COVID-19に思うことー1

年寄りの繰り言

家の近くの幼稚園に咲く桜が満開だ。例年であれば入園式が開催されて、期待と緊張の面持ちの新園児たちが親御さんに手を引かれた姿があるはずなのだが、今はひっそりとして静かさを保ったままだ

これまでコロナ感染を恐れて外出を控えてきた。かれこれ1か月半は公共交通機関を利用していないし、川で隔てた隣の東京はおろか、住む街の駅周辺や商店街など人が多く集まる場所には足を踏み入れていない

隠居の身なのでこのような外出自粛が可能で自己防衛できているのだが、カミさんはスーパーに買い物に行かなくてはならないし、同居する次男は通勤電車に乗って職場に出かけ、接客も行っている。昨今の感染経路不明の増加を鑑みれば、家族で気を付けていても何時どこで我が家も感染しているか分からない。感染防止という外出抑制から、自らが万一の感染源になることを防止するための自宅待機という状況に変容してきている

趣味の山も、以下の原則を守りながらしばらくは続けていけると考えていた

・平日に登山者の少ない山を選ぶ

・ロープウェイやゴンドラなどを使用しない

・公共交通機関を使わず、マイカー移動もサービスエリアや日帰り温泉の利用を控える

・宿泊する場合はテント泊とする

しかしながら、そういう状況でもなくなりつつあり、3月21日を最後に全面的に自粛することにした

仕事を引退してから尾張の実家と首都圏の自宅で半々の暮らしをしてきたが、実家の母親からは「何とか暮らしているので、実家に来なくてもいいよ」と、やんわり断られてしまった(笑)。地方からすれば、感染者が急速に増加しつつあり、感染経路も追えなくなってきている首都圏や大都市の生活者はハイリスク保持者にほかならず、接触を避けたいというのが偽らざるところだろう

軽井沢や八ヶ岳山麓、富士五湖周辺などの別荘地は、首都圏から一時的に退避する人たちが増えているようだが、行った先で新たなクラスターが発生しないことを願うばかりだ

さて、早々に隠居した気楽な私と異なり、毎日のように職場に出かけなくてはならない諸氏諸姉にとっては、自分の感染リスクもさることながら、職場での安全や企業活動などの継続に腐心されていることと思う

私自身も2009年のH5N1型インフルエンザ対応や、2011年の東日本大震災を通じて、BCP(Business Continuity Plan、事業継続計画)を強化し、対策を推進した経験を持つが、あのBCPは今回のCOVID-19に機能しているだろうか、と心配になる

マスクや消毒液などについて明確なストック量を規定していなかったと記憶するし、原材料などのサプライチェーンについても、トリアージのように原材料を区分して、リスクのあるものは複数ソースの確保を原則とするようにしてきたが、一方でコストダウン重視によりサプライチェーン体制が脆くなっているのではないかと心配している

ほとんどの企業や自治体、関係機関も同様なBCPを整備して備えていたはずだが、今回のCOVID-19では医療や教育などに加えて、物資の輸出入や人の出入国の管理体制において、BCPの十分でない部分が露呈したことは否めない。これを機会にBCPがさらに充実されることを願うばかりである

また、今回さほど問題になっていない食料についても十分な検証を期待したい。カロリーベースで6割以上を輸入に頼っている日本の現状を精査する必要がある。世界的な疫病の万延や戦争の勃発、それによるグローバルサプライチェーンの機能不全、自国ファーストによる輸出規制などを考えれば、日本の食の脆弱さは明らかである

かといって、自給率を限りなく100%に引き上げればよい良いということでもない。自国での疫病、天災、気候変動などにより、農産物が壊滅的な被害を受ければ、それこそ大変な事態になる。植物工場などの新技術の応用や、近大マグロのような養殖技術の確立なども含め、どうすればリスクを最小限にできるかという観点から輸入も含めた食の確保の最適化を図る必要がある

そして何より期待したいのは、産学官の英知を集めた不測の事態に強い日本の長期ビジョン策定と、実現に向けた横断的な対応、それを指揮する強いリーダーシップである

タイトルとURLをコピーしました