北ア南部の名峰 秋本番の槍ヶ岳へ(2020/10/02-03)

山の記録

2020.10.05 11:39

3月の日光白根山の雪山以来、半年ぶりに息子と山に出かけた。社会人になってしばらくしてから山を始めたので、息子にとって今年は3シーズン目になる。これまで奥秩父、八ヶ岳、中アなどに一緒に出掛けたが、以前から上高地か室堂のメジャーな登山口から北アルプスデビューにお付き合いすることを約束をしていた。天候やコロナや息子の休暇取得の関係で、このタイミングでの実現となった

冒頭写真は、標高3060mにある槍ヶ岳山荘、通称「肩の小屋」から槍ヶ岳の穂先を望む。標高3180m、日本第5位の高さもさることながら、その名の通り槍の穂先のように鋭く尖った山容で、富士山と同じように遠くの山からもすぐに見つけられる北アルプスどころか日本を代表する山の一つだ

「大槍」とも呼ばれる山頂の左に尖っているのが「小槍」。大槍には鎖や鉄製の梯子などが整備され、一般の登山者も山頂に立つことができるが、小槍は一般登山者には登れない。アルパインクライミング(ロッククライミング)の技術を習得した者だけが登れる

♪アルプス一万尺 小槍の上で アルペン踊りを さあ踊りましょう♬

この歌に出てくる「小槍」がまさに写真の小槍。一尺は約30センチ、「一万尺」とは約3000m、つまり標高3000mの小槍のてっぺんでアルペン踊りを踊ろうという歌詞だ。大槍のてっぺんならまだしも、小槍の山頂は人が数人立てるかどうかの広さで、とても踊れたものではない(笑)

まずは上高地へ向かう。大正池に映る穂高連峰。こちらからお願いしたわけではないが、タクシーの運転手さんが気を利かして写真撮影のために車を停めてくれた。上高地は今から50年くらい前にマイカー乗り入れが規制され、松本と高山を結ぶ国道158号線の安房峠(あぼうとうげ)すぐ下の釜トンネルのゲート先はバスやタクシーしか入れない

関東方面からは松本ICから158号線を走り、沢渡(さわんど)温泉郷にある「さわんど駐車場」に車を停め、シャトルバスかタクシーに乗りかえる。関西方面からは高山から158号線でアクセスして安房トンネルの手前にある平湯温泉の「アカンダナ駐車場」に車を停めて、同様にシャトルバスかタクシーに乗り換える

当日は金曜日だったが、紅葉シーズンの真っ盛りだったため、多くの登山者やハイカーが押し寄せ、朝5時半にさわんど駐車場に着いた時には、さわんどバスターミナルに長蛇の列ができていた。バスターミナルすぐ下の市営第三駐車場は一杯で入れず、やむなく市営第一駐車場方面に向かい、梓駐車場に車を停めてタクシー待ちの列に並んだ(駐車場はどこも一日700円)

6時の始発バスを当てにしていたが、とても乗車できそうになかったのでタクシーにしたものの、上高地へピストンするタクシーがなかなか戻ってこず、結局6時半過ぎにタクシーに相乗りできた。タクシーは4600円の定額制だが、4人で乗ればバスの往復割引切符の片道料金と同じ金額になる(1150円)

上高地定番の河童橋。梓川にかかる吊橋でその奥に奥穂高岳を中央に、右には前穂高岳へと続く吊尾根、左へは西穂高岳へと続く稜線が見える。二転三転した天気予報は快晴となり、最高の登山日和となった

河童橋から下流側の焼岳を望む。上高地へ来る途中の大正池は、この焼岳が大正時代に噴火して梓川をせき止めてできたもの。焼岳は今でも山頂直下の数か所で噴煙がシューシューと噴いている

上高地から最初の経由地である明神館へ向かう途中、明神岳が左手の梓川越しに見える。明神岳は一般登山道がないので、アルパインクライミングの人たちが入り込む山域だ

明神館の近くからの明神岳。明神岳は刻々とその表情を変えていく

上高地や明神館のあたりの紅葉は始まったばかりで、この1-2週間で見頃を迎えるだろう

次の経由地である徳澤園(とくさわえん)近くまで来ると、明神岳の姿はさらに変化する。手前は梓川

徳澤園のテント幕営場。草の上で気持ちよさそうなテン場だ。一度ここでテントを張ってみたい。テン場の向こうには霞沢岳(かすみさわだけ)が見える。テン場を挟んで徳澤園と徳沢ロッジの二つの山荘がある。徳沢ロッジは改修されてきれいになり、シックなロッジになっている。徳澤園は井上靖の小説「氷壁」に出てくる山荘で、いつも賑わっている。両方ともホテルのような部屋もあり、登山客だけでなく一般の観光客の利用も多い

徳澤園から約1時間、横尾山荘に到着。上高地からここまでは平坦な林道だが、ここまで来ると岳人の世界。ハイカーの数はぐっと減る。この山荘もお風呂がある快適な小屋。多くの登山者がここで休憩し、槍ヶ岳方面や穂高方面に進む

横尾山荘前にある横尾大橋。紅葉で有名な涸沢(からさわ)や穂高に向かう人は、こちらの橋を渡っていく。紅葉シーズンは、涸沢・穂高方面に向かう人が多い

横尾山荘から梓川沿いに直進して槍沢ロッジに向かうと、登山道らしくなってくる。槍沢ロッジを通過してババ平のテン場に到着。色づき始めている。あと一週間くらいでピークだろうか。天候がうまくいけば、次回も上高地にきて、ここをベースキャンプにして幕営し、軽装で西岳方面を目指す計画だ

