計画に当たって
晩秋にカミさんと参加を予定しているトレッキングツアーに向けて、コース途中にある標高差700mの峠越えに向けたトレーニング第2段を計画していた。すると長男から出張の代休が2日あるので山に行きたいとの連絡が入った。カミさんの山トレに合流することで話がまとまり、尾瀬以来、3人で出かけることになった(息子の嫁さんは仕事なので、今回は誘えなかった)。
八ヶ岳あたりでトレーニングしようと考えていたが、息子とちょっと前に赤岳に行ったばかりなので、涼しさが期待できることから3000m峰の乗鞍岳にした。カミさんのトレーニングの観点からも、最近膝が不調な息子にとっても、700m位の標高差はちょうどよいだろうと考え、山頂から逆算してスタートとゴールを位ヶ原山荘(2350m)とした。剣ヶ峰山頂が標高3026mなので、676mの標高差になる。
乗鞍岳は岐阜県側の朴ノ木平からスカイラインが、長野県側の乗鞍高原温泉からエコーラインが通っており、標高2702mの畳平までバスが運行している。このバスを利用して位ヶ原山荘からスタートする。帰りも位ヶ原山荘まで下山し、バスで下りる計画。万一不調をきたしたときは、畳平や肩の小屋口からバスで下山も可能だ。
歩行ルート図と標高グラフ
計画時のルートと標高
最高点の標高: 2983 m
最低点の標高: 2358 m
累積標高(上り): 639 m
累積標高(下り): -639 m
実際のルートと標高
結果的には標高差410mを登った肩の小屋でカミさんがあえなく撃沈。乗鞍山頂は断念し、下山も畳平からバスを利用することにした。
最高点の標高: 2788 m
最低点の標高: 2349 m
累積標高(上り): 483 m
累積標高(下り): -134 m
山行の詳細
位ヶ原山荘でバスを途中下車してスタート。乗鞍高原観光センターからの7時の始発バスは、全ての客を乗せるため(着席)4台が並んで出発。ここで下りたのは私たちだけ(笑)。小屋の前の道路向かい側には、山の水がホースで引いてありしっかり出ていた。工事現場に設置するタイプの簡易トイレが4つあった(100円チップ制。息子の青いザックの後方に自販機のように見えるもの)。
山荘から200mほど道路を登っていくと、右手に登山道の入り口がある。枝が生い茂る樹林帯の中の細い道。
最初の急な登りを100mちょっと登ったところの森林限界あたり。日陰で宿で用意してもらった朝食代わりの弁当を食べた。
周辺にはミヤマカラマツが群生していた。打ち上げ花火のような花だ。
トモエシオガマもちらほら咲いていた。
少し登ると槍ヶ岳から穂高連峰への稜線が見えてきた。左端が槍ヶ岳、中央が北穂から奥穂、そこから吊り尾根の右端に前穂。いつ眺めても美しい稜線だ。
ヨツバシオガマもあちらこちらに咲いている。
エコーラインとの1回目のクロス。土管をくぐってエコーラインを抜ける? そんなことはなく右側に登って道路に出て、カーブに沿って少し進むと右手方向に登山道がある。
まだ青空が広がっていて遠くの山並みも見えている。
チングルマが咲いていた。ところどころ群生していた。特に肩の小屋口から小屋へ向かう登山道の周囲
樹林帯を抜けてハイマツやナナカマドに植生が変わった。登山道は広くなって風が通るようになったが、直射日光をまともに浴びる。奥の左の峰が乗鞍岳山頂の剣ヶ峰。大雪渓の残骸にスキーヤーも見える。
シラネニンジンもあちこちに群生していた。これも花火みたい。
イワオトギリ。赤い蕾がたくさん。
コバイケイソウも。この辺りは色んな花のお花畑だ。シニアのご夫婦2組が高山植物を撮影していた。4人とも立派な一眼レフに望遠レンズをつけていた。
2回目のエコーラインとのクロス。肩の小屋口バス停前に出る。右前方の手前にトイレ棟。その向かい側に肩の小屋、山頂方面への登山道入り口がある。私の立ち位置の道路向かいには、大雪渓への登山道の入り口がある。
肩の小屋まで30‐40分くらいの登りなのだが、カミさんの休憩のペースだけが上がる。あおりにならないよう配慮して、息子が距離を置いて登ってくる。
カミさんが登ってくるのを待つ間に大雪渓のスキーヤーの写真と動画を撮影。5‐6回のターンで終わってしまう斜面なのだが、真夏にスキーで滑ることが醍醐味なのだろう。多分。
好きだねぇ
ミヤマダイコンソウがきれいに咲いていた。
東大宇宙線観測所の施設
イワキキョウの癒される青紫。肩の小屋までの登山道はお花畑だ。
小屋に到着。畳平からの登山客で一気に人が増える。
ここでカミさんギブアップ。カミさんを小屋のカフェに待たせて、息子と二人だけでピストンすることも考えたが、上空の雲も増えてきたので撤退することに。今回はピークハントが目的ではない。カミさんの標高差700mクリアが目標。残念ながら未達で終了。それにしても、平日なのに登山者が列をなして登っている。夏の乗鞍はすごい人気の山だな・・
