COVID-19に思うことー2

年寄りの繰り言

休園中の東京ディズニーリゾート(TDR)。年中無休の最強テーマパークも2月29日から閉じたまま。この時期、雨が降らなければ毎日ディズニーシーの外側を東京湾沿いに歩いている。中から歓声が聞こえるのだが、今はひっそりとしている

COVID-19のPart2。今回は「情報」について思うところを記したい。ツイッターやSNSなどによる情報拡散では「インフォデミック」が注目されているが、今回の「情報」はメディアや政府当局などから発信される感染者や亡くなった方の数値である

感染者数などの情報については毎日発信されており、4月7日現在で国内の感染者数は5000名を超えている(クルーズ船を含む)。日本の検査状況から感染者数は実態よりはるかに少ないことは誰もが知るところであり、この感染者数を各国と比較して我が国の感染が抑えられているという人はいないと思う

一方で、亡くなった方は100名を超えているものの(クルーズ船を含む)、他国と比較して低く抑えられているとの見方がある。医療現場の必死の努力の賜物であることは間違いなく、前線でコロナと戦っている関係者の方々に心から敬意を表したい

しかしながら、当てにならない感染者数と異なり、亡くなった方の数は実態を正しく反映していると言えるのだろうか?そもそも肺炎という疾患は、国内では老衰を除けば、腫瘍・心疾患・脳血管疾患に次いで4番目に死亡者数が多く、年間約10万人の方が肺炎で亡くなっている(誤嚥性肺炎による死亡者数を除いても)。これは、国内において一日当たり約270名の方が肺炎で亡くなっているという数字である

毎日発表されているコロナ肺炎の死亡者数は、PCR検査でコロナ感染が判明し入院された方のうち、肺炎が重症化して亡くなった方の数と考えられる。コロナ感染との因果関係が分からないまま肺炎で亡くなった方については、死亡後にコロナ検査を後追いで実施しているのだろうか?通夜や葬儀や火葬などのことを考えれば、コロナ肺炎かそうでない肺炎なのかを明らかにしておく必要があるので、肺炎で亡くなった方は後追いにせよ全員が検査を受けていると信じたいが、このあたりがはっきりしない

通常の肺炎とコロナ肺炎の違いが医療現場で容易に見分けがつくのであれば、コロナ肺炎が死因とされるのであろうが、見分けはそう簡単とも言えないようだ。もし検査をしていないケースがあるとすれば、コロナ肺炎の死亡者数には含まれず、通常の肺炎死因にカウントされているのだろう。だとすれば、日本のコロナ肺炎による死亡者の実数は、発表値よりも多いと考えた方が良い。実態の把握という観点からも遺体の取り扱いという観点からも明確にしてほしいところだが、マスコミでもあまり話題にならないのが残念だ

遅きに失した感が否めないが、ようやく5月6日までを期限として7都府県に緊急事態宣言が発令された。状況を注視し、必要であれば対象地域や期間を弾力的に変更するとのことだが、解除についてはどのように判断を下すのであろうか?現状の統計値でも減少に転じたかどうか、ピーク時に対しどれくらいの比率まで下がったかを相対比較することは可能であるが、絶対数が把握できていない状況で緊急事態宣言の解除やコロナの終息をどのように見極めるのか疑問が残る

韓国や米国や欧州のように、疑わしきはPCR検査をすべきだろう。思えば日本の感染は欧米に比べてずいぶん早い段階で発生していた。にもかかわらず、感染の拡大は3月下旬の3連休以降である。この拡大の状況が実態を正しく反映していればよいが、実際はもっと早く拡大が始まっていたのではないかと疑心暗鬼になる

3連休は天候も陽気も良く、確かに人手が多かった。その結果、感染が拡大したという見方もあながち間違いではないだろう。一方で、保険適用などPCR検査の要件緩和が発表されたのが3月6日であり、3連休後の拡大は、実際に検査数が増えたのが3月下旬だったということなのかもしれない

日毎の検査数のデータが公表されていないので何とも言えないが、検査数と感染者数の経時的相関を検証すれば、より因果関係が明確になるだろう。もし、後者(検査数の増加により感染者数が増加)であるとすれば、感染拡大はもっと早くから始まっていたということであり、その実態が早く把握されていれば、緊急事態宣言をはじめ諸対策をもっと早くに発動できた可能性もある

積極的にPCR検査をしてこなかったことが、感染者の実態把握を遅らせ、感染者数を過少に見せたことは事実である。一方で、感染者を把握しなかったことが入院者数を押さえ、結果として欧米のような医療崩壊の到来を遅延させているという逆説的な状況を生んでいるのかもしれない

検査をしてこなかったことが結果的にそのような幸運な状況をもたらしたとしても、国家がコロナとの戦いを「戦争」だというならば(私はまさに「戦争」だと考える)、戦況を正しく把握するには正確な情報が必要である。その意味で、感染者数や死亡者数は非常に重要な情報である。正確なデータや情報がなくて現状を的確に判断できるだろうか?ワクチンなどの武器を手にする前に、国民が安心してもとの生活に戻るためには、少なくとも実態を反映した感染者数において、顕著な抑え込みが担保されなくてはならない

政府や関係機関が意図的な情報操作をしているとは思いたくないが、パニックにならないよう人心を落ち着かせる、あるいは経済への極度の影響を避けるなどのために、PCR検査体制の確立に時間をかけたり、肺炎死亡者のコロナ感染確認をあえてしないとすれば、第二次大戦下における「大本営発表」と五十歩百歩ではないかと危惧する

中国の感染者数や死亡者数の発表数字に疑義を示す発言を目にするが、仮にそうだとしても日本の現状は中国の情報開示をとやかく言える立場にない。中国に『老鴉笑猪黒』(カラスが豚を黒いと笑う)という諺がある。因みに、猪は豚のことであり、中国の豚は黒豚である。自分を棚に上げて相手を嘲笑する愚かさを言う

マスクの配布や給付金、経済支援ばかりでなく、マスコミも野党もコロナ感染の実態解明に向けて、もっと突っ込んでもらいたい

注)大本営発表とは、第二次世界大戦において、日本軍の最高司令部「大本営」が行った戦況報告。国民を欺いて戦争を続けるために、実際の戦況を都合の良いように改竄・隠蔽・捏造し、被害が少なく優勢にあるかのように見せかけた発表のこと

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