映画『アルピニスト』

レビュー

梅雨の戻りなのか、行きたい中部山岳地帯の天候が安定しない。個人的に日本百名山の仕上げを計画している北海道も、一般的に7月に入ると天候が安定すると言われているが、今シーズンは蝦夷梅雨のような不安定な状態で天候が安定してしまって、どうにもこうにも埒が明かない(涙)。そんな折り、カナダ人のフリーソロクライマー「マーク・アンドレ・ルクレール」の映画『アルピニスト』の上映が始まったので、日比谷の東宝シネマズシャンテに出かけた


フリーソロクライミング(註)の映画としては、ヨセミテのエル・キャピタンを最速で登った「アレックス・オノルド」の『
フリー・ソロ』や、パタゴニアのセロ・トーレ南東稜を登った「デビッド・ラマ」の『クライマー パタゴニアの彼方へ』をこれまでにも見てきて、その都度驚嘆した


(註:通常のクライミングは、先行するリードが途中で支点を作りながらロープを掛けて登り、下で待機するセカンドがロープを送り出していく。万一の落下時には、落ちるリードの体重を、セカンドが腰を落とすように自分の体重をかけて、最上部の支点でロープの左右に二人の体重を均衡させてリードの落下を食い止める。フリーソロの場合は、ロープなどを使わない単独登攀のため、このような命綱のシステムがない)


今回の『アルピニスト』は、ネットで多くの紹介記事やレビューに書かれているように、トップクライマーたちが賞賛するようなスリリングなフリーソロ登攀だけでなく、マーク・アンドレの山との向き合い方や、幼少時にADHDと診断されたマーク・アンドレを学校ではなくホームスクールで好きなことをやりたいようにさせた母親の育て方など、考えさせられるものがある


純粋にフリーソロの映画として見ても、スリリングで驚きの連続だ。ピックを打ち込む衝撃で簡単に折れて、砕けた氷と一緒に落ちそうな氷柱をアイスクライミングする様子や、パタゴニアのセロ・トーレの隣に屹立するトーレ・エガーの登攀に二度挑むシーンなどは、ハラハラしてこちらの心拍数が上がってしまう感じだ


私も山が好きでよく出かけるが、自分はせいぜい岩稜歩きまでで、岩壁や氷瀑などのクライミングにはとても足を踏み込めないが、どこを登ったらいいのか取り付く縞もない壁をマーク・アンドレが迷うことなく登り詰めていく姿は圧巻で驚くばかりだ


一方で、このような前人未到の挑戦をするアルピニストは、往々にして求道者のような他者を寄せ付けないような雰囲気の人が少なくないが、次々と記録を打ち立てていくマーク・アンドレは、相変わらず天真爛漫でお茶目で微笑ましい


ネタバレみたいになるので、詳細は書かないが、山好きの方は是非とも鑑賞されたし。そうでない方にもお薦めの映画です

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