北ア 赤岩岳&赤沢山。滝雲にブロッケン(2020/10/10-11)

山の記録

2020.10.12 18:12

二週続けて上高地へ。前週は社会人の息子の北アルプスデビューにお付き合い。今回は百高山ハントに戻って、赤岩岳と赤沢山へ。二週続けて同じ山域へ来るのは自分としては極めてまれなこと。

実は息子に今回の百高山ハントにつき合わってもらうことも考えたのだが、最初の北アが赤岩岳と赤沢山では・・と考えて、北アのみならず日本を代表する山の一つである超メジャーな槍ヶ岳に連れて行った。正解だった。今回の山に連れてきていたら、北アとはこんなところかと嫌になっていただろう

次々と山小屋が小屋締めしつつあり、山にとって今シーズンも残りわずか。3000m前後の稜線が雪で白くなるのも間近だ。百高山ハントも時間との闘い。今シーズン中に、あといくつ取りに行けるだろうか。晴れの予報なら果敢に出かけたいと思っていた

ところが、台風14号が列島の南海上を通過した。しばらく山はダメかなと諦めかけていたら、山専門の予報サイトでは、東海・関東を通過した日曜日は、晴れそうな予報になった。という訳で二週連続の登山。しかも同じ領域に向かった

前週に息子と出かけた槍ヶ岳へと続く通称「表銀座コース」にあるヒュッテ西岳から撮影。西岳から槍ヶ岳へと続く東鎌尾根(ひがしかまおね)。尾根の一番低くなった部分を鞍部(あんぶ)とかコルとか呼ぶが、東鎌尾根のコルは「水俣乗越」(みなまたのっこし)と呼ばれている

冒頭は水俣乗越から雲が流れ落ちる滝雲の写真。滝雲にはこちらの西岳の影が映る影西岳が見られた。そして、写真中央やや下に虹色の半円のような光が見える。ブロッケンと呼ばれる現象だ。実はこのブロッケンは私の影。私の背後にある太陽の朝陽が私にあたり、それが前方の雲に反射してこのような像になる

私にとっては人生6度目の山でのブロッケンとの遭遇。最近では、8月のお盆明けに出かけた裏銀座コースの野口五郎岳山頂で遭遇している。短期間に立て続けにブロッケンを見ることができるとは、何とラッキーな!

まずは上高地の河童橋。マイカー規制されている上高地へは、シャトルバスに乗り換えるかタクシーでアクセスすることになる。実はさわんど駐車場に到着した9時半ごろは雨だった。覚悟はしていたものの、ちょっとブルーな気持ちでザックカバーをし、傘をさしてバスターミナルまで100mほど歩いた

ところが、バスで釜トンネルを抜けると雨があがっているではないか。上高地についても雨は降っておらず、濡れた傘をビニール袋に入れて、ザックに括りつけてすすむ。木の枝から雫がぽたぽた落ちてくるので、ザックカバーはそのままにし、泥はね対策としてスパッツという膝までを覆うカバーをつけた

さすがに台風が通過する土曜日は、キャンセルした登山者や旅行客が多かったようで、紅葉シーズンにも関わらず人出は少なく、ひっそりとしていた。一週間前に比べて、河童橋の背後の木々も少しずつ色づき始めていた

上高地から林道へ入ると、木々の紅葉はさらに進んでいた。来週末はこのあたりもピークになるだろう

どんよりとした空のもと、今宵の宿の槍沢ロッジに到着。上高地から四時間、午後二時半に到着。湿度が高いのと気温が意外と高かったので、ここまでにしっかり汗をかいた。槍沢ロッジは沢がすぐ下を流れ、水が豊富にあるので、山小屋としては珍しくお風呂がある

入浴は午後三時から六時まで。手前の横尾山荘までは石鹸、シャンプーも使用できるが、このロッジのお風呂はシャワーも石鹸、シャンプーもない。それでも汗を流せるだけで、さっぱりする。大変ありがたい。早速湯上りに持参のつまみで生ビール、ロング缶を立て続けにグビグビ。あ~、極楽だぁ

小屋の向かいの斜面の紅葉。随分と紅葉が進んだ。今週がピークかな

ちなみに一週間前に同じ場所から撮影した写真がこれ。山の秋は駆け足で通り過ぎていく

翌朝、3時40分に早立ち。余計な荷物は小屋にデポさせてもらい、小型のアタックザックに必要なものだけを詰め込み機動力を上げる。小屋を出ると満天の星空、この日の好天を確信した。真っ暗な中、ヘッデンの明かりで進む。熊が気になるので、中国製の携帯ラジオでマイクロSDに録音した音楽をガンガン流す(2千円くらいでアマゾンにて購入したが、大変に優れもので、Bluetoothでスマホから音楽も流せるし、音質もまずまず)

