計画に当たって
今シーズンの夏山から秋山にかけての長雨にはうんざり。計画していたロングの縦走は半分に縮小したプランですらも実行できずガックリ
小屋じまいが始まった頃になってやっと巡ってきた確実な晴れ予報。短い山行なら行けそうと思案し、木曽駒ヶ岳のクラシックルートを選択した。このルートは2020年3月の積雪期に出かけたルートだが、今回は紅葉シーズンの再訪になる
秋の木曽駒は、千畳敷カールの紅葉が特に人気で、駒ヶ岳ロープウェイを利用した登山者や観光客の人出が多くこれまで避けてきたのだが、山人生が残り少なくなってきて、あれこれ言っている場合ではなくなってきた
昨年(2025年10月)には同じような理由で避けてきた東北の栗駒山の紅葉登山に出掛け、「神の絨毯」と呼ばれる紅葉を楽しんだ。今回はその第二弾だ。来シーズン当たりは穂高連峰の涸沢かな? 第三弾はさておき、クラシックルートなら混雑を回避しながら素晴らしい稜線歩きができると考えた
木曽駒のクラシックルートを選んだもう一つの理由がある。少し前にまとめ読みした新田次郎の作品の中に、今回のクラシックルートで大正二年に起きた遭難事故をもとに書かれた『聖職の碑(いしぶみ)』という作品があった
伊那の中箕輪尋常高等小学校の修学旅行として毎年行われていた駒ヶ岳登山において、今でいう「韋駄天台風」に襲われ、引率の校長と参加者のうち10名が命を落とした痛ましい事故だった。今回の下山時に、生徒たちが使った濃ヶ池ルートを経由してクラシックルートを下り、「遭難記念碑」で冥福を祈ることとした
歩行ルート図と標高グラフ
2D歩行ルート図と標高グラフ
最高点の標高: 2957 m
最低点の標高: 1249 m
累積標高(上り): 2462 m
累積標高(下り): -2440 m
3D歩行ルート動画
今回はGoogle Earth Proの過去画像で紅葉シーズンの画像が見つからなかったので、ヤマレコの3Dマップの動画作成機能を利用した
Youtube動画終了後は、ブラウザーの戻るボタン(←)でブログに戻ることができる。スマホはYouTube画面をスワイプして終了させればブログに戻る
ヤマレコの作成機能を利用した3D歩行ルートのYouTube動画(約1分10秒)☜ クリック
山行の詳細
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1日目:桂小場登山口から西駒山荘まで

桂小場登山口駐車場。道路左側(駐車スペースの反対側)にある東屋の横から登山道に入る。ここまで舗装道路で来られる

登山口から30分ほどで「ぶどうの泉」の水場。冷たくでおいしい。名前の由来は不明だが、ちょっと甘みのある水なので「ぶどう」?

下の方はまだ夏山っぽい。樹林帯で風が通らず暑く、夏山ほどではないにしろ早くも汗が滴り落ちる

駐車場から1時間半くらいで「野田場」の水場。山の斜面を流れる水を集めている。ここも冷たくておいしい。この先は西駒山荘まで水場はない

大樽小屋(無人の避難小屋)。ここで大休止して、ここから先にある胸突八丁の急登に備える

大樽小屋の内部。きれいで快適だ。小屋の横には便袋回収方式のトイレあり。写真右下のプラボックスには便袋のストック(有料)あり。使用後の便袋は登山口の東屋に回収容器あり

胸突八丁の始まり。樹林帯の中の急坂を登るクラシックルートの試練の部分

このあたりの標高からダケカンバが色づき始めている。苦しい中の癒しだ

大樽小屋から岩の段差や、写真のような木の土留めによる段差がずっと続く。前回は積雪期で雪に覆われ、歩きやすいフラットな道だった。こんな段差の道だったとは衝撃。下りの膝への衝撃が心配になる。クラシックルートをお気に入り登録しているのだが、「積雪期限定」の但し書きを加えるか…

胸突ノ頭に到達。やれやれ。ここまで登れば西駒山荘まではトラバースルートの比較的緩やかな登りだ

西駒山荘に向けてトラバース路を進む。やっと展望が開けて将棊頭山も見えるようになってきた。前回の積雪期は稜線を進んだので木曽駒方面の眺望が抜群だった

木々の間から八ヶ岳方面や伊那谷を望むことができる。ここまで登ってきてやっと眺望と爽やかな風のご褒美だ

紅組(ゴゼンタチバナ)

白組(シラタマノキ)

