なんだかなぁ・・公文書の黒塗り

年寄りの繰り言

スリランカ人のウィシュマさんが名古屋出入国在留管理局の収容所で亡くなった事件はあまりに痛ましく、名古屋入管の杜撰(ずさん)な対応には憤りを感じるとともに、日本人として恥ずかしくも情けなくも思う


遺族の請求により開示された文書には、あちらこちらに黒塗りが施され、肝心な記載があると思われる部分が読み取れない。この文書やビデオに関する遺族からの対面質問の場において、なぜ適切な医療を受けられず死に至ったのかという再三の質問に対し、名古屋入管の職員(管理職と思われる)による説明は、週に2回の診療という医療体制の脆弱さにより十分かつ適時の医療対応ができなかったという耳を疑うようなものだった


数日で急に容態が悪化したわけではなく、数か月にわたって衰弱し、死に至る直前の数週間は危機的な状態にあったのであり、たとえ一週間に二度の診療体制と言えども、診断や治療を受ける機会は何度でもあったはずだ。事実、衰弱の過程で診療に当たった医師は、精密検査を受けることが必要との診断書を書いていたにもかかわらず、対応が取られていない


もっと腹立たしいのは、原因を医療体制のせいにして、収容所職員の不適切な対応や落ち度、上司への報告を怠るなどのルール違反などは原因とせず、自分たちの責任をすっかり棚上げしたことだ


日本語学校で知り合ったスリランカ人の男性と同居し、お金もほとんど取られ、日常的にDV被害を受け、逃げ出すようにして交番に助けを求めに行き、入管施設に収容されたウィシュマさん。日本語学校をやめて所在不明となり、在留資格が切れた状態になったのも、この男の強要が影響しているのではないかと疑われる


収容先にまで男から手紙が届き、「スリランカに戻ったら探し出して罰してやる」とか、「(男の)ファミリーもスリランカで報復のため待ち受けている」などという脅しまで受け、スリランカにも帰国できないよう追い詰められて入管での保護を求めていたという


DV防止法は「国籍や在留資格を問わず、日本にいるすべての外国人にも適用される」とされていて、ウィシュマさんも保護の対象となるはずであるにも関わらず、入管は男のDVに関しても適切な保護対応をした形跡はない。それ以前に、人権というものに対する意識が根本的に欠如している


本ブログにおいてウィシュマさんの事件にこれ以上深入りするつもりはないが、名古屋出入国在留管理局ならびに所轄官庁による誠意ある調査と説明責任の遂行、法治国家に相応しい日本の司法の対応と政府から遺族への謝罪と補償を願ってやまない。そして何より、収容者の人権が守られるよう再発防止に向けた対策が取られることを望む。これができないならば、他国の人権問題をとやかく言う資格など日本にはない

(黒塗り)

当該組織による事実関係の調査と報告書の杜撰さは、本件に限ったものではない。少し前に開示された森友学園に関する近畿財務局のやり取りの記録(通称「赤木ファイル」)についても同じだ


亡くなった財務局職員の赤木さんが、森友学園に土地が払い下げられた経緯や、その後上司からの指示で財務省関係者の国会答弁に合わせるべく資料の改ざんを強要された経緯、改ざん前と改ざん後の文書などを記録として残していた。元上司からこの事実を利かされた赤木さんの奥さんが文書開示を求めたのに対し、財務省は文書そのものの存在すらうやむやにし、なかなか開示に応じなかった。その後、一転して存在を認めて文書を公開したものの、こちらも黒塗りのオンパレードだった


公文書については、『不開示とできる基準は、情報公開法で、◇特定の個人を識別出来る情報、◇公共の安全・秩序の維持に支障を及ぼす情報、それに◇審議中で意思決定の中立性を害するおそれがある情報などとされていて、これらの基準に沿って各府省庁が判断して』いる(『 』部分は、NHK政治マガジン 「なぜ公文書が “後進国”ニッポンの実像」2018年4月10日より抜粋)


赤木ファイルの黒塗り開示は、不開示とできる基準を逸脱している。不都合な部分の黒塗りどころか、改ざん指示や野党対応などのメールのやり取りなどは意図的に省かれている。赤木ファイルは公文書に当たらないなどという屁理屈までこねているようだが、こちらの事案についても、誠意ある調査と説明、法治国家に相応しい日本の司法の対応を強く求めたい

「黒塗り」と言えば、戦前や戦中に言論統制や思想弾圧などのために検閲で頻繁に行われた行為だが、まさかこの時代にも権力側が不都合な事実の隠ぺいのために黒塗りを使ってくるとはあきれ果ててものが言えない。でも、情報操作は黒塗りだけではない


数年前に明らかになったイラクに派遣された自衛隊の日報廃棄や(後にPCに保存された日報が世に出てきたが)、首相主催の桜を見る会の招待名簿の廃棄なども稚拙かつ悪質な情報隠蔽操作だ。このような政府側の情報操作は、ネット上の情報が常に監視され、政府に不都合なメールのやり取りや海外のニュースなどを瞬時に削除しているどこかの国のやり方と五十歩百歩ではないか


安倍政権になってから、このような情報操作が頻発したように感じるのは私だけだろうか?ひょっとすると安倍政権以前から戦時の悪い情報隠蔽体質を引き継いでいたのかもしれない。だとしたら恐ろしい限りだ

情報操作以前に、議事録や公式記録を残さないという根本的な問題も露わになっている。情報が正しく国民に開示されることが民主主義の大前提だ。すべての情報開示なくして私たちはバイアスのない公正な議論はできないし、正しい判断も下せない


国民やメディアなどはもっとこの件に関心を持って追及すべきだと思う。政府のやり方もさる事ながら、情報に対する国民の感度の低さに、この国は本当に先進国、民主主義国家とよべるものだろうかと案じられてしまう

なんだかなぁ・・・

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