北ア 烏帽子岳&野口五郎岳(2020/08/17-18)

山の記録

2020.08.21 15:27

前日に車を5時間飛ばして蓮華温泉登山口に行き、小蓮華山と白馬岳に日帰り登山した。折角、この山域までやってきたので、このまま帰るのは口惜しい。という訳で、蓮華温泉に下山後、2時間半下道を走って信濃大町のビジネスホテルに泊まり、もう一つ北アルプスの山歩きを楽しむ計画にした

信濃大町から車で30分程で着く七倉温泉に車を置き、高瀬ダムから北アルプスの「裏銀座コース」と呼ばれる稜線を部分的に歩き、高瀬ダムに周回することにした。裏銀座コースは高瀬ダムから北アルプス三大急登の一つブナ立尾根を上がり、烏帽子岳から野口五郎岳、鷲羽岳、三俣蓮華岳、双六岳へと縦走し、さらに西鎌尾根で槍ヶ岳へ進んで上高地へ下りるコースだ。因みに、歌手の野口五郎の名前は、野口五郎岳から命名されている

二つの山行合わせて3日間山を歩くことになる。同じ3日間なら、この裏銀座コースを歩き通すか、前日の白馬岳から唐松岳、五竜岳、鹿島槍ヶ岳へと後立山連峰を歩く方が、北アの秀峰を眺めながら涼しい稜線歩きを楽しめるのだが、入り口と出口が違うので車の回収が面倒になる。という訳で、登って下りてを繰り返す山行を二つやることに

今回の山は、withコロナで初めての山小屋泊。夏の山小屋と言えば、どこも劇混み。まして北アルプスはすし詰め状態で三密そのもの。今年は、感染防止対策が難しいとして営業を取りやめた小屋もある中、受け入れ人数を大幅に縮小して営業する小屋も多い。営業しても食事の提供をやめた小屋もある

今回のコースでは、烏帽子小屋と野口五郎小屋があるが、両方とも完全予約制で、烏帽子は宿泊のみ、野口五郎は夕食の提供がある。荷物を減らすため、野口五郎小屋を利用することにし、蓮華温泉へ出発する前に予約を入れると、ラッキーなことに予約できた

冒頭の写真の右端が野口五郎岳。左端が真砂岳。雄大な山塊だ。2日目に竹村新道で湯股温泉へ下山する尾根から撮影。烏帽子から野口五郎、真砂岳へと進むこの稜線は、北アルプスというより南アルプスの稜線に似ている。岩稜帯が多い北アルプスの山々と異なり、たおやかなどっしりとした山容で南アルプスの山を思わせる。下りに使った竹村新道は、通る人も少なく、そのせいか多少荒れた部分もあり、南アルプス的な感じがした。まぁ、あくまで個人的な印象なのだが・・

まずは1日目の登山口である高瀬ダムから出発。福井の九頭竜ダムと同じようにロックフィルダムだ。ダムの上のこの道路までタクシーで上がってこられる(マイカーは七倉温泉で進入禁止)。道路の右側がロックフィルの斜面で、タクシーの運転手さんによると日本最大のロックフィルダムとか

七倉温泉のゲートは朝5時半にオープンする。お盆休み明けの月曜だからか、15分前に到着すると、ご年配の方一人しかいない。始発のタクシーに相乗りして高瀬ダムまで来た。乗車約15分、料金約2400円。歩くと1時間半程度かかる。タクシー待ちでタイムロスすることなく幸先の良いスタート

前方のトンネルを抜けていく。工事開始前なので、トンネル内の照明は点灯されていない。My ヘッドランプで進む(入り口のプラスチックケースに懐中電灯が7-8個入っていた)

吊橋や丸太橋を渡り、護岸工事用の道路の横を歩いてブナ立尾根の登山口へ向かう。登山口には12番の標識がある。ここから烏帽子小屋までカウントダウン。登山口には「ここから先水場なし」の看板。横を流れる沢の水を汲む。冷たくておいしい。ついでに朝ご飯のおにぎりを食べて出発