大曲(おおまがり)から槍沢を望む。この大曲から斜度がきつくなる。中央のV字の右奥に目指す槍ケ岳が隠れている

天狗原への分岐まで上がってきた。二日目の予報は午前中晴れる予定だったが、曇りの予報に変わってきたので、二日目の下山途中に予定していた天狗池への往復を初日に変更することに。ナナカマドの紅葉の中を突き抜けて進む

前の写真のナナカマド帯までくると、槍の穂先が視界に入る。この先にはもっと楽しみが・・

天狗池に映る逆さ槍。風も穏やかで割ときれいに逆さ槍が映った。初日に変更して寄り道した甲斐があった

ここで息子とツーショット。ここに寄り道する人は少なく、静かに絶景を楽しめる穴場

中房(なかぶさ)温泉から北アの女王と呼ばれる燕岳(つばくろだけ)に登り、大天井岳(おてんしょうだけ)、西岳と尾根をつないで縦走してくるのが通称「表銀座」。その最後が槍へと続く東鎌尾根(ひがしかまおね)。その東鎌尾根の稜線美が素晴らしい

息子にとっては、初めての北ア、初めての槍ヶ岳。見とれるのも分かる

天狗原の分岐に戻り、急登の再開。急登を登りきり、比較的緩やかな坂道を進むと、槍ヶ岳を開山した播隆上人(ばんりゅうしょうにん)の窟屋がある。そこから登山道は岩のゴーロ帯に変わる。槍まであと少しと言いたいところだが・・

肩の小屋が見えるが、最後の試練が待ち受ける。ジグザグと小屋直下の壁を上がっていく。頭の中は「あと少しでビール」

振り返れば常念岳のきれいな姿。手前稜線の左端が西岳、V字を挟んで赤沢山へと続く。あそこに用があるので、近々この山域を再訪するつもり

冒頭の写真。小屋の前から撮影。股関節の痛みが再発した息子は、穂先に登る余裕なし。青空のこの日に登っておきたかったけど仕方ない。小屋にチェックインして、早速ビール・焼酎を楽しむ。息子はアルコールを飲まないので、オヤジ一人でグビグビ

持参の焼酎300mlが空になると、日没の時刻に。小屋を出てみると、反対側の西鎌尾根方面は雲海だった

雲海に浮かぶ乗鞍岳とその奥に御嶽。なんとも素晴らしい天気に恵まれた。そろそろ夕飯の時間だ

二日目の黎明の時間帯。左の黒い部分が穂先のシルエット。部屋の窓から眺める贅沢

遠く浅間山の右からご来光。手前は常念山脈の稜線。右が常念岳、左が横通岳。さて朝食を食べに食堂へ

穂先に向かう。足下に肩の小屋、その背後に岐阜の名峰笠ヶ岳

最後の梯子。ビクトリーロードを息子に譲る。山ガールさんはタイツにスカートで穂先に向かわないように。ここは男性同様、パンツ姿でお願いします

山頂に居合わせた方に撮っていただきました。ここなら何とかアルペン踊りが踊れる

槍ケ岳から穂高へと続く縦走路。手前稜線の先端の南岳から大キレットと呼ばれるV字を越えていく難路。奥は穂高連峰

前穂高岳の北尾根のギザギザ。一般登山道ではなく、バリエーションルート。ペンキの印も鎖も梯子も何もない。自らルートファインディングしながら、よじ登っていく。もう一度出かけられるかな・・。前穂のとんがりピークの右に北穂の山影

左側の奥穂からジャンダルムへと続く稜線。西穂高岳へと続く。一般縦走路としては、北アの中でも最難路の一つ

名残は尽きないが、下りよう。穂先は渋滞や事故を避けるため、登りと下りが矢印で一方通行になっている。とはいえ、万一、小石を落とそうものなら下の登山者を直撃する。ヘルメット必須、落石厳禁

難しいところはあと少し。ジムでボルダリングを少しやったことのある息子曰く、「穂先へのクライミングはボルダリングとは全く異なり、緊張感やスリル感がハンパなかった」とのこと。そりゃそうだ。ジムでマットに落ちるのとはわけが違う。即あの世行きだからね。いい経験になったようで何よりだ

7時半に小屋を出立。お世話になりました。息子にとって初めての山小屋泊。コロナのおかげで、大幅に定員削減して営業しているので、思いのほか快適な滞在だったようだ。まぁ、そのうち劇混みの山小屋の洗礼を受けるだろう

草紅葉や低木の紅葉を愛でながら快調に槍沢を下る

苔むした岩を流れる沢。夏ならじゃぶじゃぶと頭から冷たい水をかぶるところだ

平坦な登山道まで下りてきた。一ノ俣を過ぎて槍見河原で一瞬見ることのできる最後の穂先にサヨウナラ。息子と一緒に素晴らしい槍ヶ岳を楽しむことができた。感謝感謝!

久々に上高地から槍沢ルートの王道で槍ヶ岳に登った。3年前に北鎌尾根を登った際に下山で使ったことはあるが、登りで使うのは35年ぶりくらいだろうか。何度登ってもキツイ登りだ。ここを重いテン泊装備を担いで登る人たちが信じられない。年寄りは小屋を利用させてもらって楽して登るに限る。平日の空いた小屋を利用できるのだから

さて、次回は百高山ハントの続きに戻ろう。平日の天候が許せばということになるが、できれば今シーズン中に95座まで到達しておきたいと思っている

なお、登山ルートやタイムなどの詳細については、以下のヤマレコの記録を参照されたし

山行記録: 槍ヶ岳。北アデビューにお付き合い。紅葉シーズン快晴の登山日和 ☜ ヤマレコの記録

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