COVID-19に思うことー10(最終回)

年寄りの繰り言

5月25日に緊急事態宣言が全面解除された。北海道や神奈川の状況を考えると、最後はちょっと「エイヤッ」という感じがしなくもなかったが、5月14日に解除された39県に続き、活動再開に向けて列島が動き出した。再開といっても一気に以前の生活に戻るわけではなく、有効な薬やワクチンが利用可能になるまでは、“with Corona”モードの活動再開だ。解除に伴い、政府からは段階的な経済活動のステップが示された

外出や観光については、北海道、東京、埼玉、千葉、神奈川との間の不要不急の移動は慎重に行うこととされ、都道府県をまたぐ移動は6月19日からとなる。尾張の実家と千葉の自宅を行ったり来たりして半々の暮らしをしており、3月下旬に自宅に来て4月上旬に実家へ行くという予定だったが、一連の騒ぎで移動がしずらくなり、自宅に留まったまま2か月が経過した

一人暮らしをする80代半ばの母親の様子を見に実家へ行きたくても、首都圏から地方の田舎へ行くと要注意人物のように見られたり、首都圏ナンバーの車で移動すれば、「自粛警察」などに嫌がらせされる可能性もある。実家への移動再開は6月19日以降にするつもりだ

(JR京葉線の舞浜駅。いつもディズニー客で混雑しているのだが、週末の午前10時頃にも関わらずほとんど人がいない。東日本大震災の直後にもディズニーは約1ヶ月休園したが、その時は地元の通勤・通学客や買い物客などでそれなりに人の動きがあった。この地区に来て13年目になるが、こんな閑散とした舞浜駅は初めてだ)

首都圏にも宣言解除が出され、ディズニーに隣接する商業施設イクスピアリは6月1日からの再開を決定した(当面は県内移動者を対象)。イクスピアリでは、薬局と歯科医と食品売り場(成城石井)の三店舗のみが営業しており、この日は散歩がてら昼食の買い出しに食品売り場にやってきた。徒歩圏ながらイクスピアリにショッピングや食事に来ることは滅多になく、本屋の丸善にのぞきに来るか、月一くらいでAMCに映画を見に来るくらいなのだが、それすらできなくて少々困っている。早く舞浜地ビールを片手に映画をみたいものだ

一方、トーキョー・ディズニー・リゾート(TDR)は未だ再開に関するアナウンスはない。周辺のホテル群は5月末まで休業中だが、こちらもTDRの方針待ちで、営業再開のアナウンスはない。政府方針では、6月18日まで都道府県をまたがる移動は原則控えるとなっているので、全国からファンがやってくるTDRとしては、最速でも6月19日までは再開できないだろう

仮に再開するとして、いわゆる「三密」をどう回避するのかという難題が控えている。予約制による入場者の制限をしたとしても、人気アトラクションには人が集まってしまう。こちらも小刻みに時間帯ごとの事前予約制にせざるを得ないだろう。ミッキーマウスやプーさんなどのキャラクターをどうするか?子供が寄ってきて抱きついてしまう。エレクトリカル・パレードは沿道に人が集まり、「密」そのものだ。何かうまい手はあるだろうか・・

日本最大ともいえるアトラクション施設、ショッピングや食事などの商業施設、巨大なホテル群、いずれも全国各地と同様に自粛の直撃を受けた施設だが、今のところ廃業に追い込まれたところはないようだ。顧客に安心・安全を納得してもらえる感染対策の見える化による実施が、経済活動の復活のカギとなるだろう

(イクスピアリの正面ゲートは閉じられたままで、左手のモノレール駅も閉鎖され、まったく人がいない)

さて、日本国内は緊急事態宣言を解除し、感染対策と経済再開のバランスをとる段階に移行したが、海外ではいまだに感染拡大が続くところも多い。現時点で日本への入国制限は111か国におよび、「鎖国状態」を継続しているが、海外から持ち込まれて一気に拡散した第一波を考えれば、入国制限の緩和は非常に難しい舵取りになる

政府はとりあえず6月末までは入国制限を延期する方針のようで、その後、ビジネス客→留学生→観光客の順番に入国規制を緩和するとしている。緩和する際には、空港や港の検疫体制の整備が不可欠だ。サーモグラフィーを利用した検温はいうまでもなく、万全なPCRなどの検査体制の確立、さらに入国者の追跡システムのようなものも必要ではないかと思う

追跡システムは議論を呼ぶことになるが、万一訪問者が感染していた場合(偽陰性など)の対応と、逆に訪問者が日本で感染してしまった場合に適切にケアを提供する両面から何らかの追跡の仕組みが必要だ。世界中の感染状況が収束しない限り、来年のオリンピック開催にはこのような仕組みが必要と思われ、この段階で仕組みを確立しておくことが肝要と考える