先を歩かれているのが、相乗りした年配の方。この方もコロナで久々の登山とか。東京から登山のための夜行バスで七倉温泉に来たとのこと。例年ならバスの予約がなかなか取れないが、乗客は10人くらいで、七倉で下りたのはこの方だけだったそうだ。裏銀座コースを歩き、双六岳から新穂高温泉に下山する3泊4日の計画だとか

ブナ立尾根の急登を登ってくると、樹間から針ノ木岳(左)と蓮華岳(右)が見え始めた。針ノ木小屋は営業しておらず、扇沢からアクセスする針ノ木雪渓も入山禁止になっている

ブナ立尾根を代表するような立派なブナの木。小屋まではあと一息のところまで上がってきた

烏帽子小屋に到着。小屋は稜線を越えて、ブナ立尾根とは反対側に少し下ったところにある。ここでザックをデポさせてもらい、カメラ・水・ヘルメットだけをもって烏帽子岳に向かう。片道40分くらい

行きも帰りもこの前烏帽子岳を越えていく

烏帽子岳2628m。日本200名山の一つ。名前は山の形が烏帽子に似ているから。烏帽子岳という名前の山は、日本中にとてもたくさんある

登山道横にはコマクサがまだ咲いていた。他にはトモエシオガマやリュウキンカなどが咲いていた

烏帽子の麓まで来た。右肩の緑の中に道が見える。回り込むように山頂へ向かう

鎖が設置されており、岩には足置きが作ってある。まずはまっすぐ上に登る

その後、上の緑の直下を左へトラバースする

山頂に居合わせた若者と撮り合う

本当の山頂の直下から一つ前の写真を撮った山頂標を見下ろす。左下に出発点の高瀬ダムが見える

本当の山頂直下から立山、剱岳を望む。五色ケ原も見える。あちらの山域も再訪したい

真下には四十八池が見える。その先が、赤沢岳から不動岳、船窪岳へと続く稜線。不動沢の崩壊が激しく、今年は通行止めになっている。写真右奥が蓮華山(300名山、百高山)。昨日登った蓮華温泉とは関係ない。写真ほぼ中央奥が針ノ木岳(200名山、百高山)。針ノ木岳の左肩稜線のはるか奥に前日歩いた小蓮華山から白馬岳の稜線が見える

小蓮華山から白馬岳の稜線のアップ。アップにすると手振れが如実に表れるな。カメラは正直だ

烏帽子小屋へ戻る際に右手方向の眺め。一番奥が薬師岳(百名山、百高山)。その手前の尾根が赤牛岳(200名山、百高山)から右下の黒部湖へと続く読売新道の尾根

赤牛岳から左方向に続く尾根。中央の双耳が水晶岳(百名山、百高山)。その名の通り、山頂直下の岩肌に水晶が薄い層になっている

烏帽子小屋まで戻ってきた。小屋前のイワギキョウの群生。花は終わりかけている

イワギキョウ越しの赤牛岳と薬師岳。小屋前でこの眺めを楽しみながらコンビニカツサンドの昼食

これから進む稜線。先は長い。まずは左の三ツ岳へ進み、写真中央へピークを越えていく。一番高いのが野口五郎岳で、小屋は左手前下にある

三ツ岳への稜線を登っていると、槍ヶ岳が見えてきた。穂先から右に続く稜線が西鎌尾根で、裏銀座コースの最終部分。左が北鎌尾根。北鎌尾根の後方に北穂高岳の頭とその左に前穂高岳の北尾根のギザギザが見える。上空に雲がかかってきた

三ツ岳山頂に残った青空も雲に飲み込まれそう

西側の赤牛岳や薬師岳の上空は雲に覆われ、細かい雨粒がこちらに流れてきた。レインウェアを着るほどでもない

三ツ岳2844.8m。百高山82座目。この山行の一つ目の目標達成。登山道は三ツ岳の山頂を巻くように少し下を進むが、ルートを外れて尾根伝いに三ツ岳山頂にやってきた。稜線のトレースは見て取れるが、高山植物を踏まないように細心の注意が必要

三ツ岳山頂から登山道へ復帰。コースは二つに分かれる。稜線コースはお花畑コースより8分時間を要する。大した差ではないが、雨がひどくなると困るので、お花畑コースを進む

