2020.10.28 12:22
今シーズンの百高山ハントの仕上げ山行。高嶺(たかみね)とアサヨ峰(あさよみね)の2座を取りに行き、95座で今期を終えることを目指した。最初は山雑誌の「岳人」9月号に掲載された黑戸尾根を登って七丈小屋に泊り、翌日に甲斐駒ヶ岳山頂から仙水峠までおりて、栗沢山、アサヨ峰と登り返して、早川尾根小屋にて2泊目。3日目に高嶺、地蔵ケ岳を通って鳳凰小屋を通過し御座石鉱泉に下るというルートを踏襲しようと考えていた。
同じルートを歩かれた方の記録を拝見していると、テン泊装備を担いで歩く2日目の行程が長く辛いようで、自分にできるか悩む。そうこうしているうちに甲斐駒ヶ岳が積雪し始め、ますます不安になった。1泊目に仙水小屋、2泊目に鳳凰小屋を活用して、同じ2泊3日で身軽に歩くことを検討するも、仙水小屋がすでに今期の営業を終了してしまった
やむなく、御座石鉱泉から逆ルートでアサヨ峰まで1泊2日で往復(ピストン)する計画を立てた。早川尾根小屋でテン泊もしくは避難小屋泊するので、荷物は重くなる。自分の場合、荷物が重いと経験則から登りやアップダウン路はコースタイム(CT)の1.1倍強の時間がかかる。下りで帳尻を合わせてもCTの1.0-1.1倍を要するので、計画上1泊2日では厳しいのだが、CT0.9掛けで頑張って歩けば何とか収まりそうなので実行することにした
冒頭の写真は高嶺の山頂から間近に見える北岳と間ノ岳。北岳は3193mで、富士山に次ぐ標高第2位の山。南アルプスを代表する山の一つだ。間ノ岳は3190mで、北アルプスの奥穂高岳と並んで標高第3位の山。二つの山を結ぶ稜線は3千メートルの天空の稜線
まずは登山口の御座石鉱泉。コロナなのか大雨の影響か、現在休業中。手前に無料市営駐車場があり、25-30台くらい駐車可能。2日目の下山した際の写真。1日目は朝4時頃到着して出立したので、真っ暗だった。写真の右手前にあるトイレ棟の横から登山道に入る
燕頭山(つばくろやま、つばくろあたまやま。いずれの読み方もOKみたい)に到着。今回はテン泊装備を担いでいるのでザックが重い!
真っ暗な中、ヘッデンを点けて急登を我慢して登ってきた。ここで朝食休憩
今日は抜群の天気だ。これだけが救い(笑)
天気が良ければ、眺望も良い。燕頭山からは緩やかな登りになった。先に進むと甲斐駒ヶ岳が姿を現す。南アの貴公子、団十郎
さらに進むと鳳凰三山の一つ、地蔵ケ岳も現れた。山頂の奇岩はオベリスクの名で知られるが、ここからのオベリスクはちょっとイメージと違うな
振り返れば富士山の秀麗な姿。本当に美しい稜線だ
標高差1300メートル強を登ってきて鳳凰小屋に到着。やれやれ。絶妙のロケーションに建っていてありがたい
何といっても水がふんだんに流れているのがありがたい。水を補給する絶好の場所。水を必要以上に担ぎ上げなくても良いのは本当に助かる。しかも冷たくておいしい水だ
小屋から地蔵ケ岳までさらに400mほど登り上げる。途中で立派なつらら。山は着実に冬へと向かっている
地蔵への最後の登り。賽の河原、通称「砂地獄」。ここはいつも脹脛が攣りそうになる。花崗岩が崩れた砂地で、ズルズルと足が滑る。スキーで斜面を上がるときのように、逆ハの字で進むか、横に足を置いて進むと登りやすい
これが鳳凰三山の一つ地蔵ケ岳の山頂。2764m。通称「オベリスク」と呼ばれる奇岩の山頂。あのトンガリの先まで登る強者もいるが、年寄りには冷水だ。ここから眺めて良しとする