今宵の宿「西駒山荘」が見えてきた。この日の宿泊者は全3名だった。二階建ての小屋は新しく、とてもきれいで快適だった。白い標識を左に下ると水場

チェックイン前に今夜と明日の分の水を汲んでいく。18時から発電機が動くと小屋前の蛇口から水が出るようになる

小屋番さんに薦められて「将棋の頭」(将棊頭山ではない)へピストンする。トイレ棟の背後のピークに登り、尾根伝いに左端まで進む

左端のピークからの眺め。伊那谷と奥に八ヶ岳連峰。伊那の街からはこの先端のピークが将棋の駒の頭のように見えるとのこと。それでこのピークは「将棋の頭」と呼ばれ、小屋の背後の一番高いピークが「将棊頭山」と呼ばれるようになったとか

小屋の横にある大正4年に建てられた石室内部。今回はここで自炊して賞味期限切れのアルファ米の消費に努める(笑)。前回の積雪期はこの石室の右側の板の間で寝た。懐かしい

石室には暖炉があり暖かい。石室は休憩や自炊スペース、二次会スペース等に使って良いとのこと

2020年3月に泊まった時の暖炉付近の写真。霜がびっしりついた昔の冷凍庫みたいな状況だった笑
2日目:西駒山荘から木曽駒ヶ岳、伊那前岳、濃ヶ池を周回して桂小場へ

2日目朝の黎明。石室で朝食。暖炉はほぼ消えていたが、石室内は寒くなかった

Jetboilが不調で朝食に手間取りご来光を逃す。出発して稜線に出ると、南アルプスの甲斐駒ヶ岳の上に太陽。今日もいい天気だ

南アルプスの反対側(中央アルプス西側)に御嶽山

北アルプスの最南端に位置する乗鞍岳

中央奥の右に北アルプスの槍ヶ岳から穂高連峰の稜線、左側には笠ヶ岳から抜戸岳の稜線、右側には後立山連峰の山並み。あちらもいい天気だ

槍穂のアップ。中央アルプスは北アと南アの中央にあるので、眺望の観点からは抜群のロケーションだ

南アルプスのほぼ全景。左の鋸岳から右の茶臼岳までバッチリ。雲海がいいアクセントになっている

前方に目をやれば、右の中岳と左の宝剣岳。間には赤い屋根の天狗荘と青い屋根の宝剣山荘が遠望できる。帰路は宝剣山荘の前から谷へ下り、濃ヶ池を経由して手前にトラバースしてこの尾根に戻ってくる

この辺りから気持ちの良い稜線歩きが2779m峰に向けて急登に変貌する。積雪期に歩いた時は風が強く、何度も耐風姿勢をとり、最後はダガーポジションで四つ這いになって登った

左下には帰路に寄っていく濃ヶ池が見える。奥は伊那前岳への稜線。あちらにも足を延ばす予定

最後の急登部分へ突入。青空目指して気持ちの良い稜線の登りが続く

急登を終えて、歩いてきた稜線を振り返る。何度歩いても気持ちの良い稜線だ

濃ヶ池を見下ろす。最奥の中央は八ヶ岳、その左は浅間山と外輪山、四阿山など

写真右3分の1あたりに見える木曽駒山頂に向かって最後のアプローチを楽しむ。まずは手前の馬の背を進む

左前方に宝剣岳(2,931m)。山荘と同じくらいの高さまで登ってきたかな

若いオスの雷鳥。10年位前だったか、一時は中アでは絶滅したといわれていた。関係者の努力で今では登山道で普通に見られるまでに復活してきた

木曽駒山頂(2,956m)。ロープウェイ組がまだ殆どいないので割と静かな山頂を楽しむことができた

山頂の社で手を合わせる

神社から少し上松側へ下ると、頂上木曽小屋を見下ろすことができる。背後は麦草岳、最奥右は御嶽山

手前の稜線が三沢岳(2,847m)への稜線、そのすぐ奥が中アの主稜線、その左奥に南駒ケ岳(右、2,841m)と空木岳(左、2,864m)

木曽駒から中アの南方向の抜群の眺望。右手前が三沢岳、中央奥のやや左が南駒ケ岳と空木岳、左手前が宝剣岳。これから宝剣岳の肩へと進む

木曽駒ヶ岳の山頂から一旦下って中岳(2,925m)へ登り返す。中岳を越えて宝剣山荘へと下る。中岳も宝剣山荘の辺りもロープウェイ駅から登ってきた多くの登山者で賑わっていた

宝剣山荘をの横を通り、乗越浄土から伊那前岳への尾根に足を延ばす。比較的静かな尾根の途中から千畳敷カールとロープウェイ駅を見下ろす。この時点で千畳敷カールの紅葉は7-8割の色づきとのこと。残念ながら上からではカールの紅葉が見えない。ポスターやWebの写真のようにカールの下部から見上げる構図が定番だ