このラジオは先日の南アの白峰南嶺でテスト使用済み。登山者の多い槍ケ岳への登山道なら不要なのだが、途中の槍沢大曲(おおまがり)から横道に逸れて、登山者がほとんどいない西岳方面に向かうので、念のための対策。表銀座コースなので本来は縦走登山者が多いのだが、表銀座コース上の多くの山小屋がすでに小屋締めしているので、もう歩く人はいない(実際、誰にも会わなかった)

大曲から水俣乗越に向かう急登をしこたま汗を流しながら登ってくると、夜が明け始めた。すごい青空だ。「ヤマテン」の天気予報を信じて出かけてきて良かった

水俣乗越に到着。北穂高岳の山頂に北穂小屋の明かりが見える。ここから見るととんでもないところに建っているのが良く分かる。まぁ、あの小屋のテラスに行けば、とんでもなさがより実感できるのだが・・

槍ケ岳から穂高連峰の尾根のパノラマ。朝日が当たり、モルゲンロートに輝いている。さらに、水俣乗越に着いたときは、水俣乗越の先に雲海が広がっていたが、その雲が乗越を乗り越えて流れてくるとは。これは想定外

水俣乗越からさらに登ること1時間強、ヒュッテ西岳に到着。冒頭の写真。滝雲に影西岳、そしてブロッケンまで現れるとは・・

動画を見ると、雲が流れ落ちる様子がお分かりいただけると思う

一週間前に息子と出かけた槍ヶ岳と宿泊した肩の小屋をアップ

ヒュッテ西岳から表銀座コースを赤岩岳に向けて進む。稜線から裏銀座コース方面を眺める。左奥には鷲羽岳(わしばだけ)、中央やや左奥に水晶岳。その右には野口五郎岳へと続く裏銀座コースの尾根

反対側には常念岳(じょうねんだけ)。常念岳の向こう側もずっと雲海。下界は曇りか雨だな。稜線だけがポッコリと雲の上に出ている

常念山脈の右奥には富士山や南アルプスの山並みがくっきりと見える

赤岩岳へと稜線を進むと、ブロッケンもついてくる。飛行機のブロッケンがどこまで飛んでもずっと見えるのと同じだ。まぁ、自分の影だからね、ついてきて当たり前なんだけど。奥の稜線は、新田次郎の「孤高の人」などの山岳小説に出てくる槍ヶ岳の北鎌尾根(きたかまおね)。右端が独標で、穂先の右下の平らなところが北鎌平(きたかまだいら)

赤岩岳へと続く稜線。その左には双耳の鹿島槍ヶ岳から白馬岳への稜線が、その左には立山連山と剱岳が雲に浮かんでいる

ここが赤岩岳の取り付き。灌木の枝の赤いリボンが目印。ここからは滑りやすい急な斜面を木の枝を掴みながらよじ登る

赤岩岳山頂の三角点。赤岩岳、2769m。百高山91座目。奥には穂高連峰が見える

三角点の石柱にカメラを乗せて北鎌尾根をバックに自撮り。あまりの素晴らしさに顔が自然とほころんでる

赤岩岳の山頂で朝食。槍沢ロッジで用意してもらったちらしずしの弁当をいただく。ブロッケンの私も朝食中

表銀座コースをヒュッテ西岳に向けて戻ってきた。ここまではすこぶる順調で、予定より早い進行だ。ヒュッテの周囲にロープが張ってあるが、小屋の横を通って先のテン場(砂地の部分)へ行かないと、次の赤沢山に行けない。ササっと通過させてもらう

テン場から槍沢(写真中央)と槍ヶ岳。槍から右手前につながる尾根が東鎌尾根

槍沢の中腹には天狗池へと続くトラバース路が見える。先週通った道。今日も天狗池にはきれいに逆さ槍が映っていることだろう

テン場の先までやってきた。一番奥まで進む

先端にあるこの岩の右側から下りていく。岩の下を反時計回りに巻くように藪漕ぎして進む。登山道はなく、百高山を目指す人たちが歩いた跡がうっすらとトレースとして見て取れる程度