まっすぐ進めば稜線コース。三ツ岳西峰を通って進む。稜線コースは次回にでも

お花畑コースの花は終盤。黄色いのはウサギギク

ヨツバシオガマも終わりかけ

ミヤマキンバイはまだ元気

何とチングルマがまだ咲いていた。これで満足

歩いてきた尾根を振り返る。上空は青空になったり雲に覆われたりと忙しい。でも細かい雨粒は流れてくる。狐の嫁入りみたいだ

前方の無名峰を越えれば小屋のはず。本日最後の登り

無名峰を越えて少し進むと野口五郎小屋に到着。雨にならなくてよかった。右上の野口五郎岳は明朝向かうので、今日はここまで。この日の小屋泊者は4人だけだった。棚に8番まで番号が振ってある各部屋に布団が二組のみ。この日は一人一部屋の個室状態だった

ここはカレーの夕食を提供してくれる。でも夕食までに缶ビール2本と持参した焼酎300mlをつまみでぐびぐび、ちびちびとやる

夕食は6人掛けテーブルの対角線に座ったお姉さんと談笑しながらカレーを頂戴した。感染対策のマナー上、あまりお話ししてはいけなかったかな、と反省

翌朝、濃いガス。20分ほど遅らせて5時前に出立。山頂直下でご来光。素晴らしい。ガスが取れるとはラッキーだ

野口五郎岳山頂2924.5m。百高山83座目。二つ目の目標達成。百名山の83座と同数になった。標識の間の奥に槍ヶ岳

標識の右側にはワリモ岳、鷲羽岳(百名山、百高山)、双六岳(百高山)へ続く裏銀座の稜線。双六岳のすぐ左に笠ヶ岳(百名山、百高山)の三角錐の頭が見える

笠ヶ岳の左には乗鞍岳とその奥に御嶽山が見える(ともに百名山、百高山)

その左には槍ヶ岳とその背後には穂高の山々(百名山、百高山)。お分かりのように、この周囲は百名山、百高山が集中している山域だ。何せ日本の屋根と呼ばれる北アルプスだからね。今回の周回では3つの百高山を踏破しに来た。因みにこのあたりの百名山はすべて登り尽くしている。このあたりで残っている百高山は、祖父岳と蓮華岳の2座

おやおやブロッケン現象だ。水晶岳との間に湧き上がってきたガスに、太陽の光を受けた私の影が映る現象。私にとっては5度目のブロッケン。私が動けば影も動く。ガスが薄いので虹色にできる光輪が弱い。予期せぬご褒美

野口五郎の山頂でしばらく楽しんだ後は真砂岳に向かう。登山道は右下の山腹を巻くように進み、裏銀座コースは水晶小屋の方へ繋がっていくのだが、私は逸れて稜線伝いに進む

真砂岳山頂2862m。でも百高山の真砂岳はこの山ではない。同じ名前の立山の真砂岳北峰2861mが百高山。選者に選出基準を聞きたい。立山の真砂岳は2回行っているが、とりあえずこちらの真砂岳の山頂も踏んでおいた

これから進む竹村新道へ山頂からダイレクトに下りる。この稜線の前方のピークが南真砂岳。あそこに用があるので、竹村新道を下る

尾根伝いに進むのかと思ったら、この標識のところで尾根から左に巻いて部分的にトラバースするようになっていた

巻いた斜面には紫のトリカブト、橙のオニユリ、白いオンタデやショウマが群生していた。このあたりの登山道は細く、しかも谷側に傾いているので歩きずらい

崩落斜面のトラバース。足元はしっかりしており難なく通過できる。この先で尾根に復帰

崩落斜面の終盤にイブキジャコウソウの群生

尾根を進んで登り返すと湯股温泉晴嵐荘へ向かう標識がある。南真砂岳はこの標識のすぐ先。歩いて1-2分で、360度のパノラマ展望を楽しめる

南真砂岳2713m。百高山84座目。3つ目の目標達成。ここからも野口五郎岳に勝るとも劣らない360度のパノラマが望める。山頂標のすぐ後ろの赤茶けた尾根が硫黄尾根。その後ろには槍ヶ岳へ続く西鎌尾根(右)と北鎌尾根(左)

