休憩舎を見下ろす

北千里ケ浜で何か撮影をしている様子に見えた

さらに標高上げて、北千里ケ浜の全景を見下ろす。北千里ケ浜は独特な雰囲気を持った世界なので、時代劇やSFなどのシーンにはうってつけだろうな。北千里ケ浜の背後には、前回周回したくじゅう連山の主峰の山並みが見える

右から久住山(1,786m)、天狗ケ城(1,780m)、主峰の中岳(1,791m)、稲星山(1,774m)のピークが並ぶ

まずは三俣山の西峰(1,678m)に到着。山頂標のすぐ左奥は星生山(1,762m)とそこから主峰方面に続く稜線が左に見える。前回歩いた稜線だ

次は三俣山の本峰(1,745m)に到着。三俣山は比較的登山者が少なく静かな山だ

本峰からはこの日の午前中に登った由布岳の双耳峰が見えた

南峰へ向かうルートから外れて、三俣山Ⅳ峰のピークにも立ち寄った

ルートへ戻り、南峰(1,743m)に周回した。本当は北峰(1,744m)もあるのだが、周回に時間がかかるので端折って割愛

南峰からダイレクトに坊ガツルへと下る。下りの取り付きが分かりずらく、GPSを見ながらいくつもある踏み跡を右往左往した。少し下ったところから坊ガツルの湿原(写真中央左)を見下ろす。急斜面の劇下りだな・・


今宵の宿の法華院温泉山荘は坊ガツルの右端(写真中央やや右)に見える。温泉とビールを胸に下山開始

登山道に点在したミヤマキリシマ。淡い紫がきれいだ。ツツジの雰囲気が良く見て取れる

1時間かけて下りてきた。概ね中央の凹んだ辺りかその横を下りてきた。真ん中少し下あたりで、滑りやすい湿った斜面に難儀して、思いのほか時間を要した。お助けロープは設置してあるのだが、ロープだけでなく木の枝や根っこを掴んで、とにかくすべって泥んこにならないように神経を使った。坊ガツルまで下りて来て、思わずベンチに腰掛けて大休憩・・

坊ガツルの湿原。尾瀬のような池塘は全くなく、野原のような感じだけれど、心休まる癒しの空間だ

想定より早く午後3時半に今宵の宿「法華院温泉山荘」に到着。チェックイン後に、かけ流しの温泉へ直行。柔らかい硫黄泉で、湯の華も浮き、何とも気持ちいい。自然保護のため、石鹸やシャンプーは使えないが、汗を流せるだけでも全身がさっぱりとして生き返る


温泉の後は、夕食までロング缶3本と持参のつまみでまったりと至福の時を過ごす

翌朝は日の出時刻(5時10分頃)を待ち、明るくなってから出立。朝食の代わりに弁当をお願いした。東京とは日の出時刻が40分くらい違うことを失念し、いつもの早朝ウォーキングの時間に起きて準備してしまい、早すぎて暗かった(笑)


山荘周辺のミヤマキリシマ。この日はミヤマキリシマが群生する北大船山などを目指す

天気予報では、残念ながら九州南部を低気圧が通過する。この辺りはギリギリ雨雲がかからない予報だが、多少パラつくことを覚悟して、平治岳(左端)から北大船山(中央右)、大船山(右の尖がり)への周回を開始する

坊ガツルのテン場奥から分岐を平治岳へ向かって登ってきた。大戸越(うとんごし)の分岐まで上がってきて、写真の平治岳南峰を経て平治岳へと進む

大戸越から登り始めようとして恐れていた異変に気付く。ミヤマキリシマに3センチくらいの虫が一杯いる。今シーズンは蛾の幼虫が異常発生してミヤマキリシマの葉を食い荒らしているとネットで知ってはいたが、こいつらのようだ。なぜかミヤマキリシマだけが被害にあっている

この写真に何匹いるか分かるだろうか?私が数えたところ少なくとも13匹はいる。これは聞きしに勝る惨状だ

完全に葉を食べつくされてしまったミヤマキリシマの木々

本来はミヤマキリシマが咲く小径を縫うようにして進むのだが、まるで枯れ木のようだ。よく見ると枯れ木にも幼虫が一杯いる。果敢に先まで進んでみたが、案の定、パンツやシャツに虫が数匹くっついてきた


落ちていた枝で服に着いた虫を払い落し、先に進むことを即断念。この道を大戸越まで戻って、シャツもパンツも脱いで総点検(笑)。帽子もザックも。幸い虫は付いていなかったが、暫くトラウマになりそうなほど気が滅入った

上部左側は、紫色があちらこちらに見えるが、下の方はほとんど枯れ木のようだ。蕾だけは食べられずに残っているが、この状態では咲くことはないだろう。今シーズンは観光写真で見るような紫の絨毯は見られないかもしれない


