COVID-19に思うことー6

年寄りの繰り言

7都府県に緊急事態宣言が発出されて2週間が経過した。実施後の効果はこれから数字に表れてくると期待したいが、現時点では都市部も地方も感染拡大は続いている。毎日のようにTVや新聞に出てくる新規感染者数の推移グラフを見ていると、4月11日の719名という突出した数字を除けば、この10日間くらいは増加数は横這い傾向にあるようにも思えるが、予断を許さない状況だ

言うまでもなく、新規感染者数のグラフが横ばいになったというのは、「一定割合」で増加していたフェーズから「一定数」の増加に移行したということで、感染者数が横ばいになった、つまり台湾や韓国のように感染拡大が止まったということではない。新規感染者数のグラフが出てくることが多いので、つい感染が収束したかように錯覚してしまうのは要注意だ

北大の西浦教授のシミュレーションが示唆するように、80%の接触を減らせられれば、比較的短期間に新規感染を激減させ、その結果として感染がストップしたといえるような状態にできるということである。行動自粛や休業要請が功を奏し、GWの終わりころにはそのような状況になることを願うばかりだ

さもなくば、中小企業や個人事業主の外食産業や観光関連産業などの経済が立ち行かなくなると同時に、医療現場が疲弊し崩壊してしまうだろう

(浦安から東京方面を眺める。右のディズニーシーの左には都心のビル群が、さらに左には富士山がきれいに見える。4月19日早朝撮影)

さて、事態がうまく推移し、新規感染者数が激減した場合、緊急事態宣言は解除できるのだろうか?『COVID-19に思うことー2』でも述べたが、解除に関する判断基準については発出時点も現時点でも明確になっていない。玉虫色のような決着はぜひやめてもらいたい

また、米国や欧州などでは経済回復に向けた規制緩和の模索が始まっているが、国全体にロックダウン規制をしている国々の話であり、完全なロックダウンとは程遠い日本とは状況が異なる。欧米が解除に向けて動き出したからといって、日本も拙速に解除に向かうようなことは避けてほしいと思う。「急いては事を仕損じる」ではないが、再拡大を招いてしまっては、結果的に収束に時間と費用を要し、人も経済も疲弊してしまう

一方、現金給付については一人当たり無条件に10万円支給となったが、5月6日までの緊急事態宣言が延長されれば、多くの国民は追加の支給を期待するであろうし、安倍首相が描いていたように見える収入減に見舞われた世帯に対する30万円の給付策に置き換えられるとは到底思われない。野党の中にはすでにそのような追加支援を政府に要求し始めている党もあるが、今回のドタバタ劇のような苦し紛れの対応を繰り返してほしくない

(品川方面のビル群)

余談になるが、中国の戦国時代に孟嘗君と呼ばれる賢相がいた(紀元前300年前後)。魏の国、斉の国、秦の国で宰相を務め、その時代の中華に名を馳せた名宰相なのだが、この人物が遊説家や食客と呼ばれる学者や一芸に秀でるものを数百人(後に三千人ともいわれる)と集めて、的確な情報収集や分析を行い、内政や外交に手腕を発揮した(集めたというより孟嘗君の人望、名声に諸国から集まってきたといった方がよい)

安倍首相は政権主導で物事を進めようというきらいがあるが、感染症の専門家による諮問会議だけでなく、広く産官学から英知を集め、包括的な政策の立案と実行に活用してほしい。過去の事例からも感染症は長期戦になる。ほとんどの人が感染して抗体を持つ、あるいはワクチン投与により免疫力を備えるという状況にならない限り、コロナ感染の脅威は消えない

しかしながら、そこに至るまでには相当な時間を要する。この長期戦をどう戦っていくのかが不透明であることが、国民を不安に陥し入れ、疲弊させている。政府が求めているように、この戦いには国民一人ひとりの行動変容が不可欠だ。国民の理解と協力なくしては長期戦を勝ち抜くことはできない。政府には中長期的にどうコロナ感染に立ち向かうのか、明確なビジョンと方針を早急に示したうえで、施策を適時適切に発動してほしいと思う

(浦安から眺める富士山)

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