JR vs 国鉄

「国鉄」と言っても、若い人にはピンと来ないだろう。日本中を網羅した国有鉄道会社で、正式名称は「日本国有鉄道」だ。地元びいきの政治家の人気取り政策により、政治が国鉄経営に口を出し、どんどん延線されたあげくに多くの不採算ラインを抱えて巨大な赤字を膨らませ続けた。国民の血税が赤字補填に使われ、その赤字経営体質の立て直しを図るべく、1987年に6つのリージョナル鉄道会社と一つの貨物鉄道会社として、7つの会社に分割民営化された。これがJR各社の始まりだ

その後は、ドル箱路線を抱えて好調なJR東海や首都圏を抱えるJR東日本などの黒字会社と、長年の経営努力により黒字化に成功したJR九州がある一方で、相変わらず赤字が続くJR北海道やJR四国などがある

民営化され経営の自由度が増え、鉄道事業だけではなく旅行事業、駅ナカ開発などにより収益性を高める努力を重ねてきた。一方で、過疎化が進む地域では、赤字路線の廃止などにより地域の足としての役割を放棄せざるを得ない状況も発生している。民間企業としては赤字事業から撤退するのは当然の経営判断であるものの、公共性の高いビジネスだけに安易な路線廃止には賛否が分かれる

さて、国鉄の歴史を語りたいわけではない。高山に単身生活しているのでJRを利用して東京との間を行き来するのだが、JRになったことによる不便さを実感している。JRを利用して高山から東京へ移動するには名古屋経由(532.7km)と富山経由(481.3km)の二つのルートがある。結論的には、所要時間は4時間ちょっとで大差はなく、金額的にもほとんど差はない

のぞみが頻繁に走っていることで、名古屋での高山線と東海道新幹線の乗り継ぎ時間は無駄がない。富山での高山線と北陸新幹線の接続は比較的悪く、富山駅で待ち時間がある(お土産を買ったり、寿司を少々つまむ時間として利用できるが・・)。また北陸新幹線の「かがやき」は1時間に1本しかなく、本数の多い「はくたか」を利用すると「かがやき」よりも30分ほど時間が多くかかる

 1)名古屋経由(15,960円。乗り継ぎ割引で14,920円)

   高山から名古屋:高山線の特急ひだ

   名古屋から東京:東海道新幹線のぞみ

 2)富山経由(15,830円。えきねっと早割で14,810円)

   高山から富山:高山線の特急ひだ

   富山から東京:北陸新幹線かがやき

名古屋経由はすべてJR東海の管轄になる。新幹線と在来線の特急を接続利用すると、在来線の特急料金が約半額になる割引が適用される。繁忙期には料金が変わるが、一般的にこのルートの場合は14,920円(座席指定利用)である

一方で、富山回りの場合は、高山から猪谷までがJR東海、猪谷から富山を経て長野までがJR西日本、長野から東京がJR東日本と、3つのJRの管轄に分かれ、各駅で乗務員が入れ替わる。新幹線との乗り継ぎ割引のようなものはなく、料金は15,830円である。JR東日本の「えきねっと」を利用してかがやきの早割切符をネットで予約すれば合計14,810円となる

問題は切符の予約や受け取りだ。JR東海はドル箱路線を抱えてさほどの経営努力をしなくてもダントツの利益を上げており、切符のネット予約などのシステムが整備されていない。高山線を全く管轄しないJR東日本のえきねっとですら高山線の切符をネット購入できるのに、高山線の大半を保有するJR東海では新幹線しかネット予約できず、乗り継ぐ高山線の切符は窓口か券売機でしか買えない

ならばJR東日本のえきねっとで高山線だけ購入すればよいではないかと思われるかもしれないが、先述した乗り継ぎ割引が適用されなくなってしまう。同じ路線の同じ経路を利用するのに切符を購入するJRの会社が異なることで、割引の適用が変わってしまう

もう一つ不便なのは、JR東日本のえきねっとで購入した切符の受け取りは、えきねっとの発券端末のある駅でしか受け取れないこと。東京から帰ってくるときには、東京駅で高山線のチケットを受け取れるが、高山駅ではJR東日本の発券機は1台もなく、ネットで予約購入しても受け取りができない

せめて航空会社のようにネットで手配したチケットを家庭のプリンターで印刷して切符代わりに利用できるようにしてもらいたい。もっと言えば、スマホでチケットを見せればOkとかスマホをかざせばOkとか、世の中にこのような仕組みは多く存在する

もっというなら、JR各社は壁を取り払って、どのJRでも切符をネット手配できるようにシステムに互換性を持たせるとか統合するなどの努力をしてほしい。分割前の国鉄なら一つの会社なので、こんなことにはならないはずだ。それとも旧態依然としていた旧国鉄体質では、ネットでの予約すらシステム対応できていなかっただろうか・・・?

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