一本目のお助けロープ。右の黒いのはカメラのひもが映ってしまったもの。トレイルには赤テープが巻いてある。ここからロープを伝って滑りやすい急斜面を劇下り

一本目のロープが終わると、赤ペンキや赤テープが注意喚起するようにあり、写真の中央にあるロープ沿いに藪漕ぎしながら急斜面を下りるルートに誘導する。松やにが手ぶくろや服にくっつく。事前の調査で頭に入れておいたのだが、写真の右側の崖にもロープがあり、そちらを下りてしまった。2本目の長いロープが終わった所から、コルに向けてちょっと危なっかしい急斜面のトラバースを登り返して藪漕ぎルートに合流した。帰りは写真のロープ沿いに藪漕ぎしながら登ったが、どっちもどっちだな。藪漕ぎルートは滑落の危険がないだけ、安全なルートではあるが・・

こちらが私が下りてきた崖の写真。命のリスクはこっちの方が高いが、藪漕ぎの鬱陶しさはない

コルからは細い尾根を藪漕ぎしながら登る。登りきると緩やかな稜線歩きになる。こちらも藪漕ぎがあるが、南プスで出くわすような程度の藪漕ぎだ。右奥の高いところが赤沢山の山頂

山頂には三角点とケルン(石積みされた円錐状の目印)があるだけ

山頂からの東側のパノラマ写真。左端の西岳から表銀座の稜線、中央やや右に常念岳、その右に蝶ケ岳(ちょうがたけ)

西側半分のパノラマ写真。左端の前穂高岳から右端の北鎌尾根まで。藪漕ぎを差し引いても素晴らしい眺めだ。だけど藪漕ぎの果てにガスで眺望なしでは報われない。この山に来られる人は、よくよく天気予報をチェックし、好天の日を選ぶべし

さて藪漕ぎしてヒュッテ西岳まで戻り、水俣乗越に向けて下山途中。本日歩いた尾根をパノラマ撮影。左端の赤岩岳、中央にパスした西岳、右にはV字を越えて進んだ赤沢岳

水俣乗越からの下り、行きは真っ暗だったので、紅葉具合が分からなかったが、山腹は今が旬だね

かなり下りてきて赤沢山方面を見上げる。このあたりの紅葉もきれいだ。さわんど駐車場行きの16:15発の最終バスを捕まえるべく、飛ばして下りてきた。槍沢ロッジで荷物を回収して、横尾山荘まで飛ばす。横尾でバスに間に合うことを確信し、バスにちょうど間に合うようにペースダウン

徳沢では「よりみち食堂」に寄り道してソフトクリーム

最後に河童橋から穂高連峰を望むも雲がかかり始めていた。梓川はいつもの青さではなく、雨で増水して少し濁り気味。それはともかく、今回も本当に素晴らしいピークハントができたことに感謝感謝!

今回の山行は息子との槍ケ岳山行以前から計画していたもの。ヒュッテ西岳に泊って赤岩岳と赤沢山を取りに行くつもりだったが、ヒュッテ西岳がコロナの関係で早々と営業を終了してしまったので、代替案としてババ平にテン泊して出かける案を準備していた

私の足では、1泊2日でやるのはキツイので、2泊目は徳沢まで下りてテン泊する計画だったが、台風の影響で天候が読めない。雨の中でのテン泊など考えられない軟弱なシニア登山者としては、あっさり計画を変更して、槍沢ロッジを利用するプランBに変更。お風呂にも入れ、汗かきの私には、汗を流せるだけで1日目の疲れが吹っ飛ぶ

赤岩岳まではすべて快調で気分は上々。水俣乗越を流れる滝雲にブロッケン現象も現れ、最高だった。ところが、赤沢山に突入した途端に気分はブルー。藪漕ぎにやられた。そもそも一般登山道のない山。この山に来るのは百高山狙いの人くらい。百高山の中でも同率98位で下から2番目のブービー。どうしてこの山を百高山に選定したのか・・・。他にもここより標高の高い山はいくつもあるのに

難所と言われる劔岳のカニの縦バイ・横バイの方が、比較にならないほど安心して登れる。百高山に選定されているがゆえに、そこそこ登山者が入るのだから、もう少し整備した方が事故のリスクが減ると思う。選考した関係者(団体)には善処をお願いしたいと思うが、お門違いだろうか

ただ、眺めは素晴らしい。北ア南部のへそのような位置にあるので、前後左右には圧巻の眺望が広がる。裏を返せば、あの藪漕ぎの結果がガスでは報われない。この山に行かれる方は、くれぐれも天候を十分に考慮した上でお出かけてください

なお、今回の山行のコースやタイムなどの詳細については、以下のヤマレコの記録を参照されたし

山行記録: 赤岩岳、赤沢山。滝雲とブロッケンに遭遇 ☜ ヤマレコの記録

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