湯股への分岐標識まで戻り朝食。右の野口五郎岳から左の真砂岳、そこからこちらに進んできた稜線を眺めながら、野口五郎小屋が朝食として提供しているおにぎり2個、漬物、お茶を食す。食事をしていると、前日水晶小屋に泊ってちょうどやってきたお姉さんが標識通り進もうとしたので、南真砂岳の展望を楽しむようにおせっかい。彼女も寄り道して展望に満足

竹村新道はピンクテープもペンキの印もほとんどなく、ところどころハイマツやシャクナゲやササで登山道が覆われているが、基本は尾根通しで登山道は見て取れ、迷うことはない。なお、野口五郎小屋の若いスタッフが同じ日に下草を刈りながらこのルートで下山すると言ってたので、8月18日以降は登山道が明瞭になっていると思われる(下草が再び伸びるまで)

森林限界まで下りてきた

冒頭の写真。野口五郎岳から連なる雄大な山容。最後の見納めだ。素晴らしい稜線歩きだった。ありがとう!

樹林帯を黙々と進む。日差しもないけど風も遮られる、トレードオフだな

左の南真砂岳からぐっと下げて湯股岳に登り返してきた。身にこたえる。山と高原地図では湯俣岳の表示になっている。どっちが正解だろう?

湯股岳が竹村新道のほぼ半分。先は長いな・・

湯股岳山頂からは槍の見納め

ササが覆っている。藪漕ぎというほどではない。小屋スタッフのお兄さんが刈ってくれるでしょう。頭が下がる。感謝!

正面が硫黄尾根。右に流れるのが湯俣川、左奥に流れるのが水俣川

合流して高瀬川になる

竹村新道もあと残り少し。それにしても暑い!飛び込みたいくらいだ

湯股温泉晴嵐荘で温泉に入り(800円)、ここまでの汗を流した。最後は水を体にかけて冷やした。まだ10時過ぎ、朝風呂の時間だな。高瀬ダムまでの林道歩きに備えて、ここで半袖半ズボンにチェンジ。しばらく雨が降っていないので、ここからの渡渉3回は石の上をポンポンと渡れた。じゃぶじゃぶ進んでもこの日は脛あたりの水量だった。雨が降ると、膝、腿、腰と水量が上がるので、事前に確認が必要

エメラルドグリーンのダム湖を眺めながら湖畔の林道を歩く。ダム湖の奥に針ノ木岳が見える

最後にトンネル2本。トンネルの中は涼しい

高瀬ダムにもどってきた。高瀬川沿いに2時間半の緩やかな下り。晴嵐荘の管理人さん、2時間では無理だよ(山と高原地図のコースタイムでは2時間50分)

ラッキーなことにタクシーが待機していた。タクシーがいないと、ダム横の管理事務所前の公衆電話でタクシーを呼ぶことに(携帯はつながらない)。タクシーを待つことなく、七倉山荘へ即移動し再び温泉に入る(650円)。ごきげんな周回ができたことに感謝感謝!

山の最大の感染リスクである小屋泊がうまくいけば、山歩きはコロナとはほとんど無縁の世界。登山する側も気を遣うが、受け入れる小屋は不特定多数と接するのでもっと心配だろう。そんな中で、営業してくれている山小屋に心から感謝したい

ささやかながら、例の10万円を活用してクラウドファンディングを通じて山小屋支援の寄付をした。苦しいでしょうが、ぜひ続けていただきたいと切に願う

コロナが収まるまでは、山中泊するならテン泊と考えていたが、暑い夏にテントを担いで上がる自信はない。という訳で小屋泊を選択したが、多少不安が払拭できた。暇な隠居老人の特権を生かして、平日に小屋泊を利用してまた出かけたい

COVID-19については第1波、第2波を通して、感染の仕方などが徐々に見えてきた。油断をするわけでも、慢心するわけでもなく、十分に注意して行動しながらコロナ時世の山を模索していくつもり。小蓮華山、白馬岳の山行と共に、5か月ぶりに山を楽しむことができた

本登山に関するコースタイムや登山ルートなどの詳細情報は、以下のヤマレコの記録を参照されたし

山行記録: 烏帽子岳、野口五郎岳(ブナ立↑、竹村新道↓周回) ☜ ヤマレコの記録

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