肩の小屋からは車道にもなる幅広の登山道を少し登ってから畳平に下る。ウサギギクのオンパレード。
コマクサが咲いていた。富士見岳への分岐の手前あたり。
清楚なピンクに癒される。
ピークハントできなかったので、息子には富士見岳(2817m)で妥協してもらう。カミさんはトラバース路で畳平へ直行。
畳平に着くと、ちょうど1時間に1本のバスが発車するところだった。3台目に飛び乗った。3台目もほぼ満席。
下山後は昨夜泊まった宿の温泉に入る(チェックアウト後も無料)。いつも日帰り温泉で利用している「湯けむり館」と同じ源泉の硫黄泉。予報通り雲が湧いてきたけど、山頂はまだギリギリ見えていた。
山行を終えて
第1弾のトレーニングとしてGW直前に高尾山に出かけたが、その時はカミさんにとって久しぶりの登山にもかかわらず、標高差500mちょっとを難なく登った。今回は本番のシミュレーションとして700mに挑戦したが、結果的には標高差410mを登った肩の小屋であえなく撃沈してしまった。
前日にカミさんにとって初めての上高地に出かけ、明神池まで10キロ弱を周遊したのだが、上高地も暑くてちょっと歩き疲れた。加えてこの日の登山も暑く、これにやられたのが敗退理由だろう。9月になったら第3弾を計画するとしよう。
実は私にとっても初めての夏道の乗鞍登山だった。乗鞍にはこれまで4回登っているが、2月に2回、3月と4月に1回ずつで、すべて積雪期の登山だった。雪で歩きやすいバックカントリーのツアーコースを進むのと異なり、位ヶ原まで樹林帯の閉塞的な登山道を歩くのは随分違う印象を受けた。
因みに上の写真は2019年の4月中旬に登った時の位ヶ原周辺。スキー場トップからバックカントリーのツアーコースを登ってくる。とても歩きやすく気持ちの良い登山ルートだ。ここを登りきると比較的フラットな平原のような空間に出て、山頂の峰々が目に飛び込んでくる。
こちらが平原のような空間と剣ヶ峰へ続く稜線。右から朝日岳、蚕玉岳(こだまだけ)、剣ヶ峰。どこを歩いても、どこから山頂へ登っても自由だ。写真右端のコル(凹んだところ)に肩の小屋がある。
独り占めの剣ヶ峰山頂。さすがに4月中旬は、厳冬期と違ってポカポカ陽気だった。
横道に逸れたが、木々の緑と青空、白い雲と残雪、咲き誇る高山植物など、夏山の乗鞍も新鮮で素晴らしかった。ただ、お手頃な人気の百名山だけあって人が多いのには驚いた。上高地や室堂、駒ヶ根など、登山者と観光客の両方が押し寄せるところは、混雑時期を避けるのが良策だな。
息子にはちょっと可哀そうなことをしたが、またの機会に声がけしてみようと思っている。
関連情報
コンビニ
松本から158号線を上高地方面へ進むと、新島々の駅までにメジャーなコンビニが多数ある。新島々のセブンが最後
エコーラインのシャトルバス
バスターミナルの乗鞍高原観光センターに無料駐車場あり。
平日の始発は7:00(土日は6:00)。雨の日は別ダイヤ。
平日なのに6:40頃に行くと長蛇の列。クレジット用の自販機の列と現金専用の窓口の列と2つラインができていて、現金用窓口の方が3倍くらい長いラインだった。ただ回転の速いので現金用の列の方が早く解消した。
全員乗れるだけバスを増発したので、当日の積み残しはなかった(土日は?)。
料金、時刻表は以下のURL参照。
なお、岐阜県側のスカイラインは土砂流出のため2023年度は全面通行止めで、バスはシーズン通して運休とのことなので要注意。東海・関西方面からの客も長野県側の乗鞍高原温泉のエコーラインンへやってくるので例年より混雑が激しいと思われる。
マイカーはエコーラインを三本滝まで上がれる(無料駐車場100台、トイレあり)。ただ、そこからバスに乗車できるかどうかは運次第か? この日は2人バス停にいて、無事に乗れた。三本滝から登山する場合を除いて、観光センターのバスターミナルから乗車した方が無難だろう。
日帰り温泉
湯けむり館:観光センターの道路斜め向かい。かけ流しの硫黄泉。730円。10:00-20:30(20:00受付終了)。TEL:0263-93-2589
火曜定休が多い。
食事処
湯けむり館や観光センターに食堂あり。
また、158号線へ戻る途中にも食事処やレストラン、カフェがある
歩行データ
位ヶ原山荘07:52→09:38肩の小屋口→10:14肩ノ小屋→10:26剣ヶ峰口→10:37摩利支天分岐10:38→10:42富士見口→10:50富士見岳(乗鞍)10:51→10:58県境ゲートバス停→11:05畳平バスターミナル