今シーズンの一過性の現象なら良いのだが、来年以降も繰り返すようだとミヤマキリシマがどうなってしまうのか本当に心配で心が痛む。まったく残念でならない

仕方なく平治岳は断念して、大戸越から反対側の北大船山方面へと尾根を登る。本来であれば、平治岳への登りにもこのようなミヤマキリシマが見られるはずなのだが・・

開花間際の蕾が一杯。よく見ると、こちらにも幼虫がいるが、今のところ数はほんのわずかだ

雨がパラパラしてきたが、レインウェアを着るほどでもない。登山道はドウダンツツジの新緑のトンネルで雨はほとんどかからない。秋にはこのドウダンツツジが紅葉し、山を赤く染める。いつか見てみたい

尾根に抜けると、雨も上がっていた。ミヤマキリシマ越しの大船山

冒頭の写真。ミヤマキリシマ越しの三俣山。心が癒される

北大船山の山頂からの眺め。全体的には二分咲きという感じだろうか。幸いこちらは涸れた株はほとんどない。ピークは6月上旬頃だろうか?淡い紫の絨毯が一面に広がるんだろうな。でもその頃は登山者だらけで、落ち着いて眺めていられないかも・・。曇り空で、ミヤマキリシマも満開ではないけど、静かなこの時期で良かった


下には坊ガツルが見え、右奥には三俣山、左には星生山、天狗ケ城、中岳などの稜線が見える

さぁ、今回の山行の最後のピーク、大船山に向かおう

大船山への尾根にはシャクナゲが数株あった

コイワカガミもあちらこちらに群生していた

大船山山頂(1,786m)。居合わせた若者二人組にシャッターを押してもらった。山頂標の左奥には初日に登った阿蘇山が見える

大船山の山頂から昨日の朝に登った由布岳の双耳峰も見えた

坊ガツルへの下山途中にミヤマキンバイの群生

坊ガツルまで下りてきた。左から平治岳、南峰、北大船山、大船山の山並みを振り返る

帰りは雨ケ池越えルートで長者原登山口を目指す。雨ケ池に登り返す途中で坊ガツルの湿原を見下ろす

雨ケ池に到達。木道を進む

木道脇にあった看板。雨が降ると木道の下まで池になるようだ。7-8月頃にはキスゲやハナショウブのシーズンになるようだ

雨ケ池のあたりから再び雨がポツポツとしてきた。今回もレインウェアはいらない程度。さらにちょうど新緑のアーケードを抜けて行くので、まったく雨が降りかからない

長者原まで下りてきた。雨はすっかり上がっている。ここも湿原で奥には木道の散策路がある。天気は何とか持ってくれた。前回とは違ったくじゅう連山を楽しむことができたことに感謝感謝!

長者原からやまなみハイウェイを走り、途中から阿蘇を迂回するようにローカル線を走り、1時間ほどで南阿蘇の宿までやってきた。早速温泉に入り、部屋の窓から阿蘇山を眺めながらビールでまったり

阿蘇山の右には根子岳の独特の山容も。今夜はのんびりして、明朝に熊本空港から成田へ向かう


2回目の九州山行。今回は阿蘇山、由布岳に加えて、くじゅう連山を再訪した。いずれも山を楽しんだが、残念だったのは、ミヤマキリシマを蝕む蛾の幼虫の発生。Webで「キシタエダシャク」という蛾の幼虫ではないかとあったが、真偽は分からない。でもひどい食い荒らし状態で、今後のミヤマキリシマを思うと残念でならない


虫を除けば、三俣山にも大船山にも登れて大満足。慌ただしい3日間の山旅だったが、本当に来て良かった。快く送り出してくれたカミさんにも感謝!


ただ、帰りの成田行きのJetstarで急病人が発生し、関空に緊急着陸したのはまさかの誤算だった。どうせなら羽田に緊急着陸してくれたらよかったのにと、不謹慎にも心の中で愚痴ってしまった


余程の重病かと思ったが、関空に着陸したら最前席までご自分で歩いて行った(⁉︎)。ご家族と一緒に搭乗されていた比較的若い女性のように見えた。すぐに下ろして出発するかと思いきや、医療スタッフがいろいろ問診などして待機状態が20分ほど続き、結局、女性は医療スタッフと歩いて降機した。ひょっとしたら妊婦さんだったか?いずれにせよ、大事ないとよいけど・・


その後、飛行機は給油して成田に向かうことに。結局、ほぼ2時間遅れで成田に到着。4時間弱、飛行機に乗っていたわけで、羽田ー上海ぐらいの飛行時間だ。ちょっと疲れた。いろんなことがあるもんだな。久しぶりに乗った飛行機でこうなるとは・・


そういえば、前回飛行機に乗ったのは5年前。坂本龍馬「脱藩の道」を歩くため、羽田から高知へ行き、松江から羽田に戻ってきた時だったな・・


なお、この山行のルートやタイムなどの詳細については、以下の記録を参照されたし

山行記録: くじゅう連山。ミヤマキリシマを蝕む蛾の幼虫大発生! ☜ ヤマレコの記録

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