『民主主義とは何か』宇野重規 著

レビュー

4年前(2017年)の夏、このホームページを開設して気の向くままにブログを発信してきた。年寄りがブツブツと独り言をつぶやいているようなブログなので、普段は来訪者も少なくアップして数日もすれば顧みられることもほとんどないのだが、熊野古道や槍ヶ岳の北鎌尾根、妙高・火打山などのいくつかの山の記録はポツポツと繰り返しご覧いただいている

(黎明の時間。いつもの早朝ウォーキングの開始。左は旧江戸川で東京湾に注ぎこむ手前あたり。ディズニーランドのすぐ横だ)

渾身の力で筆を執ったブログはほとんどスルーされて、思いもかけないブログが2000とか3000の閲覧をカウントする。冬なのに富士山に雪がないというぼやきのような写真付きのブログを紹介したときは、瞬く間に5000を超える閲覧数になり何が起きたのかとびっくり仰天。たまたまYahooニュースを見ていてずっと下の方にスクロールしていくと、このブログが張り付けてあり、またまたびっくりすると同時になるほどと謎が解けた


あのブログ記事を拾い上げて掲載したYahooのセンスを疑いながら、Yahooニュースの舞台裏を放送した番組を思い出した。24時間体制で、担当者数名がネットにアップされたいろんな記事やニュースをピックアップし、限られた文字数でキャッチ-なタイトルをつけて上司に提出する。採用されればYahooニュースに掲載されるという仕組みなのだが、番組では新人担当者が何度もダメ出しを食らい、なかなか採用してもらえず苦闘する姿を紹介していた


常日頃Yahooニュースの記事を見ていて、同じ内容の記事の重複掲載に辟易することがある。例えば、主要ニュースをスクロールしていくと、大谷選手のホームラン記事が新聞やTVニュースなどから転用されていくつも並んでいたりする(大谷ファンとしては大歓迎だが・・)。ひょっとすると閲覧数の多い記事を自動的にピックアップしてYahooニュースに張り付けるシステムもあるのかもしれない


私のブログは自動的に取り込まれるような閲覧数ではないので、血迷った担当者による採用なのだと思われる。悪戦苦闘する新人担当者が苦し紛れに選んだブログ記事に上司が情をかけて仕方なくOKを出してしまったのではないかと想像する。でも、この一件以来、ブログをアップする際には、杞憂と分かりつつも多少の緊張感をもって見直しするようにしている(笑)

(川沿いを東京湾まで歩き、海岸に沿って進む。前方は房総半島の付け根あたり。ポコポコ浮かんでいるのは雲ではなく、市原や君津方面にある工場の煙突などからの煙)

さて、いつもの癖で本題に入る前に大きく脱線してしまった。話を元に戻そう。このホームページを開設した直後に「古代アテネの民主制崩壊に思うこと」というブログを発信した。実はこのブログが興味深い閲覧履歴を示している。毎年、定期的に同じ時期に閲覧数が上がるのだ


推測の域を出ないが、どこかの大学の授業かゼミのレポートなどで、古代ギリシャの民主制に関する宿題が出ているのではないかと思われる。今どきの面倒くさがり屋な学生が、ネットで検索して閲覧しているのではないかと推察すると、定期的な同じ時期の閲覧数の上昇に合点する


元々、塩野七海の『ギリシャ人の物語』を読んで、思うところをブログにしたもので、とてもレポートに引用できるクオリティで民主制を論じたものではない。手を抜いて私のブログを参考にした学生は散々な評価だっただろう。コピペした人は単位を落としたのではないかと心配する

(房総半島と反対側には富士山とその手前に丹沢の山々が見える。夏に富士山が見えるのは珍しい。右手はディズニーシーのコロンビア号)

そんなわけで学生が悲劇を繰り返さないよう、民主制、民主主義を正しく学ぶために適切な書として本ブログのタイトルの本を紹介したい


『民主主義とは何か』 宇野重規 著、講談社現代新書


普段「民主主義」という言葉は、実に便利かつ広義に何気なく使われているが、タイトルのごとく「民主主義とは何か」と問われると答えに窮してしまう。西側諸国を括って「民主主義陣営」などと標榜するが、民主主義国家にも様々なレベルがあり、世の中には民主主義と呼ぶには・・という国もある


本書は、古代ギリシャにおける民主主義の誕生から、近代ヨーロッパやアメリカへの継承、自由主義と民主主義の違い、日本の民主主義、今後の民主主義の課題など、非常に分かりやすくまとめられている。300頁にも満たない文庫で、平易に書かれた文章なので、気合を入れなくても興味深く読み通せる


全体を通して「参加と責任のシステム」を基軸として民主主義を解説しており、私なりに大雑把に要約すると、個人のレベルでは一人ひとりがすべてのことに主体的に当事者意識をもって議論に参加し、投票などの行動をとること、「自らが可能な範囲で公共の任務に携わり、責任を分かち持つこと」、代議制政治においては為政のプロセスや結果をウォッチングし説明責任を追及すること、ということだろうか。ネタバレ的な野暮な解説はしないので、ぜひ手に取って読んでいただければと思う

(海面が不自然に波立つ。魚たちの群れだ。波は次第に形を変えながら動いていく)

これ以上学生さんが単位を落とさないよう、「古代アテネの民主制崩壊に思うこと」のブログの末尾には、本書を紹介しつつ手を抜かずに勉強するよう後書きを加えておいた(笑)

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