伊那前岳(2,883m)まで歩いてきた。木曽駒には何度も来ているが、こちらの尾根に足を延ばしたのは初めてだ

左端が木曽駒ヶ岳、その右が「馬の背」、その右が西駒山荘に続く尾根だ

前の写真からの尾根の続き。本当に気持ちの良い尾根だった

宝剣山荘へ戻る途中で南プスの稜線を眺める。雲で隠れていた富士山がしっかり見えている

南プスの白峰南稜と呼ばれる稜線の奥に富士山が頭を出している

伊那前岳から戻る途中、針山のようなピーク直下をすすむ

宝剣岳の山頂には結構人がいる。今回はスルーしよう

青い屋根の宝剣山荘まで戻ったら、山荘の前から右下方向へ続く白く見える登山道を下って濃ヶ池方面へと向かう

登山道を下ってきて振り返る。赤い屋根は宝剣山荘の隣りの天狗荘

新田次郎の『聖職の碑』に出てくる中箕輪尋常高等小学校の遭難事故で、生徒の一人が暴風雨をしのいだといわれる岩だろうか

ひょっとするとこちらの岩の下かもしれない。引率の校長を含む11名が亡くなった痛ましい事故だ

岩は駒飼ノ池のすぐ近くだったと記憶する。この池の前後で数名が力尽きた

濃ヶ池へと続くトラバース路から下方を眺める。右奥は八ヶ岳連峰

濃ヶ池。静かできれいだ。だけど真っ暗な暴風雨の状況では険しい道だ。この辺りでも倒れた生徒がいたと記憶する

トラバースを終え、往路の稜線に復帰して振り返る。このトラバース路はコンディションが良くても初心者には歩きやすい優しい道とは言えないな…

青い空に波状巻積雲、いわゆるうろこ雲が波状に広がった雲

足元のウラシマツツジの紅葉もきれい

こちらが新田次郎の『聖職の碑』で描かれた事故で亡くなった人たちの「遭難記念碑」。なぜ「慰霊碑」ではなくて「記念碑」なのかは、ぜひ本を読んでいただければと…

前の写真の石碑の横にはもう一つ小さな石碑がある。犠牲になった11名の名前

復路では西駒山荘のすぐ背後にある将棊頭山(2,730m)の山頂にも寄り道。この山頂は三度目だ

この日歩いた稜線を一望@将棊頭山

ほぼ同じような角度から撮影した積雪期の木曽駒への稜線。またいつか積雪期に訪れる機会はあるだろうか…

さて西駒山荘にデポした荷物を回収して下山するとしよう。素晴らしい山日和を与えてくれた神様に感謝感謝!
山行を終えて
素晴らしい好天に恵まれた山行になった。狙い通り、今回のルートは紅葉シーズンながら静かな山歩きを楽しむことができた。無雪期のクラシックルートの姿を楽しむことができ、初めての濃ヶ池のトラバースルートも歩くことができ、『聖職の碑』の記述がよりクリアになった
描かれた遭難事故は、今で言えば、「韋駄天台風」ともいうべき急速に発達して足早に進む台風だったのだが、当時の気象予報の技術では台風とさえ認識することが難しく、直前に地元気象台に問い合わせた際にも、暴風雨になるような情報はなかった
風雨がひどくなりはじめ、不運が重なり、たどり着いた山頂手前の避難小屋(宝剣山荘辺りにあったか?)はひどく損壊しており屋根もなく、先にある山小屋(頂上山荘か?)へは暴風雨で稜線を進むこともできない
やむなく避難小屋をにわか修理するも、濡れた衣服のままで膝を抱えて座って夜を過ごすうちに、生徒の一人が息絶えて集団パニックに陥る。全員が真っ暗な暴風雨の中、下山を開始する途中でさらに10名が犠牲になる痛ましい事故となった
うまく登山口近くの集落までたどり着いた生徒もいれば、岩の下に逃れて一夜を明かした生徒や、分岐で道を間違えて違うルートで下った生徒たちもいた。捜索隊に発見されて助かった生徒もいる中で、引率の校長を始め下山の途中で力尽きた生徒も少なくなかった
ヘッドランプも満足な雨衣もなく、ましてやGPSなどの便利な機器などない時代、暴風雨の真っ暗闇を蓑笠で必死に下りてきた子供たちを思うと胸が張り裂けそうになる
集団登山は、この事故を乗り越え再開され現在も続いているそうだ。再開にこぎつけるまでの様々な困難は小説の作者あとがきとしては異例の77頁におよぶ『取材記・筆を執るまで』の中に書かれている
とかく事故の原因や責任の所在追及に陥りかねないなか、あとがきのタイトルから推察できるように、作者は周到な取材を重ね、どの当事者にもあらぬ非難が寄せられないよう、この事故をどう描くか腐心したことが窺える作品だ
西駒山荘の石室はこの事故のニ年後に二度と同じような惨事を繰り返さないよう、頑丈な避難小屋として建設されたものだ。今は石室の横に、こじんまりとしたきれいな山小屋もある