地蔵の山頂から眺める仙丈ケ岳。3033m。南アルプスの女王とも貴婦人とも呼ばれる
地蔵ケ岳の名の由来。子宝を祈願し、念願が叶ったらお礼にお地蔵様を奉納する。ここまで担ぎ上げるの重いだろうな・・
背後の右が甲斐駒ヶ岳(2967m)、その左に今回の最終目標であるアサヨ峰(2799m)
まずは第1目標の高嶺を目指す。お地蔵様から赤抜沢ノ頭(あかぬけさわのかしら)に登り、ここから左前方の高嶺に向かう。何度か小刻みに下って登り返す
高嶺山頂。2779m。百高山94座目。背後が北岳と間ノ岳
北岳、間ノ岳、農鳥岳と続く白峰三山(しらねさんざん)。南アルプス北部を代表する縦走路の一つ。左端に見えるのが、先月歩いた白峰南嶺の広河内岳(ひろごうちだけ)、2895m。素晴らしい稜線だ
北岳のアップ。バットレスと呼ばれるアルパイン・クライマー憧れの岩壁。すごい迫力だ。バットレスとは「控え壁」とも言われる建築用語。建築物の主壁を支える直角方向の壁のことで、山頂や稜線を支えるかのように切り立っている急峻な岩壁のこと
鳳凰三山の観音ケ岳(左)とその右側の薬師ケ岳。その右には富士山。素晴らしい眺めをもっと楽しみたいところだが、先へ急ごう
高嶺から白鳳峠へと随分下ってきた。明日はここを登り返すのか・・・
白鳳峠から赤薙沢ノ頭(あかなぎさわのかしら)に登り返し、さらに小刻みにアップダウンを繰り返して広河原峠に下りてきた。ここから北岳の登山口である広河原まで2-3時間。広河原への道路が大雨で損壊し、今シーズンは芦安から広河原へシャトルバスやタクシーで入れない
山頂標の後ろに八ヶ岳の山並みが見える。ここから早川尾根小屋までは30分程。重いザックでの地蔵までの長い登りに加え、高嶺からのアップダウンがボディブローのように効いて相当足に来ている。今日のうちに小屋からアサヨ峰までピストンできるか逡巡する
①小屋についたらすぐに空身でアサヨ峰へ向かい、小屋への下山は途中からヘッデンで戻る
→しかしながら1日目に無理してピストンすると疲労を残し、体力的に翌日に御座石まで到達できない可能性大
②体力回復後の2日目の朝にアサヨ峰をピストンし、御座石まで戻る。燕頭山か西ノ平あたりからヘッデン覚悟
→最後のヘッデン歩きは1日目の最初の登りと同じだが、①と同様に脚力が持つかどうか
③1日目または2日目早朝にアサヨ峰をピストンし、明日は今シーズン予約制の鳳凰小屋に飛び込みで宿泊をお願いし、3日目に御座石に下りる
→最初からこういう計画にしておくべきだったが、3日目はカミさんが車を使いたいとのことで1泊2日の計画にした。カミさんは、車がなくてもなんとかするので無理して下りなくても良いと言ってくれたが、そう自分勝手も続けられない
という訳で、アサヨ峰を諦め、顔を洗って出直すことにした。そう決めてしまうと、何だかすっきりした
小屋に到着すると、早速一人宴会。もっともらしく逡巡して腹を決めたが、早く飲みたかっただけかも(笑)
早川尾根小屋はかつて営業小屋だったが、現在は休業中で避難小屋として無料開放されている。小屋の中は、古い避難小屋にありがちな薪ストーブを炊いたような臭いや、湿っぽい土間の臭いなどがしていた。しばらくドアと窓を開けて換気したが臭いは去らないので、外のベンチで日向ぼっこしながら宴会開始。肌寒いので、焼酎を熱々のお湯割りにして、持参したおつまみでちびちびとやる