ところで、コロナ感染による単位人口当たりの死亡者数において、日本の数字が欧米に比較して著しく低いことが注目されており、日本の奇跡とも不思議とも捉えられているようだ。特に、日本政府の対策が、ロックダウンもせず、台湾や韓国のような優れた初動、満足な検査体制、隔離体制もなく、ことごとく後手に回り、適時適切性を欠いていたにも関わらず、死亡者数が少ないというところが謎のようである

政府は死亡者数の少ないことを「対策の成功」と自画自賛しているが、そんなことはあるはずもなく、対策の拙さを帳消しにする何かが働いたと考えた方がよい。いわゆる「Factor X」という何かだ。当初は人種差による遺伝子的なものではないかとも言われたが、米国においてはアジア系アメリカ人の死亡者が他の人種に比較して格段に少ないという訳ではない。単位人口当たりの死亡者数でいえば、アジア・オセアニアは欧米に比較して非常に少なく、白人の国であるオーストラリアやニュージーランドの方が日本よりも少ない。この事実からも人種差ではないと容易に想像できる

死亡者数におけるアジアと欧米の違いや、隣接するスペインとポルトガルの違いなどから、BCG接種の有無が要因ではないかとも言われているが、はっきりしない。上述のオーストラリアやニュージーランドではBCGの接種は行なわれていないにもかかわらず、死亡者数は欧米より格段に低く、日本よりも低い。ただし、両国とも数十年前まではBCGを接種していたので、そのことが影響しているかもしれない

BCGワクチンは毒性の無い結核菌で、免疫、白血球を刺激して本物の結核菌に対して対抗出来るような抵抗力を持たせる効果がある。この抵抗力が遺伝的に伝承され、すでに接種をやめているオーストラリアやニュージーランドにおけるコロナによる致死率を低くしているのだろうか。ただし、欧米でも以前は同様にBCG接種が行われており、BCGを受けていても結核に罹る可能性があると分かってきて接種しなくなったという経緯があることから、BCG説も定かでは無さそうだ

素人の推測だが、個人的には日本におけるCTの普及率の高さが影響しているのではないかと思う。ICU数は欧米に比べて格段に少ないのだが、CT装置は世界一の充実度で、肺炎の状況を的確に診断して処置に繋げていることが、致命的状況を回避できているように思う。医療従事者のレベルや使命感の高さも政府の対応のまずさを補っていることは言うまでもない

いずれにせよ、日本の死亡者数は欧米よりも低いとはいえ、他のアジア・オセアニア諸国に比べると見劣りしているのは事実であり、政府が自画自賛するような状況にはない

(イクスピアリ1Fの様子。右手がフードコート。通路左奥に照明がついているところが営業している成城石井。営業時間開始早々とはいえ、買い物客は全くと言っていいほどいない)

日本の対策は改善の余地だらけであることは明白で、迫りくる第二波までに優先順位をつけて拡充すべきだ。言うまでもなく、まずは検査体制の拡充だ。そしていまだ低水準にとどまっている各種の給付金の実行レベルは、早期に100%実現すべく最大限に努力をしてもらいたい。その上で並行して、オンライン申請の方が郵送申請よりも時間がかかるなどという笑い話にもならないような既存の仕組み、システムの是正を強く望みたい

我が家に10万円の特別定額給付金の申請書が届いたのは、首都圏の非常事態宣言が解除された翌日だった。マスクについては6月1日以降になるようで、とりあえず第二波には間に合いそうというスピード感だ。もっとも我が家の使い捨てマスクのストックは300枚を超え(随分高い買い物だった)、汗をかく夏用にカミさんがせっせと作った布製マスクもかなりの数になっている(笑)。10万円同様、マスクも寄付するつもりだ

ところで、アベノマスクの異物の検品コストは製造元や販売元が責任をもつのだろうか?よもや税金で負担などということはないだろなと疑いたくなる。また持続化給付金の発注業務は幽霊会社のような状態の某社団法人に委託しているようで、ほとんどの業務を電通に再委託しているとの報道もある。なぜこの社団法人を通さなければならないのか。競争入札などはされていないようで、電通への再委託の費用はどのように決められたのだろうか。予算の決定とどちらが先だったのかも疑問だ。コロナ対策で動く巨額のお金には胡散臭さがつきまとう。(最初の投稿で、社団法人への委託をアベノマスク関連業務と誤解して記述していたので、お詫びがてら訂正します)

(日の出に合わせてスタートするTDR周辺の早朝ウォーキング。唯一楽しんでいる外出だ)

さて、思いつくまま書き連ねてきたこのシリーズも気がつけば10回。第二波が来る前に終わりとする。さもないと書き続けることになってしまう

G7の一角を占める「先進国」の日本において、疑いたくなるようなお粗末な仕組みやシステムが露見している。国民の我慢強い精神的な対応に頼るのはこれまでとして、役所業務のIT化に留まらず、官民のハード・ソフトの改革を望みたい

本シリーズの第4回「COVID-19に思うことー4」で紹介した、第二次大戦の太平洋戦線をケーススタディとした名著『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』については、このブログで近々紹介したい。30数年ぶりに改めて読み直したが、日本の現状に関して示唆に富む指摘が多々記述されている

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