過去にはこのような悲しい事故が発生したルートではあるが、クラシックルートは木曽駒ヶ岳に続く稜線の中では最も美しいといわれている
今回すばらしい天気のもとで無雪期のクラシックルートを再訪できたことと、紅葉の濃ヶ池ルートを歩くことができたことを山の神様に感謝しつつ、心より亡くなった人たちの冥福を祈りたい
関連情報
駐車場&登山口へのアクセス
桂小場登山口駐車場(約25台):
中央道を利用する場合、小黒川スマートICで下りる。ナビは小黒川渓谷キャンプ場で設定。キャンプ場を抜けていくと登山口駐車場がある。駐車場までは舗装道路。紅葉シーズンながら平日9時で10台だった。週末は混雑必至。
コンビニ&日帰り温泉
コンビニ
小黒川スマートICを出た先にはない。事前調達すること。東京方面からは小黒川の少し手前の辰野PAにデイリーがある
日帰り温泉
見晴らしの湯:
今回利用。よくある地元民のための普通の温泉施設
600円(JAF50円引き)、0265-76-8760、10時~21時(受付は20時まで)
https://www.ina-city-kankou.co.jp/miharashinoyu/
ふれあい交流センター 大芝の湯:
500円、0265-76-0048、10:00~21:30(最終受付21:00まで)
https://oshiba.jp/
山小屋
西駒山荘:
収容人数28名、YamatanでWeb予約
1泊素泊まり(寝具付) 平日9,000円~(税込)
1泊2食(寝具付) 平日13,000円~(税込)
トイレは便袋回収方式(南プスの塩見小屋と同じ方式)
https://www.ina-city-kankou.co.jp/yamagoya/nishikoma/
コースの状況(個人の感想です)
登山ポスト:
桂小場の登山口の東屋にポストあり(私はコンパスでWeb提出)
登山口から大樽小屋:
里山のような登山道を徐々に高度を上げる感じ。30分位で「ぶどうの泉」、+1時間位で「野田場」に水場があるので、水を持ち上げる必要はない。近年の豪雨で数か所で登山道が流出気味。濡れている時は谷川に滑り落ちないように要注意
大樽小屋から茶臼山分岐:
胸突八丁が長い。木の土留めによる段差や岩の段差が続く。登りはよいが、下りは膝にくるので痛めないように。登山口から分岐までは樹林帯の中を進む我慢の登山
茶臼山分岐から西駒山荘:
トラバース路を進む。八ヶ岳や伊那盆地が見えるようになる。西駒山荘の直下に水場あり
西駒山荘から稜線ルートで木曽駒ヶ岳:
将棊頭山を巻くように進み稜線にでる。濃ヶ池分岐までは緩やかなアップダウン。8合目や2779m峰への稜線は急登。馬の背から木曽駒までは比較的緩やかな登り
木曽駒ヶ岳から宝剣山荘:
木曽駒銀座のような登山道。木曽駒から一旦下り中岳に登り返す。中岳から下って宝剣山荘
宝剣山荘から伊那前岳ピストン:
緩やかで静かな稜線を進む。眺めも良く、足を延ばす価値あり
宝剣山荘から濃ヶ池経由で西駒山荘:
宝剣山荘前から下る。梯子や沢の渡渉などあり。濃ヶ池から分岐まで登り返す。枯沢でのルートミスには注意。初心者、特にレイトビギナー単独にはキツイかも。濃ヶ池分岐から西駒山荘までは快適な稜線歩き
歩行タイム(私のログ記録)
<1日目> 山行 5:48、休憩 1:20、合計 7:08/距離 8.0km、累計上り 1,466m、累計下り 43m
9:18 桂小場登山口 → 10:50 野田場 11:12 → 12:24 大樽小屋 12:40→ 14:40 胸突の頭 → 15:33 西駒山荘 → 16:05 将棋の頭 16:08 → 16:19 西駒山荘
<2日目> 山行 8:48、休憩 0:55、合計 9:43/距離 17.9km、累計上り 616m、累計下り 2,035m
6:07 西駒山荘 → 6:44 濃ヶ池分岐 → 8:06 馬ノ背分岐 → 8:22 木曽駒ヶ岳 8:34 → 8:51 中岳 → 9:07 宝剣山荘 → 9:30 伊那前岳 9:34 → 10:01 宝剣山荘 → 11:03 濃ヶ池 → 11:58 将棊頭山 → 12:09 西駒山荘 12:19 → 13:48 大樽小屋 13:55 → 14:47 野田場 → 15:46 桂小場登山口
註)コースタイムの 1.1 – 1.2 位で歩行している(ヤマレコのログ計測値)
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