小屋の前のテン場。気持ちの良さそうなテン場だが、寒いので小屋で泊まることに。
Evianの330mlのスリムなペットボトルに詰め替えた焼酎は、夕食時用に3分の1を残し、小屋へ入る。日が陰りだすと小屋内は寒く、インナーテントを張って寝ることに。寒さ対策に加え、先日の白峰南嶺の際に大門沢小屋でヤマネに頭をモソモソされたので、小動物対策も兼ねた(笑)
水場は生きていて助かる。ここで水が調達できるので、鳳凰小屋ではここまでの道中に必要な水だけを足した。本当にありがたい。テン場の下にはトイレもあり利用できた。
夜は小屋内のテントの中でモンベルの#0のシュラフを使ったが、それでも少し寒く何度か目が覚めた。年を取ると寒さには勝てない。ダウンハガーのジャケットも持ってくるべきだった
翌朝、のんびりと6時に小屋を出る。諦めたアサヨ峰に朝日が当たり、モルゲンロートに輝く。30分早く小屋を出立すれば、広河原峠の手前のピークからモルゲンロートに輝く北岳をバットレスを眺めることができたな・・
高嶺へ戻る途中にアサヨ峰へのギザギザの稜線を目に焼き付ける。小屋は手前のフラットな尾根の写真中央やや右あたり。尾根の向こう側斜面なので見えない。それにしても、あのギザギザの尾根は、昨日だろうと今朝だろうと、やはり厳しかったな。無理しなくてよかった。右奥は甲斐駒ヶ岳
今日も八ケ岳がきれいだ。原村のあたりは雲海。先週は稜線を白くしていた八ヶ岳の雪もほぼ消えたようだ
白鳳峠まで戻ってきた。標識の裏側にはクマさんのいたずら。ここから高嶺への登り返し
高嶺に登り返した。雲海の上に浮かぶ富士山
冒頭の写真。何度見ても天空の稜線は素晴らしい。来シーズンは入山規制が解かれ再訪できるといいな
高嶺山頂で心と時間に余裕ができたのでお湯を沸かしてコーヒータイム。山でのんびり景色を愛でながらコーヒーを飲むのは久しぶりだな。最近、一杯いっぱいの計画を立てて、ゆとりがない山行が続いていた。アサヨ峰を諦めたことで、ゆとりの大切さに気付かされた
高嶺を離れる前に白峰三山から甲斐駒ヶ岳までのパノラマ撮影
さぁ、赤抜沢ノ頭と地蔵に戻ろう。ここからのアップダウンは大したことない。花崗岩の白い山肌が別世界を思わせる
北アルプスの燕岳も花崗岩の白い奇岩が多くイルカ岩が有名だが、手前の岩はマッコウクジラに見える
地蔵まで戻ってきた。山頂の代替ポイントで自撮り
賽の河原の下りは、雪山の下りと同じように速い。どんどん飛ばして大股で下りられる。砂地がいいクッションになって膝へのダメージがない
鳳凰小屋まで下ってちょっと早めのお昼休憩。棒ラーメンとカット野菜、半分の厚さにスライスした切り餅を投入して3分で出来上がり。体が温まる
小屋は11月2日の宿泊まで営業、スタッフは小屋締め作業に忙しそう。「今シーズンのコロナ下での営業、ありがとうございました。来シーズンもよろしくお願いします」と声をかけた
ここから下山に必要な分の水を足して、鳳凰小屋を後にする。御座石鉱泉には午後2時半前に下山。下りはごみを拾いながら歩く心と時間のゆとりがあった
今回は、ゆとりの大切さに気づかされ、自分の山行計画の立て方について反省させられた。残念ながら、今シーズン目標としていた百高山95座は達成できず、94座で終わることとなったが、1座を失ったことを補って余りある気付きを得たように思う