前夜アップしたブログ『COVID-19に思うことー5』に誤りがあることに気付いたため、お詫びして訂正します。
人口10万人当たりの東京都のコロナ感染者数計算において、桁を一桁間違えるという初歩的ミスをしていました。10万人当たり1.75人ではなく、正しくは17.5人です。これにより、新潟県と東京都の比較考察が適切ではなく、以下に改めて『COVID-19に思うことー5』(訂正版)としてアップし、オリジナル版を更新しました。大変失礼しました
4月16日夜に政府は緊急事態宣言の全国拡大を発表した。また、連立を組む公明党の押しもあり、現金給付については、収入が減少する世帯を対象に1世帯当たり30万円支給する方針から、無条件で一人当たり10万円を支給する方針への転換も決定した
前回の『COVID-19に思うことー4』で述べたように、個人的には野党が求めていた一人当たり一律10万円の現金給付は必要なく、収入減で本当に必要とされる人たちを対象としてできるだけ手厚く速やかに支給すべきと考えており、この期に及んで方針を変える政権の及び腰と安倍首相の腹の据わらなさを嘆かわしく思う。一方で、緊急事態宣言の全国拡大については賛成である
ニュースのインタビューを見る限り、地方の方々は概ね冷静に受け入れ、全国への宣言の発出が遅いとの意見も多かった。一方で、生活に困るという意見も理解できる。合わせて首長のインタビューも放映されていたが、当然と受け止める知事が多かったように思う。その中で、新潟県の花角知事のように、地域の実状をどう判断したのかと疑問を呈し、県の「感染状況は一定程度におさまっている」と発言する知事もいた
感染者数の絶対数で見れば、新潟県の感染者数は4月15日現在で46人であり、東京の2446人と比較すれば確かに少ない。母数となる人口を見れば、2020年1月31日時点で、新潟県は約222万人、東京都は1395万人であり、人口10万人当たりの感染者数でみても、新潟県は2.07人、東京都は17.53人であり、新潟は格段に少ない
また、亡くなった方の人数を見ても、4月16日現在で東京が53人であるのに対し、新潟県は0人であり、さらにコロナ感染者の増加数も一日当たり数名程度で推移しており、東京などのような増加傾向は今のところみられない。これをもって「一定程度におさまっている」ということなのだろう。自治体の中でも新潟市はいち早くドライブスルー方式によるPCR検査を始めている
一方で、4月16日付の日経に、医療体制についての記事が掲載されていたが、感染ピーク時の重症者数とICUの病床数の比較において、病床数が重症者数を上回っているのは、東京都、岡山県、福岡県、沖縄県の4自治体だけである。新潟においては、ピーク時の重症感染者数が149人と予測される中、ICUの病床数は32床という実状である。ひとたび他県のような感染者の増加が始まれば、医療体制は逼迫し破綻しかねない
新規感染者の増加傾向が顕著になってから拡大発出された7都府県の緊急事態宣言に対し、メディアも国民の多くも発令が遅いとの受け止め方をしている。もっと早い段階で人の動きを抑制し始めていたら、増加ペースは現状よりは緩やかになっていたと期待される
この増加傾向は今や都市部から地方にも拡がりつつある。その意味で、他県のような増加がみられない現段階で緊急事態宣言体制に入れる新潟としては、知事は政府判断に疑問を呈すのではなく、むしろこのタイミングでの対象範囲拡大は時宜を得たものとして前向きにとらえ、他の自治体の手本ともなるべき施策を矢継ぎ早に出し、感染制御の成功例を提示できるのではないかと思う
それはさておき、日本のような国土の狭い国において、小さく区分された自治体ごとに感染対策をしてもどれだけの効果が得られるのか、と疑問に思っている。仮に、すでに緊急事態宣言が出されている7都府県において効果が見られ、感染者数が減少に転じたとしても、その他の県で増加が続いていれば、大都市が再び増加に転じることは容易に想像がつく
そうでなくても、7都府県の一部の心ない人たちが、パチンコなどの遊興施設や飲み屋などの歓楽街を求めて、近隣の県へ出かけている状況がニュースでも報道されていた。コロナ疎開などという動きや宣言が出ていない他県に出かけて営業活動するなど、これでは近隣の自治体への感染拡大を助長しかねない
地続きの欧州と異なり海で囲まれた日本は、国としての対策とその効果を見極めやすい。この地勢を生かして、統一した対策を一気に全国展開して、沈静化を図ることが可能である。自治体ごとに細分化して独自に対策を取るやり方は、欧州で国ごとに対策を打つ状況と同じであり、ドイツのようにうまく抑えるところもあれば、イタリアやスペインのように収拾がつかなくなるところも出てくる
ドイツがうまく抑え込んでも、地続きの他国が抑え込みに成功するまでは、安易に対策を緩めることができない。同じことが日本の自治体にも言える。日本全体で感染を抑え込まなければ、事態の収拾は図れない。感染症は地域ごとに点で対策を打って封じ込めても意味がない。日本全体を面で抑え込むことが肝要である
感染を沈静化しても、過去のスペイン風邪の事例からも分かるように、第2波、第3波がやってくる。国全体で足並みをそろえて感染をコントロールしないと、平時に戻るまでに相当な時間と緊張と経済的なダメージを強いられる。この意味において、緊急事態宣言の発令後は各自治体が権限を持つという立て付けは適切とは思えず、国が主導して自治体が執行責任をもって推進することが望ましいと考える。特措法をよく理解できていないので、誤解があればご容赦願いたい
まずは早期の沈静化に向けて、目前にやってくるGWの人の動きを抑制すべく、日本全体を緊急事態宣言下において、国民の行動自粛、企業や事業主の協力を引き出すことが喫緊の課題である。『COVID-19に思うことー3』で書いたように、安倍首相や政府の根回しの仕方が稚拙で、花角新潟知事のように緊急事態宣言の対象地域の拡大発令を唐突と受け止めた方がおられたことは否めない
現金給付と同じく、信念のようなものが欠如した施策やメッセージは、国民に不安を与え、自らの政権の力不足を露呈するばかりである。コロナ終息に向けて医療体制、経済対策、それらを支えるインフラ整備などの施策を遅滞なく発動すべく、安倍政権にはリーダーシップを発揮してもらいたいと切に願う
スペイン風邪の頃とは、現在の地球は人口も人の動きも経済の相互依存も全く異なり、沈静化は一筋縄ではいかない。一国がうまくコントロールできたとしても、世界規模でコントロールできなければ、沈静化はなしえない。しかし当時と比較し、人類がより高度なサイエンスとテクノロジーを持ち、英知を集めて困難を克服する力があると信じたい
まずは、グローバルな沈静化において日本が足を引っ張ることなく、他国に成功例を提示できるように産官学の力を結集し、国民一人ひとりも世界から称賛されるような行動を示したいものだ